会計委員長と一緒




「とりあえず、潮江先輩は死ねばいいと思います。」
「なんか言ったか糞餓鬼が。」
「え、潮江先輩は死ねばいいと思うって言いましたけど、聞こえませんでした?それとも痴呆ですかぁ?せんぱーい。」

ニコニコと笑って、目の前で青筋浮かべている人を睨み付ける。
俺の後ろには連日の徹夜で疲れきった後輩たちの山。
この状態を見て、黙っては居られない。
俺たちの間にはバチバチと火花が飛び散っていて、一触即発状態だ。

しかも、

「叶先輩!もっと言っちゃってください。」
「よしまかせろ!」

後輩たちは全員俺の味方。
ホームグラウンドでの試合で、俺が負けるはずが無いだろう?「お前らなぁぁぁぁ!!!」

忍術学園中に、先輩の怒声が響き渡ると同時に、バトル開始。
勝者は決まりきってるけどな!!







潮江先輩との言い争いから数分後。
会計室には力尽きたのか、死んだように眠る後輩たちの姿。
そのすべてに毛布をかけてやり、おとなしく、帳簿に向かう。


「もー、これぐらい一人で終わらせといてくださいよね!!」


俺の後輩が可愛そうじゃないですか!とぶつぶつと呟きながら、算盤をはじく。


「うるせー、そういうんなら、鼻っから手伝いに来い。」


同じくぶつぶつと呟きながら算盤をはじく先輩は心底嫌そうに言う。
嫌なら止めればいいのに。


「駄目ですよ、知ってるでしょ、先輩。俺の事情。」
「あぁ、そうだったな。」


ちゃんと説明しましたよと言えば、神妙な顔で頷かれて、お前も大変だなと言われ、ちょっとした罪悪感。
学校には俺は両親を亡くした戦孤児で学費をすべて自分で稼いでいると言う事で通してある。
全部が嘘じゃないとは言え、嘘をつくことには抵抗がある。
でも仕方ないじゃないか、あたしの家族はこの時代には居ないんだから。
それに、そうするようにって、手紙に書いてあったんだから。


「そうですよー。あ、割のいいバイトあったら紹介してくださいね。」
「あぁ、調べておく。」


しばらく、ぱちぱちと算盤をはじく音だけが、会計室に響く。
何時間も、何時間も、間に会話は無く、時間だけが過ぎていく。
そして、


「ん、終わりました。」
「む、こっちもだ。」


二人で、算盤と筆を置くころにはすっかり、空は白んでいて、


「あー・・流石にこいつら長屋に返して来なきゃやばいですよねぇ。」
「あー・・そうだなぁ・・。仕方ない、お前は1年を頼むぞ。」
「はいはーい。」


やれやれと溜め息をつきながら、軽々と左門と三木を肩に担ぐ辺り、先輩も六年生なんだなぁとふと思う。
六年生の前に、男、だけどね。
女のあたしがどう頑張っても、絶対かなわないんだろうな。


「持てるか?」
「舐めないで下さいよ!」


先輩の言葉に、井桁模様の制服を二つ掴むが、ぐらりとよろけて、佐吉を落としかける。


「うあっ!?」


慌ててバランスを取ろうとするが、上手くいかずに、抱えた2人もろとも床にぶつかりそうになる。
不運委員の世話になるのはやだなぁと、諦めて目を瞑れば、想像していた衝撃は一向に現れず、


「バカタレ」


と言う声と共に、別の衝撃が脳天を直撃した。
痛くて、一気に目ェ覚めるわこれ・・・。


「先輩、暴力反対でーす。」
「煩い、いくぞ。」
「はーい。」


口では乱暴な事を言いつつも、扱けそうな俺を支えてくれたり、結局佐吉を抱えていってくれる辺り、やっぱり先輩は、先輩だなぁ。
かっこいいだなんて、言ってやらないけどね。




「潮江せんぱーい、今度から、ちょっと親しみを込めて、文次郎先輩って呼びますね。」
「・・・勝手にしろバカタレ。」
「俺の事も可愛く叶って名前で呼んで良いですよ?」
「・・・頭大丈夫か?」
「酷いっ!!」






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