天女様が泣いてばかり暮らしているという事を、あの子は知っていました。
毎日毎日あの子の友人がその日の少女について聞いても居ないのに、語って聞かせてくれますので、あの子自身が少女に会った時間が無くとも、あの子はそれなりの天女通になっておりました。
優しい子ですので、興味が無いとも関わる気が無いとも言えませんでしたので、今日も曖昧に返事を返しておりました。
あの子も全くの馬鹿と言うわけでは有りませんので、なんとなくですが、もう暫くすればこうやって友人たちと話す事も無くなるのだろうと言う事は分かっていました。
ですから、曖昧に頷いてでも、友人との時間を大切にするのです。
本当に、可愛そうな子。
寂しいなんて言えなくて、たった一人で思い悩むとてもとても可愛そうな子。
ところで、あの子は気づいていませんが、学園中の全ての忍たまが少女の事を好いているわけでは有りませんでした。
あの子のように距離を置いている忍たまもいれば、
様子見だと傍観に徹しているものも居り、
中には今の学園は異常だと殺意を隠さない者もいます。
あの子は偶々身近な友人のうち4人が少女に夢中になってしまったので、それが学園の総意だと思い込み、気付かなかったのです。
彼の友人の中にも少女の事を良く思っていない者がいると言うその発想すらもありませんでした。
「気に入らないな。」
部屋の端で小さく呟いた少年の言葉を聞いてすらもいませんでした。
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