傍観編 06




少女はとても綺麗でした可憐でした絶世の美女のようでしたとてもとてもとても美しく可愛らしい天女様のようだ、と少女を盲目的に愛した人たちは口をそろえて言いました。


その度に少女はくしゃりを顔をゆがめ、

少女を気に入らない者たちの罵声が飛び、

そして、少女はほろほろ涙を流すのです。



鉄の塊が行きかうコンクリートジャングルで生まれた少女は、
電気水道ガスの揃っていない場所での生活も、
当たり前のようにあった便利な機械が無い生活も、
とてもとても耐えられるものでは無く、

食堂のお手伝いをするようにと言われ、初めて足を踏み入れた其処で卒倒してしまいそうになりました。



包丁とまな板は知っている。
(形は違えど使い方が変わるものではない。)

でも、釜戸や井戸の使い方なんてなかなか知っているようなものでは有りませんでした。
(此処にはコックをひねれば水が出る装置も、火が出る装置もましてやスイッチ一つでご飯が炊きあがる便利なものなどありませんでした。 そんな便利なものに囲まれていた少女には釜戸も井戸もどちらも使う必要の無いものでした。)




慣れない仕事でまず身体が悲鳴を上げ、それでも必死に頑張っていたら、横から見知らぬ男の子達が少女の仕事を奪い片付けて行ってしまうじゃありませんか。



少年たちは純粋なる好意で少女に手を貸しているのだとしても、少女はそれを望んではいませんし、それを不愉快に思う人間はいくらでもいるのです。





あの子ばっかりどうして好かれるのあんな何もできないような子がかわいくもない普通の女でしょ嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い憎悪憎悪憎悪あの人は私が好きだったのにあの人はあの子が好きだったのにどうしてどうしてどうして嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い早く居なくなれば良いのにどっかいけよ死ねばいいのにそうよ死ねばいいのよあんたなんかいらないいらないいらないいらない、消えてしまえ、消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ、




綺麗な綺麗な世界で生きてきた少女には、とても綺麗とは言えない世界での生活は耐えられたもので無く、身体の次は心が悲鳴をあげました。



私は、此処で頑張らなきゃいけないと思ったのに、
(でも、皆が私の存在理由を奪うのよ。)
私は、此処で誰かと仲良くなりたかったのに、
(一人は嫌よ、絶対に嫌よ。)



少女はいつも泣いてばかりでした。
世の不条理を嘆き、過去を思い返してはいつもいつも泣いておりました。




「いえにかえりたい。」




そう嘆く少女の言葉には耳を貸さず、エスカレートする苛めとそれに気づいた少年たちの攻防戦が繰り広げられていました。
少女を苛めるくのたま達にも、少女を守りたい忍たま達にも譲れない理由が確かにありました。




そうして、いつしか学園は一人の少女を挟んで3つほどの勢力に分かれてしまったのです。



少女はまた嘆きました。
自分が来たせいで、自分がすべて悪いのに、自分が、自分が、、、



誰が悪いとはいえない状況でしたが、確かに彼女の心はしっかりと闇に蝕まれていたのです。



少女は、孤独を嫌い、平和を愛する、ごくごく普通の少女でした。







天女様なんて始めから何処にもいませんでした。









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