傍観編 03






数日前学園に降ってきた少女がどう説明をして、学園がどう納得したのかは私には理解できませんけれど、少女が学園のお手伝いさんとして雇われると言う事が決定したようです。


あの子は友人たちの嬉々とした報告を微笑みながら聞いておりました。


少女の名前が凛と言うのだと、一番に情報を持ってきたのは変装名人の少年。
(凛、あの子の捨てた過去の名前。偶然とはいえ忌々しい。あの子が大切にしていたもの。あの子が泣きながら捨てざるをえなかったもの。あの子が諦めてしまったもの。)



笑った顔がとても可愛いんだよ、とにこにこ笑ったのは迷い癖のある少年。
(あの子が、「雷蔵のほうが可愛いのに」と拗ねて言えば、笑顔のままあの子に拳を落とす。あぁ、君たちは知らないんですね。私が捨ててしまったあの子が君たちのおかげでどれほど救われているのかを、知ろうともしてくださらなかったんですよね。気まぐれにしか、甘やかしてはくれないのですよね。)



彼女はとても華奢だから守ってやらなきゃいけないんだと、力強く決意したのは虫好きの少年。
(華奢で可憐な女の子。あの子も本当はそう形容されるべきであるのだと、君たちは思わない?自分の手を見て泣きそうになったあの子には気づかない?それとも、あの子は特別強い子だとでも思っているのですか?)



豆腐よりも可憐で美しいものを見るのは初めてだ、と呟いたのは豆腐命の少年。
(友達思いのあの子の事です、きっと協力するよと言うのでしょう。あの子が少女を避けていることを君たちは知らないのでしょうね。友人だから同じ気持ちを共有したいとでも言うのでしょうか、馬鹿馬鹿しい。恋愛と友情は同時に行えないものなのだと分からないんですか?)



少女が現れてから時間が経つにつれて、一人、また一人とあの子の周りから人が消えて行きました。
皆彼女の下へと鼻の下を延ばして去っていくのです。



あの子はずっと笑っていました。



約束をすっぽかされようと、
話しかけたのに無視をされようと、
少女にやむを得ず手を貸してやった後に抜け駆けだと罵られても、


それでもあの子は笑いました。



それが、あの子とあの子の先輩との約束であり、友人達もそう望んでくれていたわけですから、あの子は健気にもずっと笑っていたのです。



あの子も忍者の卵でしたので、上手く隠して泣いていたのかも知れませんが、そうだとしても、誰一人として彼が泣いていたという事実の裏付けは取れやしないのでございます。





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