過去編39




もしかしたら、ふとした瞬間に平成で生きていたあの現実に帰れるんじゃないかと、淡い期待を抱いていた。
当たり前じゃないかと思う。
此処はあたしの生きる場所じゃない。
あたしの帰る家は此処には無い。

でも、どんなに非現実的で科学で説明できない事がらであれど、実際自分の身に起こってしまえば信じざるを得ないじゃないか。

痛覚はある。
頬はちぎれそうなくらい抓った。
綺麗に手入れした刃物で腕を切り落としたこともある。
それでも、結果は同じであった。

もう、逃げ回ってはいられない。
覚悟を決めないといけない。


朝一番に押し入れが開かれ、同室者の顔が覗きこまれる。

「関口、食堂に行くのだぁ!!」

「…着替えるから待ってて。…兵助。」

ポカンとしている兵助を置いて押し入れを閉めて制服に着替える。

今日の夜から押し入れは卒業しないとと考えながら着替えを終え、兵助を引っ張って食堂へ行った後、雷蔵、八左ヱ門、三郎から兵助と同じ反応を貰って、狼先輩に頭を撫でられ、潮江先輩の珍しい笑顔を見るまであと少し。

覚悟は決めた。

この世界が、まぎれも無く現実であるのだと認め、帰る家を諦め、この世界で最後まで生き抜く、覚悟。


それ以外の選択肢なんて、始めから用意されていなかったのだけれど、





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