過去編33







「関口凛、か。」
「そうだけど…、君は?」

不破と竹谷と久々知を傷つけた先輩たちを探している途中、狐の面を付けた同級生に声を掛けられた。
面の陰から見える髪は不破のものにそっくりで始めは不破かと思ったけど、声も雰囲気も全然違う。

「…鉢屋三郎。」

ぶっきらぼうに答えた彼に、何か用かと尋ねれば、続く無言。
用事が無いのなら、と足を進めようとすると腕を掴まれ、めんどくさいなと振り向く前に、まっ直ぐと言葉をぶつけられた。


「雷蔵がお前のせいで傷つけられた。」


あぁ、きっと彼は不破の友人なんだなと理解する前に頬に痛みが走った。
驚いて反撃をしようとすれば、すぐに鉢屋は後ろに下がってあたしと距離を取った。


「でも、お前が悪くないと雷蔵が言うからこれくらいで許してやる。」


ふん、とふんぞり返って言う鉢屋に思わず笑ってしまった。
偉そうに何を言っているんだ、と。

でも確かに不破が傷つけられたのはあたしのせいであるので、すぐに謝罪をする。


「もう傷つけさせないから大丈夫。」


その言葉に分かっていると頷いた鉢屋はあたしの行こうとした方向に歩きだした。


「文句言いに行くんだろ。」


それだけ言ってすたすたと歩いていく鉢屋に驚きつつも、すぐに後ろを追った。


「1年い組、関口叶。俺、不破や竹谷達と友達になりたいんだ。だからあいつ等を傷つける先輩が許せない。」

「1年ろ組、鉢屋三郎。其処に自分の名前も足しとけ馬鹿。俺は、下級生を苛める上級生が気に入らない。」

「利害の一致ってやつか。」

「そう言う事だ。それに、雷蔵たちはお前の事を友達だと言っていたよ。」




あぁ、どうしよう。
嬉しいなぁ。


鉢屋と並んで歩く。
行先はもう遠くない。


全部終わったら、鉢屋にも友達になってくれるよう、頼んでみようか。





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