過去編32



不破。
竹谷。
久々知。


優しい彼らに守られ、甘やかされる日々は、、中々悪いものでは無くて、押し入れの中で蹲っていた時よりも明るい生活はあたしの心をゆるゆると溶かしていった。

誰かが傍に居てくれる。
この事実がこんなにも心強いものだったなんて、忘れていた。
虎先輩が居たころは、当たり前だったから、少し懐かしい。

だから、あたしは大切なことを忘れていた。


竹谷は、足を引きずって歩いていた。
不破は、頬が赤く腫れていた。
久々知は、わき腹に大きなあざが出来ていた。

あの日からずっと自分の身近にあったその症状が、どうすれば現れるのかなんて考えるまでも無く、誰に聞いても口を揃えて何でもないと笑われるのが悔しかった。

誰かの優しさに甘えるのを止めるだなんて言いながら、あたしはまだ甘えてばかりだ。

「決着、付けないと…。」

自分よりもはるかに体格の良い相手が居るのに、何が出来る保証なんて無いけれど、もう、何もしないでじっと待っているだけは、嫌だった。


「もう、守られるだけは、絶対に嫌。」


あたしだって、誰かの為に。





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