男の子はあたしの服を掴んだまま、力一杯引き摺っていくものだから、
暫く合わせて歩いてみたものの、突き刺さる視線や聞こえる陰口に気分が悪くなって、あの押入れの中にすぐに戻りたくなった。
指差すな、笑うな、嘲るな!!
あたしに何を言ったって、先輩が居ない事実は消えないのに!!
認めてしまって、直ぐに後悔。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
やだ、やだやだやだやだ!!!
見ないで、言わないで、聞かせないで!!!!
虎先輩は迎えに来てくれるんだって、信じさせて!!
目にじわりと浮かんだ物を乱暴に拭って、あたしの服を掴んだままの男の子の手を振り払った。
「触らないで。」
顔を上げた其処が学園の中じゃないのには驚いたけど、その方がきっと、好都合。
込み上げる吐き気が、堪えきれなくて少しだけ吐いた。
その間、男の子は何をするでもなく、ただじっと、あたしを見つめているだけだった。
胃が引っ繰り返る感じ。
気持ち悪い、気持ち悪い。
口の中に広がるすっぱさが気に入らなくて、唾と共に地面に吐き捨てた。
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