過去編26





男の子はあたしの服を掴んだまま、力一杯引き摺っていくものだから、
暫く合わせて歩いてみたものの、突き刺さる視線や聞こえる陰口に気分が悪くなって、あの押入れの中にすぐに戻りたくなった。

指差すな、笑うな、嘲るな!!
あたしに何を言ったって、先輩が居ない事実は消えないのに!!

認めてしまって、直ぐに後悔。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

やだ、やだやだやだやだ!!!
見ないで、言わないで、聞かせないで!!!!

虎先輩は迎えに来てくれるんだって、信じさせて!!

目にじわりと浮かんだ物を乱暴に拭って、あたしの服を掴んだままの男の子の手を振り払った。


「触らないで。」


顔を上げた其処が学園の中じゃないのには驚いたけど、その方がきっと、好都合。

込み上げる吐き気が、堪えきれなくて少しだけ吐いた。


その間、男の子は何をするでもなく、ただじっと、あたしを見つめているだけだった。

胃が引っ繰り返る感じ。
気持ち悪い、気持ち悪い。


口の中に広がるすっぱさが気に入らなくて、唾と共に地面に吐き捨てた。







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