過去編20





潮江先輩たちに拾われた後、目まぐるしく時間だけが過ぎて行った。


あたしは潮江先輩たちに一通りの事情を説明した後直ぐに意識を失い、学園に戻って直ぐに40度を越える高熱を出し3日3晩目を覚まさなかったらしい。
この頃の記憶は曖昧なのだけど、目を覚まして直ぐ、あたしに沢山の人が詰め寄って何があったのかと同じことを何度も何度も訊ねられた。
その度に何度も何度も同じことを話した。


虎先輩とお使いに出て忍者に襲われて虎先輩が大きな怪我をしたのだと、何度も何度も自分の覚えている事を全て。


それなのに、あたしの証言を肯定するものは何一つ出てこなかった。
森の中で沢山の血に塗れたはずなのに、潮江先輩に出会ったときのあたしの服は綺麗なものだったと言うのだから、其処から何だか可笑しい。
日がたつに連れ、あたしは嘘吐きと呼ばれ、虎先輩が戻ってこない本当の理由を尋ねられる。


その度に同じことを言って、呆れられる、その繰り返し。


何か怖い思いをして混乱しているだけだろうと、優しい言葉をかけてくれる人は居るが、大半が、あたしが虎先輩を陥れたんじゃないかと言う噂を信じている。
何処かの城のスパイでは無いかという容疑だってかけられた。
本当の事を言っているのに信じてもらえないのは辛い。




何を信じて良いのか、分からなくなるんだ。




学園に戻ってから1週間目の今日。
遂に、先輩の捜索が打ち切られることになった。
あたしが本当の事を言わないからだと、罵られる事も合ったがそんなのはどうでもいい。
ただ、あの人がもうこの学園に居ないと言う事が酷く心苦しかった。



「先輩、約束、守れそうに無いです。ごめんなさい。」



貴方の居ない寂しさに負けて泣く、弱いあたしを許して下さい。



わらえないです、せんぱい。




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