過去編14





特別な事なんて、何もなく、夏休みは呆気なく終わってしまった。
40日の夏休みの間、あたしは先輩と、釣りをしたり、鍛錬したり、忍者のいろはを教えてもらったりと有意義に過ごしていた。
其処で一つ分かった事がある。


身体能力が異様に高くなっている。


虎先輩との身長差は軽く見積もって40センチくらいは有る筈なのに、先輩と同じくらいの高さまで跳ぶ事が出来るし、
足も先輩に並ぶ位早かった。
握力も以上に発達していて、自分の腕ほどの幹を手で握りつぶせたし、嗅覚も聴覚も何もかも、普通の人のそれとは異なった。
先輩は凄い凄いと喜ぶが、あたしは内心複雑だった。
凄いと言う事は、人と違うと言う事だ。
落ち込むあたしに虎先輩は、手加減すれば得えよと笑った。
この人は何でこう、全部分かっちゃうんだろうと、あたしは苦笑した。


学んだ事も一つある。
先輩は肉弾戦も得意だけど、薬学に長けていて、近距離線を嫌うあたしの為に手ほどきをしてくれた。
まずは簡単な眠り薬から高度な痺れ薬まで、先輩の持つ薬学の知識の全てを教えてもらった。
身体能力上昇に付き、頭も良くなった様子のあたしは先輩の言う事をいとも容易くあっさりと吸収してしまって、夏休みが終わる頃には、そんじょそこらの町医者レベルの知識を身につけていた。


後1つ、少しだけ秘密をばらした
いつまでも隠し通せるはずが無いと、腹を括って、先輩に自分の性別を打ち明けた。
そしたら先輩は、そんな事知っていたと笑って、何かが代わることも無く、関口叶が何かを失うことも無かった。


特別なことなんて何も無い夏休み。
でも、それがとても誇らしくて、嬉しかった。


「よーし、叶ー休み明けの予算会議に向けてがんばろなー。」
「はい。」


虎先輩と手を取りあって、忍術学園へと急ぐ。
ずっと、この手を失う事なんて無いと信じて。


「・・先輩、大好きです。」
「ん?何か言ったかー?」
「何でも無いです!!」


当然いつまでも、あたしが望んでいる限りはずっとずっと、先輩は此処に居てくれると、信じてた。




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