過去編13





虎先輩の家は、忍術学園からあまり遠くない山の中にあった。
ガタガタと立て付けの悪い扉を開けば、中は埃だらけで咳き込んだ。


「休みにしか帰ってこんから酷いじゃろ。」


そう言って先輩はなれたように、ずかずかと家の中に足を踏み入れ、奥にあった、これまた立て付けの悪い窓を力技であけた。


「叶ー、外の井戸で水汲んできてくれんかー?」


くしゃみをしながらも窓を開けつづける先輩に頷いて、一度家の外に出る。
見渡す限り草木しか見えないような、現代日本じゃ考えられない場所だけど、なんだか心地良いと思う。
凛はアウトドアなんて大嫌いだったのに、叶は好きなのかもと笑って井戸へ向かった。
ボロボロの井戸で、苦労して水をくみ上げて持っていくと、先輩は偉い偉いと頭を撫でて、何だか嬉しくなるのです。


「お邪魔します。」

「ん?違うよ叶。今日から此処は叶の家でもあるんやし、ただいまって言い。」


「・・・ただいま、です。」
「おかえり叶!!」


「先輩も・・お帰りなさい。」
「あぁぁぁぁ、もうかわええなぁぁぁぁ!!!」


其処は、関口叶が初めて手に入れた、居場所。

涙は自然に笑顔に変わった。





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