過去編12




忍術学園に入学してから、一つ季節が過ぎ去って、7月の終わり、夏休みが始まった。
あたしはというもの、クラスメイトとの距離感は変わる事無くやっぱり一人浮いたままだったけど、虎先輩との特訓で少しづつ表情は作れるようになった。
・・・まだまだ硬いんだけど。

同室の者が一時帰宅のために荷造りをしている中、あたしはボーっと本を捲っていた。
帰る場所は無いし、行く場所も無いので、あたしは学園に残る事になっている。
同室者は、不思議そうにあたしを見ていたが、何も言わないと悟ると、すぐに部屋を出て行った。
そうやって、一人また一人と長屋から去っていくと、あんなに騒がしかった長屋がシンと静まり返って、少し寂しい。
そう言えば、忍術学園に付いてから、本当の意味で一人になるのは初めてだった。
・・・心細くて、怖くて、泣きそうになった。

「叶、お前学園に残るん!?」

長屋の部屋で転がっていると、旅支度を整えた先輩が勢い良く飛び込んできた。

「・・・帰る場所、無いんです。」

言えば、辛そうな先輩の顔。
どうして先輩がそんな顔するんですかと笑おうとする前に、抱えられた。

「分かった!わしと一緒に来るんじゃ!!」
「うひぃ!?」

あれよあれよと言う間に、服を着替えさせられ(途中からは流石に抵抗して、自分で着替えた)、虎先輩の隣りを歩く。

「何処行くんですか?」
「んー、わしの家じゃ。」

先輩は嬉しそうに跳ね。
あたしはその後ろを追いかけた。

「わしも独り身なんよ。じゃから、叶が夏を一緒に過ごしてくれると嬉しい。」


・・そうやって笑われたら、首を横に振る事なんて出来る訳無いじゃないですか。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -