ヒリヒリと痛む喉を押さえて、むくりと起き上がる。
森の中の大きな木の洞の中、蹲って寝たから体中痛い。
昨日、あの後、着物の懐に、一枚の手紙と大金が入っていることに気が付いた。
手紙にはこう、書かれていた。
『貴女は全てを捨てて違う世界に行きたいと願いました。
ならば、叶えて見せましょう。
此処は貴女生きた世界では無い世界。
誰も貴女を知らない世界。
貴女はこれからこの世界で、たった一人で生きるのです。』
その後はこれから、どうするのかを事細かに書かれていた。
「・・・にんじゅつがくえんか。」
行き先は、もう決まっているらしい。
あたしは、これから、この紙に書かれている場所で、生きなければいけないらしい。
手紙の最後はこう締めくくられていた。
『貴女の手で全てを終わらせることは出来ません。
貴女はただ運命に流されるだけ。
世界の終わりに貴女に選択の余地を。
あなたの望むままに、世界は顔を変えましょう。』
意味なんて分からなくて、くしゃりと、手紙を握り締め捨てた。
分かった事は2つ。
一つは、あたしは、今まで居た世界では無い異世界に来てしまったと言う事。
もう一つは、あたしはこれから、『忍術学園』と言う場所で、男として生きていくしかないと言う事。
理由なんて分からない、意味なんて無いかもしれない、けれど、この手紙だけが今の何も知らないあたしの縋れるただ一つのもの。
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