「あ、叶寝ちゃった。」
「手の掛かるお子さんですねぇ、母さんや。」
「ふふ、そうだね。」
叶を抱えたままの三郎と、叶の頬をつついて笑う雷蔵。
俺も、笑う、笑いたいけど、心が苦しくなる。
俺だって叶の力になりたいのに、あの人のように、叶を支えてやりたいのに…
「・・・俺達は、いつまで、叶の秘密に気付かないふりをすれば良いんだろう。」
俺はもう辛そうな叶を見たくないんだ。
無理して笑わないでよ。
俺達が守ってあげるから、一人で泣かないで。
「・・・それは言わねぇ約束だろ?」
「分かってる、よ。」
叶の秘密を知ったのは、4人同時だった。
その時誓った。
叶が俺達に話してくれるまでは、気付かない振りをすると。
「どんな秘密があっても、叶は叶だよ。」
「うん、そうだね。」
叶、叶。
俺は君の力にはなれないの?
怖いんだ、君がいつか居なくなってしまうんじゃないかって、怖いんだ。
「ん?おーい、叶、どうかしたのか?」
「あ、はち、静かに!叶寝ちゃったから。」
「あ、悪ぃ悪ぃ。おーおー顔色悪くしやがって。俺が運ぼうか?」
「今日は三郎お父さんが運ぶんだって。」
「そうだ!今日は父さんが運ぶから兄さんは引っ込んでろ!!」
「なんだよそれ、家族設定?」
「三郎ってば父性に目覚めちゃったらしくてねー。」
笑う、笑う。
これはいつまで?
ふとした瞬間に容易く壊れてしまうんじゃないかって、怖い。
叶、叶。何処にも行かないで。
なんだか君が遠いんだ…
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