過去編2






火薬委員会の活動中、
後輩に指示を出しながら、在庫を調べている時に、


「あ、居た居た、へーすけー。」

珍しい人物が現れた。


「どうした叶。火薬庫に自分から来るなんて珍しいな。」

整理していた棚から離れ、叶に近づくけば、プリントを一枚渡された。
見覚えのあるソレは、今日の午前中にしたテストで、予想通り散々な結果だった。


「ん、先生から預かってきた。間違ってるとこ訂正して再提出だって。」
「げっ・・。」
「兵助薬学苦手だもんな。」
「兵法なら得意なのに・・。」
「薬学も知っといて損は無いよ。」
「それは分かってるんだけど…叶、後で教えて。」
「良いよ。かわりに、今度兵法教えろよ。」
「分かった。」


それから、いくつか言葉を交わし、長屋に戻ると言う叶の背中を見送ろうとした時に、


「あー、叶先輩こんにちわー!!」


と、能天気な声が聞こえた。


「あ、えーっと、斉藤さんだっけ、こんにちは。」


叶は律儀に振り返って、笑う。
無理しなくて良いのに。


「うん、僕、4年は組の斉藤タカ丸です、よろしくねー。」
「ん、関口叶です。よろしく。」
「叶先輩髪綺麗だねー。」
「そんな事ないですよ。斉藤さんのその金色の髪の方が綺麗じゃないですか。」
「えー、叶先輩の方が絶対綺麗だって!!今度髪結わせてくれる?」
「そうですね・・女装の授業がある時にお願いします。」
「えぇー、早く結ってみたいなぁ。」


目の前で、きゃいきゃいとはしゃぐ姿が、なんだか、面白くない、のと、叶がそろそろやばそうなので、助け舟を出してやる。
叶は、尋常じゃないくらい汗をかき、顔色が悪くなってきた。
まぁ、叶も忍者なのだから、分かる奴にしか分からないのだけど。


「こら、タカ丸!サボってないで作業に戻る!!」
「えぇー、もっと叶先輩と話したいよー?」
「駄目だ。」


首根っこを掴んで引き剥がせば、不満そうな声を上げられる。
・・・年上なんて絶対嘘だ。


「斉藤さん。お仕事サボったら、一生髪結わせてあげませんよ。」
「えぇー!!それはやだから、頑張る。伊助ー。」


ぱたぱたと忍者らしからぬ足音を立てながら、遠ざかるタカ丸の姿に叶はほっと一息つく。

「助かった、兵助。ありがとう。」
「あぁ。・・・まだ、駄目なのか。」
「大分、マシには、なったんだけど、な、やっぱ、初対面は、ちょっと、キツい。」

俺だけにしか見えない叶の表情は酷く青ざめていて今にも、崩れ落ちそうだ。
大丈夫大丈夫と小さく繰り返す。


「無理するなよ。」
「ん。兵助達が、居てくれるから、平気なんだろ?」

そうやって、笑顔を向けてくれる叶に安心する。
出会った頃の叶は、俺達に笑いかけてくれることなんて無かったから。
今、叶が俺達を頼ってくれるのが、凄く、嬉しい。


「うー、情けないなぁ・・・。」
「ははっ。」
「笑うな兵助!!」






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