失踪編9






「結局、ドクウツギ城主の狙いは、叶って事で、良いのか?」
「まぁ、うん、そう言う事らしい。気持ちの悪いことに。」


夜、学園長他、先生方への報告も終わって、兵助と、部屋でくつろいでいた。
俺は床に転がりながら雷蔵から借りた本を、兵助は机に向かって、火薬委員の仕事をしているらしい。


報告は、まぁ、うん、酷かった。


学園長には泣かれるし、木下先生には怒鳴られた後に抱きしめられるし、何処から聞きつけたのか、大木先生も現れて、ついでとばかりに野村先生とケンカしていくし、他にも色々と大騒ぎだった。


まぁ色々あった結果、無事が約束されるまで暫く一人での外出禁止を食らった。

罰と言うか、ただ、純粋に心配されてるだけなんだろう。



でも、きっと、誰かと一緒に居ても、適わなかった。


俺を連れ去ったのは、目を覆うようにキツネの面をつけた奇妙な忍だった。
流れるような動作で、気配も感じぬまま、あっさりと、薬を嗅がされ、すぐに意識を失った。
普通の薬じゃ、効かない、俺にも効くってことは、相当強い薬だ。
下手したら、死んでたかもしれない。
俺自身の力不足も勿論あるが、でも、きっとアイツは此処に居る先生方と同じくらい、強い。

だからこそ、疑問に感じる事がある。


あれほどの忍が下調べを怠るはずなんて無いのに、何故、俺から薬を取り上げなかった?
薬まで、取られていれば、俺が逃げ出す事なんて、出来なかったのに・・・。



「また、来るかな。」
「んー、でも、もう興味失せたみたいな事言ってたし、多分平気じゃないかな。」


ペラと俺が本のページを捲る音が、よく響く静かな部屋に突然声が聞こえる。


「そうでもねぇけど?」


その声と共に、フッと、部屋の灯りが消え、鈍い打撲音と、ドサッと何かが倒れる音がした。


「兵助!?」


慌てて、灯りを付けようとするが、いきなりの闇に目は慣れるはずも無く、状況はまだわからない。


「よぅ、こうやって話すのは久しぶりだなぁ。」


その人は、フッと、気配も無く、背後に回り込み、俺を羽交い絞めにする。


「っく、ぁ、」


ギリギリと容赦なく締め付けられる感覚に、息が詰まる。


「お前、あの時の、忍かっ。」
「そうそ。今日はちょっとおつかいついでに確かめたい事が有ってなぁ、」


耳元で、ふっと笑う気配を感じ、首筋をなぞられ、そのまま、噛み付かれた。


「いっ!?」


がぶりと容赦なく噛み付かれた物だから、小さく悲鳴を上げる。
其処はドクンドクンと脈打って、血が噴出しているのが分かる。
それでも、暫くすれば、痛みだけを残し、傷跡はすぐ消える。
まるで、初めから傷なんて無かったかのように、あっさりと、綺麗に。


「ははっ、相変わらず面白い身体だよなぁ。 実に気味が悪い。」


クスリと笑い、今度は、首筋を吸い上げた。


「っ!?」


ピリッとした痛みと共に、残る鬱血は、暫く消えない。


「こっちは消えない、と。」


後ろから俺の首筋を甘く噛んだり、吸ったり、舐めたりするのが、気持ち悪くて、抵抗を試みる。


「な、にが、目的だ!!」


暴れても、びくともしない体格差が悔しい。


「んん、今日はちょっとした挨拶みたいなもんだ。」
「挨拶?」

羽交い絞めにされていた腕がふっと緩み、体勢を立て直す。
色んな所につけられた痕は、辛うじて頭巾で隠れる範囲だし、大丈夫。


「そ、後、逃がしてやった礼を貰いに来た。」


そう言って、ニィと笑った忍は、俺の頭を固定して、深く、口付けた。
息苦しくて、鼻から抜ける甘い声が気に入らなくて、ドンと強く胸板を叩けば、ゆっくりと離される唇。


「さっい、ていだっ!!」


ぐいっと着物の袖で、唇を拭う。
逃がしてやったってことは、やっぱり泳がされていただけか。
コイツほどの忍びが下調べを怠るはずが無い、薬を取り上げなかったのは、わざとだ。


「次はお前を迎えにくんぜ。」


ホント、あいつが執着する理由もわかるよ。
そう言い残して、忍の姿が消えたのと、雷蔵と三郎が部屋の襖を開けたのは同時だった。


「え、どうしたの?」
「おいっ、兵助、大丈夫か?」


ドタバタと、部屋が騒がしくなる中、俺はただ、アイツの言葉が頭から離れなかった。
ギリギリと拳を握り締める。


「連れて行かれて、たまるかよ・・・。」



この場所を、奪われて、たまるか!!!!





失踪編完























































「相変わらず、叶はかわええ子や。はよ、連れて帰りたいのぅ。」


誰かが何処かでそう言った。



本 当 に 、 終 わ り ?






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