「叶君は暫く、無理しちゃ駄目だよ。」
「善処します、考えときます、答えは全ていいえです!」
「え?」
「調子乗ってすいませんでしたぁぁぁぁぁ!!!」
伊作先輩の蔑んだ目が恐ろし過ぎてスライディング土下座をお見舞いして差し上げた。やばい、あれ、トラウマになる…
俺たちが学園に戻ってきてから、そう時間を空けずに、ドクウツギ城で暴れまわっていた6年生も帰ってきた。
立花先輩だけが無傷かつ、汚れても居ないのは、さすがと言うべきかなんと言うべきか・・・・
伊作先輩だけやけに傷だらけだったり、ぼろぼろだったりするのは、さすがというべきなんだろうな・・・。
今は、俺と兵助の部屋にドクウツギ城に向かっていた、全員が集まっている。
反省会、と見せかけた、ただの雑談会だ。
伊作先輩と雷蔵が入れてきてくれたお茶を飲みながら、のほほんとした空気の中、
「で、関口、貞操は無事か?」
「ごふっ!?ちょ、立花先輩!?え、ちょ、げほっごほっ!?」
不意打ちの爆弾投下に、力いっぱいお茶を噴いてむせる。
「聞いたよー、ドクウツギ城主は物凄い変態なんだってな!手も早いって評判だったぞ。」
「そう言えば、服、変わってるよな、まさか事後・・・?」
「えぇ!?それならちゃんと処理終わってるの?中に出されたりしなかった?」
「あー、俺は、そう言う事で差別はせんから、安心しろ!」
完全に、事後だと、決め付けられた空気に、泣きそうになる。
上から、七松先輩、食満先輩、伊作先輩、文次郎先輩の順だ。
日ごろの行いがものを言うのか・・・・
「とりあえず、文次郎先輩は、死んでください。純粋にきしょい。」
にっこりと笑って、自分の机から取り出した瓶を蓋を開けて投げつける。
「ぶっ!?おまっ、ちょっ、何投げた!!」
慌てふためく先輩に今度はにやりと笑って
「さぁ、何でしょうねぇ?」
と、新しい瓶を構える。
「先輩方も試してみますか?」
ドスを付けて、睨み付ければ、勢い良く首を振られる。
ま、立花先輩と伊作先輩からは、出来るもんならやってみろオーラが出てるんだけどな・・・。
あの2人には逆らいたくない。怖い。
「・・・貞操は無事ですよ。」
ため息を吐いて、瓶を懐にしまう。
ちなみにコレの中身は効果の薄い痺れ薬。
ただ、目に入ると物凄く痛い。
「遅効性の痺れ薬と眠り薬と毒薬しか持ってなかったんで、ギリギリでしたが、何とかなりましたよ」
「ほぅ、それはいかんな、忍者たるもの、常に、武器は携帯しておくべきだ。」
「それは言わないで下さい。物凄く反省してるんで。」
ぐりぐりと俺の頭を撫で付ける、立花先輩は心底楽しそうで、なんだかなーって感じだ。
「なぁ、ほのぼのしてるとこ悪いんだが。俺、息苦しくて死にそうなんだが。」
「えー?痺れ薬で死ぬわけ無いじゃないですか・・・あ。・・すみません、間違って遅効性の毒投げちゃったみたいですね。伊賀崎君にお願いしてジュンコちゃんの毒貰ったんですよー。」
「え、ちょ、俺死ぬっ!!!」
「むしろちょうど良いから、死ね、みたいな?」
「鬼かお前はっ!!!」
「そんな事言って良いんですかー?解毒剤の瓶割っちゃいますよ?欲しくないんですかー?」
「欲しいに決まってんだろうがぁぁぁぁぁぁ!!!!」
こうやって、馬鹿みたいに、騒いだり出来るのが、嬉しいんだ。
無事に帰ってこれてよかったと、ようやく心底安心できた。
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