失踪編3






「只今から、関口叶捜索大会を開催する!!」

校庭に5,6年生が集められ、学園長の言葉に、どよめきが起こった。

「ルールも時間制限も無しの、一本勝負じゃ。
関口叶を無事に見つけ出したものに褒美を授けよう!!」

褒美と言う言葉に、浮き足だつ生徒が多い。
あのけちなご褒美を出すと言う事は、きっと学園長先生は、叶を一人でお使いに出した事を後悔しているのだろう。
明るく見せても、相当焦っている事がよく分かる。
先生方も、焦っている。
多分、捜索隊を出してもすぐに見つからなかったんだろう。
だから、下手な鉄砲数打ちゃ当たる、と言う事で、俺達が借り出されることになったんだ。

ざわざわと声が響く校庭の真ん中、俺は叶のことを考えていた。
最後に見たのは、1週間前。
すぐに戻るよ、と笑って出かけた叶の姿。
断られても、無理矢理付いていけば良かったと深く後悔した。
一緒に居れば、叶だけは必ず無事に学園に帰したのに、と。
学園長だけじゃない、俺も、焦っている。


「関口叶ってアイツだろ、5年い組の優等生。アイツなんかお高く止まってやがるから気にくわねぇんだよな。」
「俺も俺も。そもそも、失踪ってマジかよ。どっかで隠れておちょくってんじゃねぇの?優等生様は。」


ふと、叶を心底馬鹿にした声が聞こえて、我も忘れて拳を振り下ろした。


「兵助っ!?」


慌てて、竹谷がオレを止めに来るあたり、他の奴らには聞こえてなかったんだろうか。
聞こえてたなら、竹谷も俺と一緒になって暴れるはずだ。
「学園長!叶は俺が探しに行きます。こんな、叶に悪意を持った下衆野郎にまで探しに行かせなくて良い。」


ぎりりと拳を握り締める。
優等生ってなんだ!
叶が普段どんなに頑張ってるかも知らないくせに、努力もせずにえらそうな事を言うな!


苛々と睨みつければ、三郎に落ち着けと頭を小突かれた。


(なんだ、ちゃんと聞こえていたんじゃないか。)


ギリギリと俺の腕をきつく握る雷蔵に、小さく、安心したように笑った。


「叶は、俺達で探しに行きます。他の奴らはいらない。」


なぁ、叶、絶対に、無事で居てくれよ。


叶がドクウツギ城に捕らえられているらしい、との情報が調査にでていた、教員からもたらされたのは、ちょうどその時だった。







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