失踪編2




水の跳ねる音が一つ、響き、
ゆっくりと覚醒を始める。
冷たい石の床に寝かされた体はズキズキと、痛み、
体の後ろで束ねられた腕が悲鳴を上げる。

はっきりとしない頭を持ち上げて、考える。


「此処は、何処だ・・・・?」


暗く冷たい石の牢屋、其処に俺は寝かされていた。
窓が無い事から、多分、何処かの城の地下牢なのだろう。

何か、薬を使われたのか、体にはまったく力が入らない。
それどころか、また頭がくらくらとしてきて、意識が飛びそうになる。


「駄目、だ。」


ギリッと唇を強く噛んで、無理矢理意識を保たせる。
唇が破れ、血が零れるが、そんな事気にしてられない。

何とか意識ははっきりとしだして、次に、縄を切ろうと袖口を漁るが、隠していた暗器は全て、持っていかれたらしい。
あまり、鍛えていないので、手首は太くないし、自力で、縄を抜けるのは無理そうだ。


「くそ、せめて窓があれば・・・。」


自分の位置を味方に伝えられるのに、と懐の中の、自分で調合した薬を見て思う。
俺の一番得意な
武器を持って行かないってことは、敵は俺の事を良く知らないみたいらしい。
それがせめてもの救いだ。
何とか縄が外れないものかと、牢屋の中を転がりながら気付く。
ひたひたと、足音が迫っているのを。
息を潜めて、まだ意識を失っているフリをしながら、様子を伺う。


「まだ寝てるのか・・・、おい、水を持ってこい。」


現れたのは、若い殿様だった。

そいつは、俺の顔に、たっぷりと水をぶちまけ、


「っ、ごほっげほっ!!」


むせている俺の姿を見て、心底楽しそうに、ニタリと笑った。


ど変態め…




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