失踪編1






「おつかい、ですか?」
「そうじゃ!!」

目の前で、嬉しそうに飛び跳ねる、老人を見て溜め息をつく。

この老人、と言うか学園長先生の思いつきにろくなものなんて無いから、できれば行きたくは無い。
前に兵助と2人で行ったおつかいなんて悲惨だった。
チャミダレアミタケ城の城主に手紙を届けるだけの簡単な任務だったはずなのに、途中小さな小競り合いに巻き込まれたり、野党に襲われた女の人を助けたり、挙句、肝心のチャミダレアミタケ城主が出かけていて、慌てて追いかけたりしていたりで、1週間。
帰りもまた、悲惨な目に合って、結局、オレ達が学園に帰れたのは、学園を出てから2週間後の事だった。
また、同じような事が無いとは言い切れないので、引き受けたくないのだが、残念な事に断れる雰囲気で無い。



「今回は、どういった内容で?」
「なぁに、簡単なことじゃ、手紙を届けて欲しいんじゃよ。」


学園長からの話を聞いた後、ヘムヘムに入れてもらったお茶を一口すすってから部屋を出た。



学園長の部屋を出てから、10分後。
渡す予定の手紙と一緒にもらった、外出届を小松田さんに渡して、出門表にサインしてから、門をくぐる。
めんどくさいけど、これを怠ると、目の前に居る人は地の果てまでも追いかけてくるらしい。

「じゃぁ、行ってきます。」
「はぁい、いってらっしゃーい。気をつけてねー。」


荷物を背負って、歩き出す。
目的地は、金楽寺。
そう遠くはないし、楽勝だ。

そう、思った自分が、甘すぎた。

俺が学園を出てから、丁度1週間ほど経った後だった。



「何、叶が金楽寺に来ていないじゃと?」



待てども届かない、便りを心配した、金楽寺からの使いが、忍術学園に到着したのは。

関口叶が学園長のお使いの途中で失踪したらしいと、言う噂はその日のうちに学園中に広まり、
教師は捜索隊の編成を始めた。


そして、

「兵助っ!!叶が失踪したって!!」
「あの、叶が忍務放り出して居なくなるなんてありえねぇ。」
「叶は何か事件に巻き込まれたのかも知んねぇぞ!!」


彼らも、


「探しに行こう、叶を。」


動き出す。









失踪編 開始





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