03


ここに来てから数日が経った。外界との連絡手段は絶たれてしまったが、それ以外は何不自由ない生活を送っている。個人の部屋は貸してもらえる上に、客室なのか結構豪華だ。それに兄弟のどちらかに頼めば一応娯楽物も届けてくれる。妹とも見張り付きではあるが毎日会えているし、特に生活するうえで困ったことはなかった。

『(急にいなくなったから皆心配してるだろうな…無事なことだけでもせめて伝えたいけど)』

窓の外にある結界がそれを許さない。二つの結界が屋敷を囲んでいてどちらも内側から壊すのはたやすいが、壊した途端術者にすぐわかるようにつけられている。

コンコンコン

「入るぞ」

『どうぞ』

扉から現れたのはカルラ。言いに来た内容はなんとなくわかっている。
ここ数日カルラは一応私の心の整理がつくようにそっとしておいてくれた。忘れていたわけじゃないが、できればその時は来ないでほしいと祈るように毎日を過ごしていた。だって私も初めては好きな人が良かったもの。

「明日の夜またここに来る。準備しておけ」

『…はい』

それだけ言ってカルラは扉を閉めた。私の心はついにきたかという気持ちでいっぱいだ。
私の年でそういう経験をしたことがないのは結構めずらしいと思う。同年代のヴァンパイアの女の子達は、皆とっくの昔に終えているようでまだ未経験だという事を伝えると皆一様にあり得ないという顔をするほどだった。何故私が今までそういう事をしなかったのか、それは好きな人が居なかったというのも理由の一つだが、母の様になりたくないというのが一番の理由だ。私の母は快楽を得る為なら誰にでも手を出すような人だった。母に言い寄る男は勿論、義弟や実の息子までもがその対象で私は幼少期幾度となく母の行為のシーンを目撃した。だからなのかそういう行為を目撃すると昔の母の事を思い出して、あの時の母の様になりたくはない!と快楽よりなにより先にそっちの気持ちが出てしまう。だからかそういう行為の映像も見れなかったし、そういう欲もわかなかったし、ハッキリ言ってそいうのの知識が乏しい。そんな私にとって初めての相手がカルラなど不安しかない。カルラがそういう事に慣れているいないの話ではなくて、愛のないその行為に果たして私は受け入れることができるのかどうかという事が不安なのだ。
でも拒めば恐らく妹の方に罰が下るはずだ。カルラは私の弱みが妹であることを十分に理解している。

『もう朝日が昇る…』

暗かった空は徐々に青が薄まっていき薄く透明な蜂蜜色の光が空を包んでいく。鳥たちがにぎやかにその声を響かせて闇の眷属は眠りにつく。闇に住む私たちにとって光り輝く朝は居心地が悪い。
この日が沈めば今夜が来る。今夜が来れば私は好きでもない男と結ばれる。

『今日ほど朝日を憎く思ったことはないわ…朝日は嫌いだけど永遠に沈まなければいいのに…永遠に夜が来なければいいのに…』

それでも時間は進む時は進む。朝日に当たりじりじりと焼ける肌と眠気とヘドロが体に絡みつくような感覚が襲い立っていられなくなった私は遮光カーテンで光を閉ざし、体をベッドに沈め意識を失う様に眠った。

『ふぅぁあっ…よー寝た』

外を見ると空はオレンジピンク薄い青へと綺麗なグラデーションになっていていつみてもこの瞬間は本当に可愛いと思う。美術にはてんで疎いがこの空は何時間も眺めていられる。…今日でなければもっと素直に楽しめたのに…。
ついに今夜が来た。いや厳密にいうと夕方。いつもは8時くらいまで寝ているというのに余程緊張しているのかいつもより早く目が覚めた。
折角なら今のうちに準備をしておこう決してやる気満々というわけではないが、何もせずにありのままをさらけ出すというのは相手がだれであろうと失礼なことだし、第一私が恥ずかしい。
とりあえず湯船に浸かって体を清めるとしよう。私は愛用のバスセットをもってお風呂場まで移動した。私のバス用品は魔界で有名なボディーショップの物だ。(私にとっては必需品なのでシン(カルラの弟)に頼んだ)人間界のバス用品を模して造られた商品なのだけれど香りはヴァンパイア様なので下界に置いてあるものほどきつい匂いはしない。ちなみに、私の持っている香りはラベンダーパチュリの香りでお店で一番人気の物だ。リラックス効果も高く、つかれている時はこれを湯船に垂らして泡風呂にすると良い。香りも良いし泡で遊べるしでだいぶ癒されるのでオススメだ。

『ふーっ』

体も綺麗にし、心も落ち着けることができた。リラックスタイムをおえて湯船からでると、タイミングを見計らったかの如く同時に扉が開いた。勿論扉はひとりでに開かないので押した人がいる。どうか、どうか妹であってほしいと願いながら開かれたドアの先を見た。

「…」

『…』

「…鍵もかけずにおくとは不用心だな、それとも見られたかったのか?」

『私の注意不足です。お目をお汚し申し訳ありません。』

裸を見られるのは私の中で恥ずかしいというより申し訳ない気持ちの方が勝つ。
私の体はあちこちにうっすらと傷がある。大昔にできたものから最近できたものまで、私の体は傷だらけだ。何かに貫かれたような跡、刃物で切られたような跡、火傷のような跡。決して見ていて心地のいいものではない。
壁にかけておいたバスローブを手に取り素早く羽織る。

「その傷はどうした」

『私の不注意が招いた傷です。』

「そうか」

こんな体を相手しなければならないカルラには同情する。きっと始祖の血を引く妹以外の子が居たらこんな体を選ばずに済んだだろうに。
バスローブでまだふき取れていない濡れた左胸にそっと手を当てられた。それはけしていやらしい手つきではなく、そっと触れるだけのもの。ただ全くそういう事に免疫のない私は何のいやらしさがなくとも急に触れられて驚きと恥ずかしさと緊張で顔が真っ赤になっていった。カルラが触れているのは左胸の何かが貫通したような跡のある心臓のある位置。

「貴様…処女か」

『…そ、そうです』

いずればれることだから隠してもしょうがないが、いざ面と向かって聞かれると戸惑う。
触れていた手はそれ以上何をするという訳でもなく、そっと離れて自分の服を脱ぎ始めた。
まさかここでするのか!?お風呂場でするというのも聞いたことはあるけれど、私にはまだ早すぎるのではないだろうか。
1人で動揺していると、何事もないかのように振り返ったカルラ。

「そんな所で何を立っている。私の風呂を除きたいのか?それとも初めての場所を浴室で迎えたいというのか?私はでもかまわないが」

『失礼しました。自室に戻ります』


カウントダウン

(処女喪失まであとすこし)




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