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ドゴォンッ そこまで考えた時、私の思考を遮るように大きな破壊音が響いた。何メートルか先には大きな人垣が見えた。 「何だ何だぁ?」 「また平和島静雄が何かしてるらしいぞ」 「相手は誰かしら?」 「さぁ……物騒ねぇ」 あちこちで交わされる会話に、私は1人呆然としていた。 平和島静雄。 私の好きな"本"の中で、ある人曰く池袋一名前負けしている、物語のキーマンの1人だ。 これは……まさか、 「あーあ、シズちゃんたら、また派手にやっちゃって」 雑踏の中、小さな声が後ろの方から聞こえてきた。聞きなれたその声に思わず振り向けば、ニヤリと笑う黒いコートの男が、1人人垣を見つめていた。 首無しライダー、平和島静雄、黒いコート。 重なりすぎた偶然に、私は妙に冷静に納得していた。 (そうか、これがトリップというやつか) 歪んだ笑みを浮かべるその男を見る私の口元も、歪んでいる気がした。 01*変わる世界 |