時巡り | ナノ



見たことも無いような落ち込み具合に、不謹慎だが笑っちまった

それは…たぶん、俺達にとっても大きな変化だったんだ―――…








「…」
「…」
「…」
「…、だぁあもう!なんだよこの微妙な空気はッ」
「なにがですか」
「お前さんのこと言ってんの。ユキにケガは無かったんだろ、とりあえずそれでいいじゃねえか」
「そうですねぇ。彼女にまでケガなんてさせてしまったとしたら、僕、この先生きていける自信はありませんよ」
「お前、けっこー身に堪えてんだろ」
「…」

大学近くの大きな総合病院
待合室で順番を待つ俺の耳に、抑揚に欠けた声が届く
視線は近くの多きな窓から覗く中庭へと向けられたまま微動だにしない
泣かせてしまったことを悔やんでいるのだろう
それもそうだ。もしこれが俺の立場だったらと思うと痛いほど良く分かる

…誰だって惚れた女泣かせたとなれば自分を恨んでも当然のことで

「…鈍りましたね、僕も」
「あ?」
「まえならきっと…もっと上手く対処出来たハズなんですが」
「…人間の反射神経だってたかが知れてるだろ。間に合っただけ上等だと俺は思うけどね」
「泣かせてしまってもですか」
「傷つけることだけは防げたじゃねえか」
「…」
「ユキのことは六花が傍に居る。だから大丈夫だろ」
「それは…何に対してですか?」
「お前が懸念する最大の不安について」
「…互いの性格を熟知しすぎているというのも考え物ですね」
「そんなモンお互い様だっての」

あはははは、って
いつものような色が灯されないその笑い声にそっと嘆息する
前世―まえ―にも…コイツは六花を泣かせちまったことがあるから…その身を襲う罪悪感は恐らく俺が想像しているよりも深いものなんだろう
だが、例えそうだったとしてもだ
天蓬だって…泣かせると分かっていたとしても、絶対に護ることだけはやめなかったんだろうと思う
所詮似ているのだ、俺達は

俺と同じ想いを抱いてユキに接し続けていた姿を、俺も六花も知っていたから

「…ま、アレだ」
「どれですか」
「俺も六花もお前らのことはうまく行けば良いと思ってるし?六花のことだ、ゼッテー何かしら吹き込んでんだろ」
「…周知の事実になっていることに疑問はありませんが、そんなに分かりやすい反応してましたか?僕」
「お前ね…アレで無自覚だとか言わせねえぞ」
「それはありませんけど」
「…惚れてんだろ」
「ええそれはもう。逃がすつもりなんてないくらいには」
「だったら俺みてぇに四の五の言ってねえでとっ捕まえろよ。手放す気なんて初めからねえんなら、さっさと退路でもなんでも絶っちまえっての」
「僕はあなたほど自分の感情に一直線になれないんですよ」
「ソレ褒めてんの貶してんの」
「最大限に褒めてるじゃないですかぁ」
「なーんか腹立つんだが」
「細かいこと気にし過ぎるとハゲますよ」
「…」

全力で殴ってもいいだろうか、コイツ
半眼のまま睨めばタイミング良く呼ばれた名前に立ち上がる
心配しているであろう六花たちの連絡もあるしな
一緒になって立ち上がれば驚いた顔をされる
仕方ねえだろ。ユキだって心配してんだから
さっさと行けと背中を押して診察室へと入っていった
中にいたのは年若い男の医師と一人の看護婦

「今日はどうなされましたか?」
「いやあ。ちょっとドジッちゃいましてね、腕がこんなことに」
「あー…結構腫れてますね」
「骨は折れてないんですよ」
「どこかにぶつけましたか?」
「倒れてきた脚立を受け止め損ねたんです」
「なるほど。では、一応レントゲン撮っておきましょうか」

あからさまに面倒そうな顔をする天蓬の頭を軽くはたいて促せばしぶしぶ移動する
ちんたらしてねえでさっさと行けっての
俺だって早いとこ六花の所に戻りてぇんだから

レントゲンに映された写真は綺麗な骨の写真で。
折れてもいなけりゃヒビ1つだって入っちゃいねえ
良かったですねと医師の言葉に当然だと心ん中で思う
そんなヤワな鍛え方してるワケでもねえしな
たかが脚立が当たったくらいで折れるようなモンでもねえっての

レントゲンの写真を撮ってメッセージと共に六花に送り届ける
既読になって数秒で返ってきた返事にやっぱ心配してたんだなと苦笑い

「ちょっと重めの打撲ですね。湿布と痛み止めを出しておきますから、痛みが酷い時は飲んで下さい」
「分かりました」
「後は暫くは余り使わないようにしてくださいね。治りが遅くなりますから。利き腕ですか?」
「いいえ、僕は右利きです」
「ならさほど問題はなさそうですね。では、今は湿布と包帯を巻いておきます」
「ええ、ありがとうございます」

診察を終えて会計を済ませる

貰うもんだけ貰って外に出れば大袈裟ですねぇと嘆息していた

「この歳でまさか包帯にお世話になるとは思いませんでしたよ」
「まあ一応は打撲だしな。いいじゃねえか、名誉ある負傷で」
「そんなこと言って、コレで泣かれちゃったらどうするんですか」
「そん時は自分でどーにかしろ」
「薄情者って呼びますよ」
「惚れたモン負けだって言うだろ。俺はもう経験済み」
「…なるほど」
「とりあえず大学戻んぞ。後のことはお前がどうにかしろ」
「泣かせずに済みますかねぇ…」
「努力次第なんじゃね?」

困ったように真っ白な包帯を見下ろす姿に、俺はやっぱり吹き出しちまったんだ







『あ、捲簾からだ』
「!、なんだって?天蓬のケガなんだって!?」
『ちょっと待ってユキ。とりあえず落ち着いて』

椅子から立ち上がる勢いのユキに苦笑して画面を開く
そこには一枚の写真と彼からの一言メッセージが送信されていた
映っているこれは…レントゲン写真だ
念のために撮ったのだろう。結構腫れてたもんね、腕

"骨に異常ナシ。ただの打撲だとよ"

良かった。骨が折れてるとは思ってなかったけど、ヒビでも入ってたら大変だしね
それこそユキがまた泣き出しそうだ

『ユキ、見て』
「レントゲン写真…あ、天蓬のね。骨に異常なし…っ、良かったぁ…」
『もともと骨ってそんな簡単に折れたりしないよ』
「そうだけどっ…あんなに勢いよく腫れたんだよ。びっくりするじゃん」
『そこは同感。でも打撲だって』
「うん。打撲っていっても、普通のよりかは重そうだよね」
『多分ね』
「暫くは絶対安静だろうし…湿布や包帯だって巻かなきゃだよね…?」
『ユキが看病してあげればいいと思う』
「…私にやらせてくれるかな、天蓬」
『私がやるよりもユキがやってあげた方が、絶対喜ぶよ』
「…」
『ユキだって、ケガした時天蓬が傍に居てくれたら嬉しくない?』
「…ん」
『ほらね』
「でもでもっ、一緒に居れる時はそれが出来るけど!家に帰ったら出来ないよ…」
『なんで?』
「なんでってあんたね…天蓬だって一人暮らしだって言ってたし」
『ケガが治るまでユキも一緒に住んだら良いと思うの。天蓬のマンション広いって捲簾言ってた』
「何でさも当然みたいな顔で爆弾発言してんのこの子!!」
『?』
「クエスチョンマークが浮かぶ方が理解できないわっ!!なんで突然一緒に住むことになってるの!?」
『好きだから?』
「好きだけどっ、そーだけどっ!!天蓬の気持ちすっ飛ばしてソレはないでしょうがっ」
『周知の事実』
「……ちょっと六花お願いだから大人しくしてて」

耳まで赤く染めるユキが勢いよく机に突っ伏すのを瞳を細めて笑い見る。
頬杖ついて、吹き込んでくる風に靡く髪を視界に映して
あーとかうーとか唸るユキは見ていてとても面白い
天蓬がユキを好きなのもユキが天蓬を好きなのも、私たちから見ればとてもハッキリと分かる事なのに
本人たちが一向に動いてくれないから、私たちまでやきもきしてしまうよ
…まぁ、天蓬は逃がすつもりもないから今までの関係でユキを泳がせていたんだろうけど
本人は全く気付いていなかったみたいだしね

今回のこの出来事が…彼らにとっての大きな切欠になれば良いと切に願う

きっと…捲簾だって、同じ気持ちだろうから。

『天蓬が帰ってきたら』
「…」
『私も捲簾も授業に出ちゃうから、うまくやってね』
「う、うまくってなによ…」
『天蓬に好きだって言ってみたらいいと思う』
「あのね!!私は六花みたいに自分に素直に生きられないの!…って、そうは言っても六花だって散々逃げたよね」
『うん。ものすっごく逃げた…けど、やっぱり…好きな人の傍に居られるって、すっごくキセキだと思えたから』
「…」
『想いが同じだというのなら、伝えない手はないよ』
「…うん」
『天蓬もユキも…私にとっては二人とも特別』
「私だって…六花は特別だよ」
『ありがとう。出来ることなら、どっちにも傷ついて欲しくないよ』

大切で、大好きな二人だから。
チラリと向けられた視線。
目元だって耳だって赤いけど、好きだって気持ちに嘘はつけないから
逃がすつもりも逃げるつもりもない時点で結果は見えてると思うんだけどね
第三者視点で見ればとってもわかりやすいのに。
…私と捲簾の時もこんな感じだったのかな
だとすればちょっと恥ずかしい

伸びてきた指先がぎゅって私の指を握りしめるから、頑張れって、大丈夫だよって。
私もそっと握り返したんだ。



ぐずついていた空が、ゆっくりとその色を変えていく…

それままるで…二人の気持ちを表わしているかのように見えたんだ



「戻ったぞー」
「ただいま戻りました」
『おかえり、2人とも』
「あーつっかれた…なんだって平日のあんな早くに病院混んでんだよ」
『病院はいつも混んでるよ』
「おかげでえらい待たされたっての」
『でもちゃんと診察室まで一緒に行ってくれたんだね』
「六花だって心配してたろ、いくら自業自得とはいえ」
『ん。』
「トゲのある言い方しないでください」
「付き合ってやったんだ。八つ当たりくらいさせろよ」
「八つ当たり以前にこれみよがしに六花を抱きしめるのやめなさい」
「癒されてんの、ほっとけ」
『よしよし』
「まるで大きな子供ですねぇまったく…」

自覚をしてしまったら。今までなんとか普通に見れていたその表情も、整った顔立ちも、男の人にしては綺麗な指先も…その、柔らかな声ですらも
耳にも目にも心臓にも悪いんだから、恋って不思議だ。
直視なんて出来なくて…それでも無視するのは絶対に嫌だったから…目が泳いでる自覚はあったけどなんとか声を絞り出す事が出来た

「え、っと…打撲だって、聞いた」
「はい。折れてませんでしたよ」
「でも…それ、絶対重い方の打撲だよね…」
「そんな事ありません。痛み止めだって貰ってますし、すぐに治りますよ」
「…ん。」
「ユキ?」
「…あー…えっと、その…とりあえず、ごめんなさい」
「ユキのせいじゃありません。僕がきちんと片付けていれば、わざわざ貴女をそんなふうに悲しませることも無かったんですから」
「次からはちゃんと、脚立も移動させながらしまうよ」
「高い場所のものは僕がやりますから大丈夫です。ね?」
「…っ」

屈んだ天蓬に覗き込まれて、大きく跳ねる心臓。
息まで詰まってしまえば不思議そうに目を瞬く天蓬が僅かに首を傾げる
ああ嫌だ。自覚なんてしてしまえば今までのようにはいかないのに
視界の隅でニヤニヤと笑っている捲簾が映り込む。くそう。他人事だと思って。
六花は楽しそうに笑っているだけだし
…あの二人、絶対助け舟を出す気なんてないな
気付いた天蓬が私を見つめて、少し離れたところに佇む二人に視線を飛ばす。
若干瞳が眇められていたのは気のせいじゃないと思うんだよね、うん

「んじゃ、俺らはもう行くぞー」
『放課後にまたここで待ち合わせね』
「…はあ。分かりましたよ」
「ちゃんとユキのことも連れて来いよ」
「当然です」
『じゃあねユキ。またあとで』
「…六花に今度絶対嫌がらせしてやる」
『それは困るなぁ』

ばいばいって、小さな手を振りながら遠ざかる背中二つを見送って。パタリと閉められた扉の音がやけに大きく響いた気がした
変な静寂に包まれる図書館。
なにか話さなきゃって思うのに、いつもだったら他愛ない会話だってポンポンと浮かんでくるのに。こんな時に限って頭の中は真っ白でなにも浮かんでなんかきやしない
どうしようとぐるぐる思考を回していれば、ガタリと鳴った目の前の椅子
そこはさっきまで六花が座っていた場所で…私の、目の前

右手で頬杖ついた天蓬が、とんでもなく優しい目をしながらただジッと静かに見つめて来る

まるで…どこか楽しんでいるかのように。

…すごくいたたまれないのは私だけだろうか。

なんだ、どうしろというんだ。

大きく鳴り響く自分の心臓の音にそれどころじゃないというのに

「包帯をね」
「…、え…?」
「巻かれてしまったんです。湿布の上から」
「あ…うん、そうみたい、だね」
「暫くはあまり使わないようにって言われました」
「そりゃあ…あんだけ腫れたんだもん。車の運転だって暫くはダメだよ」
「そうなると僕からの家だと電車通勤になっちゃうんですよねぇ」
「えっと…荷物、とかあるし…私、家まで行こうか…?」
「けど、ユキの家から僕の家までだって結構距離があると思いません?」
「そりゃ…そう、だけど」
「ほらね」

どうしろってんだ。どうして欲しいんだ、彼は。
目の前でにこにこと楽しそうに笑う姿にどうしていいかなんて分かるハズもなくて。
きっと今の私はすごい情けない顔をしてるんだと思う
分からなくて泳がせたままだった視線。
ええい…女は度胸!
意を決して真っ直ぐに見つめ返した天蓬の瞳
大丈夫だよって笑う六花を必死に思い浮かべながら

そう、したら…

「ああ…やっと僕を見てくれましたね」
「…」
「嫌われたのかと思ってヒヤヒヤしました」
「…、なんで…そんな目、出来るの」
「それはやっぱり。大切な女性が目の前に居てくれるからじゃないですか?」
「…」
「捲簾にお説教されちゃったんですよ」

綺麗な笑顔と柔らかな目で笑うから、なんだか肩の力まで抜けちゃったんだ。
…たぶん、もう…気付かれてるんだろうなって
嬉しそうに笑う様子はいつもどこか大人びた印象を受けるものとはまた違っていて
年相応な笑い方に…ああ、あなたでもそんなふうに笑うことが出来るんだねって
素直にそう感じたんだ

「…なんて言われたの?」
「手放す気なんて最初からないんなら、さっさと退路でもなんでも絶ってしまえ…って」
「それは…された側はパニックだろうね、きっと」
「ええ。ずっとそう思っていたから今までの関係で我慢していたのに」
「…が、我慢してたんだ…?」
「ええそれはもう。この手の話題にはとことん疎そうなんで」
「…、」
「でもね、ユキ」
「…ん」
「捲簾や六花のように、たった一人の"誰か"に向ける想いというのが、僕にはずっと欠けていたんですよ」
「…今までの付き合ってきた人とか、いなかったの…?」
「恥ずかしい話ですが、そういう気持ちを抱いて向き合ったことはありませんでしたねぇ」
「…」
「だから、もうね。それを見つけてしまったら…無かったことになんて出来ないんですよ」
「…っ!」

言葉と共に伸びてきた大きな手のひらが、私のそれと重なった。
ずるい。ずるいよ、天蓬
わざわざ痛むであろう左腕を動かして、左手で…私の手を握りしめるんだから
もし私が振りほどいたりなんかしたら…絶対に痛いじゃない

振りほどかないことを…ううん

振りほどけないことを分かってて、こんな事をするんだから

「…っ、天蓬は…ずるいよ」
「ええ。知ってます」
「私の気持ち…知ってるくせに、こんなことするんだから」
「僕、意外と子供っぽいんです」
「…知ってるよ…知って、たよ…っ」

時々そうやって、二人の時に無邪気な笑顔を見せるのも。

片付けが苦手で…本当は独りでいるのもあまり好きじゃないってことも

大好きな読書に夢中になってても、絶対に…私が動くと視線で追っていたことだって

ぜんぶ、全部。

私だって同じだったんだから

いつの間にか自分の中で育っていた…その感情の、理由が

「好きなんです。貴女が…ユキのことが、すっごく」
「―――…っ」
「よく笑う人だと思った、優しい女性だと思った」
「…てん、ぽう…」
「向けられるその笑顔が僕だけのものになればいいって、何度想ったか知ってますか?」
「ふ、ふ…そこは、知らなかったなぁ…」
「じゃあ知ってください。これからもっと、自覚してください」
「…」
「僕がずっと…あなたの事が大好きだということを」
「…っ、意外と、ストレートだよね」
「ユキみたいなタイプには回りくどく言っても伝わらないって実感しましたから」
「それはそれは…ご迷惑をおかけいたしました」
「まあでも、楽しかったからいいんですけどね?」

ああどうしよう。涙が止まらないや。
大切な大切な六花の友人
そんなあなたを愛してしまった私と、何も待たない私を愛してくれたあなた
嬉しいね、でも、ごめんね。
きっとこの想いを認めてしまったあの時から…もう絶対、手放せないって思ってしまった
深く強く結ばれていたあなた達の絆を、出来ることならずっと傍で見守り続けることが出来らいいなって。そう思っていたことは事実なのに
感情があるって時々面倒ね
思っていたこととは違う事実に辿りついてしまったよ

まるで確定事項だとでも言うように強く握りしめられた手。
そんなに力入れたら腕、痛いんじゃないの
空いた左手で、彼の大きくて綺麗な手にそっと重ね合わせる
不思議だね。まるで…人の想いは雪みたいだから
知らぬ間にふわりふわりと積もっては、優しく包み込んでしまうから
染み込むように、溶けていってしまうんだから

私も、六花も…そして、天蓬や捲簾も。

誰かを想う心の在り方は同じだったんだねって

向けられる優しい瞳に微笑み返した

「天蓬のその目、わたし好きだよ」
「おや。好きなのは目だけですか?」
「…あまり意地悪しないでよ」
「だって聞きたいんです。ユキの言葉で、ちゃんとした事実を」
「恥ずかしいなぁこれ…」
「ずっと我慢してあげてたんですから、これくらいは許してください」
「…お説ごもっとも」

柔らかくて、あったかくて。
蝋燭みたいにぽわって灯る優しい光り
見つめ返せば、笑ってくれる
想いが同じだというのなら、伝えない手はないよって
静かに照らす月のように微笑った六花を思い出した

「…好きだよ、わたしも…天蓬のこと」
「…はい」
「ずっと…気付かないようにフタをしてたけど…でもやっぱり、好きなんだよ」
「はい」

知ってましたよって、すっごく嬉しそうに笑うから

やっぱりずるいなぁって…私も笑ったんだ







大好きな人の傍にいることの出来る、当たり前のような出来事を

私は彼らと出逢って、それが奇跡だと分かったんだ―――…











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