無秩序な世界 | ナノ


何処に行ったって、俺らは変わらない。


いつだったか、そう読んだのを思い出した。




鳥の囀りが聞こえ始めた朝方。
漂う空腹を誘う香りは台所から。今日は八戒が朝食当番なのだ
料理をやらせたら壊滅的なのは三蔵と悟浄の悟空の三人。私たちは三人で暮らしているから、自然と私と八戒が交代で家事を担うことになる

カーテンから射し込む陽の光りに肘をついて見つめれば、腰や胸元に回された腕に力が込められる。大丈夫だよ。どこにもいかないから。
ドアに背を向けて私を抱き込むように眠る悟浄。いつもいつも私を壁側へ閉じ込めるようにして眠るのは、彼曰く逃げられないようにだそうだ
おかしいよね。逃げるはずなんてないのに。

『…おはよう』

自分が目覚めるまで私が離れる事を良しとしない彼は、眉間に浅く皺を刻みながらもまだ夢の中。朝陽に照らされる真紅の髪を指先ですいて、昨日の八戒の言葉を思い出す


「…だから、譲りません」


私が傷付くことは、よしとしないのだと。どうやら自分で思っていた以上に、私は彼らにそこそこ大きな影響を与えてしまっているようで。
大切にしたいと思えば思うほど、大切にされているような気がした。
この身に宿った力は、消えないけれど。
八戒が立てた仮説通り体内に流れる時間を強制的に早める事で傷を癒すというのなら。

自分の意思とは関係無しにどのみち削られていくのだろう。
命というものは。人間の寿命はだいたい決まっている。生き急いでも損するだけだと人は言うけど、本当にそうだろうか

『…』

少なくとも私は、知っている。覚えている。
最期まで自分の生き方を貫いて散ってった、彼らのことを。
そしてそれはきっと、今を生きる彼らも同じことだ。
みんながみんな同じスタートラインに立っている彼らだって、泥まみれになろうと汚れようと、自分が思うように生きてきた筈だから
長く生きたから得をする。
そんな固定概念が通じるような、大人しい思考の持ち主ではないのだ

『悟浄起きて、朝』
「……っ、…あ……?」
『おはよう』
「…あー…、ハヨ」
『朝だよ。ご飯食べに行こ』
「……まだまだ…よゆーそーねからだ」
『毎日が限界』
「うそくせー…」
『ほら、また寝ないで』

うっすらと覗いた紅は、まだ眠たそうに何度か瞬きを繰り返していて。抱き寄せられた腕の中、一瞬で体は彼の下。覆いかぶさるようにして胸元へ顔を擦り寄せる様子に、ああ確か寝技は得意だとか言っていたっけと思い出す
自由な両手でポンポンと頭を撫でていればくぐもった声

「んじゃ今夜はもうちょいヤるか」
『バカなこと言ってないで起きて。八戒がそろそろ呼びに来るよ』
「俺ケッコー本気なんだケド」
『…ばか』

覗き込んでくる紅に笑えばハイライトの味。ぬるりと好き勝手口内を滑る熱を大人しく受け入れていれば漸く満足したのか。離れた唇が笑みを象っていて。もう一度おはようと言えばおはようと返ってくる
そんな些細なことにさえも幸せを感じるようになった私は、自分で思う以上に単純なのかもしれない
上裸のまま起きる悟浄に倣って私も起き上がる。…慣れないのは、毎朝床に散らばる自分の服を見つけること

自分はちゃっかりズボン履いて寝るクセに、私が服を着ようとすると何故か拒むのだ。この男は。理不尽極まりない。気恥ずかしさから何度かそういった攻防を繰り返していれば、いつからだったか。
意識が飛ぶまで行為に及ぶまでになっていて。おかげで私は服を探すことすらも出来なくなってしまった。やっぱり理不尽だ。

「ほい、着替えんぞ」
『…悟浄はずるいと思うの』
「なんとでも。ほら、後ろ向けって」
『だからっ…着替えは自分でやるからいいってば』
「シーツに包んだまま連れてくぞー」
『…』
「俺の楽しみの一つなンでね。譲らねぇよ」
『…思ってた以上に変態』
「ははッ、そりゃ残念でした」

拾い集めた彼の手が、シーツを剥がしにかかる。
背後に座ったと思えば伸びてきた手に下着をつけられた。毎朝毎朝、いったいこの男は私をどうしたいんだ。羞恥で心臓が爆発したらどうしてくれる。拒んだところで大人しく引き下がるような性格じゃないのだ、悟浄は。ああもう…恥ずかしい。
慣れた手つきで止められたホックと同時に生まれた少しの窮屈感
箪笥から取ってきたであろう薄手のセーターは最近暖かい日が続いているからと、悟浄が買ってくれた物だ。ちなみに色は鮮やかな紅
頭からすっぽりと着せられて、腕を通す。
なんだか着せ替え人形みたいだな、私。

「でけぇよな結香って」
『…それ以上喋らないで』
「やァーっぱ俺、今までお前のこと抱いてきた野郎ども血祭りにしてェ」
『犯罪だからねそれ』
「ムカつくんだもんよ」
『……言っても仕方ないことでしょうに』
「分かってんだけどなァ」
『悟浄しか好きにならなかったよ』
「それも知ってる」
『じゃあいいじゃな…って、なに、してんのっ』
「微調整?」

じんわりと。
体温の高い掌が肌と下着の間に滑りこんでくる。持ち上げるように位置を調整して、肩の紐を調節する。なに、なんなの。私をどうしたいのあなたは。人よりも多少大きく育った膨らみは、大きな悟浄の掌には収まるだろうに。大きいってなに、なんなの。なにがしたいの。
ぱちんと響いた合図の音。
「完璧」なんて笑う後ろの声に耳まで朱くなってしまったのはバレているだろう。本当に、慣れない。こんなふうに…確かな甘い想いを以て触れられることなんて、今までなかったから余計に。

胸元で揺れる黒い勾玉が冷たく感じるのは私の体が熱をもっている証拠だろう。回された両腕に抱きしめられてしまえば体が揺れる。くつくつと喉を鳴らして笑いを堪えているのは絶対に私の反応で遊んでいるんだろう
年上をからかうなんて、本当にいい度胸している。

『…っ』
「なんなら下も履かせてやろーか?」
『いい加減にしないとそろそろ心臓爆発する』
「スンゲー真っ赤」
『もう離して』
「おー出た出た、結香のクセ」
『うるさいですよ悟浄くん』

ケラケラと笑う姿に睨んでみても、朱い目元じゃ威力なんてたかが知れてる。悪かったよと手渡された白いスカートは私がこの世界に来た時に履いていたものの一つで。あまりスカートをはくことを良しとしてくれない悟浄だけど、これだけは許してくれる。まぁ三蔵の手伝いの時は絶対ズボンだと何度も何度も言われ続けているけれど
今日はあたたかいらしい。
レースのそれは春らしい軽い素材だから、履いてもおかしくはないだろう。後は黒のブーツでおしまい

身支度を漸く整えて立ち上がれば、黒のズボンにワイシャツの彼が同様に立ち上がった。スタイルも顔もいいと何を着ても似合うんだからずるいよね。眼鏡をかけながら手櫛で乱れる髪を整えて、鏡の前で確認。何回いっても見えるところにつけたがる悟浄を説得するけど、万が一を考えての重要事項だ。見ればやっぱり、ギリギリのところに咲いていた紅い華
恨めしげに鏡越しから視線を飛ばせば気にするなと笑う
悟空に問われたらなんと答えろというんだこの男は。

『…もう嫌』
「ははッ、諦めろって」
『今度から睡眠薬飲ませてとっとと寝かす』
「それ本人の前で言ったらイミなくね?」
『…』
「結香って変なところで抜けてるよな」
『……うるさい』
「んじゃ、まー呼び出しかかる前に行くか」
『今度から八戒と寝ようかな』
「自分の身体がどうなってもいーならドーゾ?」
『三人で寝るとか』
「公開プレイがお好みなら」
『…だれかこの男どうにかしてッ』

洗面台の前で並んで身支度。
しゃこしゃこ音色を響かせて楽し気に紅を細める姿に耐え切れず、肘で一発殴っておいた。ああいやだ。こんな変態でもなんでこんなに好きになってしまったのか。一度ハマったら抜け出せやしない
抜け出すつもりもないけれど。
こんなこと言ったらまた調子に乗るから絶対に言わないけれど

濡れた顔をタオルで拭いてサッパリ。
びしょびしょのまま顔を上げた悟浄に手渡せばあーとか言いながら拭いている。漸くシャキッとしましたか。本当に早くしないと八戒が呼びにくるよ
今更になって鳴りだしたお腹に腹減ったとぼやくから、なんだかおかしくて笑ってしまった



「ああ、漸く起きてきましたね。おはようございます」
「おはよーサン」
『おはよう八戒』
「今起こしにいこうかと思ってたところです」
「俺はいーケド結香が恥ずかしがるがらやめたげて」
「ええそうでしょうね」
『いただきます』
「耳真っ赤ですよ結香チャン」
『気のせいですよ悟浄くん』
「くん言うなっつの」
「今日の二人の予定は?」
「あー、どーすっかなァ」
『悟空の実戦試験』
「んじゃ俺もついてくか」
「んー。楽しそうですから僕も行きましょうかね」
『じゃあ食べ終わったら三人で寺院に行こうか』
「さんせー」
「決まりですね」

晴れやかな春の一日。
片づけを済ませて、三人揃って家を出る。
見上げた空は浅葱色。風も心地よく、首筋で揺れる黒糸。見上げた先には同じように揺れる真紅。良い風ですねぇと笑う眸は柔らかかった

三人並んで長安へと歩いていく。その距離は時間にすると凡そ30分程度。
人目を避けて生きてきたかれらにとっては、森の中の方が過ごしやすかったのだろう。それでも、今となっては三蔵や悟空と関わることが増え、手伝いなどをこなすことも増えてきた。
移動距離はめんどうにならないのかなと、森を進みながらふと思う

『そういえば、この間この近くで妖怪がでたらしい』
「マジか」
『三人くらいケガした人も出たって』
「最近になって、妖怪の狂暴化が著しいですからね。今までこんな事なかったのに…」
「結香、あんま一人で出歩くなよ」
『その辺の妖怪相手ならまだ負けない』
「ケガをされては大変ですから、僕か悟浄のどちらかを連れてってください」
『じゃあそうしよう』
「お。素直じゃん」
『八戒の笑顔で悟った』
「悟空との面会禁止が予想以上に効いてんのね」
「無茶はいけません。女性なんですから」
「そうそう」
『思った以上に二人が過保護でお姉さん大変』

元気すぎるお姉さんで僕らも大変ですよって、困ったように笑う八戒にそれもそうかと妙に納得してしまった。私もこれでいて大人しい性格ではない気がする。おかしいね。昔はもっと色んなことがどうでもよかったのに。そうやって生きてきたハズなのに
みんなと出会って変わったよ
細く続くミチを歩き続けていれば、なんだか周りの木々がザワつき始める。感じたことのある気配に三人同時に歩みを止める
ああほら、言ったそばからだもん
もしかしたら近いのかもしれない。彼らの、試練が。

あの、旅が…

「おーおー、これまた偉い団体様だな」
「いやですねぇ。僕らなにも悪いことしてないんですけど」
『誰かが疫病神なのかも』
「悟浄ですね」
「なんで俺なんだよ!」
「だって僕も結香も良い子ですよ?」
「結香はともかくお前はなんか違うだろ」
『ああほら、来た』

その数ざっと20人程。
腰に差していた木刀を引き抜けば、悟浄が錫月杖を召喚する。こんな風に狭い場所だと彼のリーチの長さは不利だろうなって。訓練を始める前まではそう思ってた
だけど。

「オラオラッ、来るならかかって来いよザコども!」
「あなたは…またそうやって挑発する」
「全部倒せば問題ねーだろッ」
『数だけあっても実力が伴わないと意味ないからね』

自由自在に宙を舞う刃。絡めとる鎖は完全に妖怪の動きを封じていて、切り裂かれた体が地に伏せる。襲いくる妖怪を木刀握りしめて的確に急所を突けば頽れる体。
八戒も相手が持っていた武器を奪い取って殴り飛ばしていたけれど、そうか。まだ気功術を使えないのか。まぁあれは集中力の問題だから、八戒なら切欠さえあれば今すぐにでも使えそうなものだけど。確か構えはこんな感じだったけ。昔アニメで見た某主人公が使うような構えをとれば、離れたところで戦う二人の不思議そうな視線と声が飛ぶ

『確かイメージは波動拳』

空に散らばる気を集めて掌から放つ。撃つ姿をイメージして両手を合わせていけば、掌の中に集まりだした黄色い光。
あ、意外と普通にできるものなんだ。悟空や悟浄は出来なさそうだけど
あれ、でも、待って。

「え、えっ!? 結香!?」
「おいおいっ…なにぶっ放すつもりだよっ」
『しくった。大きさまでイメージしてなかった』
「結香!?」
『ごめん頑張って避けてね』
「「!?」」

予想以上に大きくなり出した光の玉。
掌でつくる空間に収まりきらないのか、押し広げるかのような力に眉根を寄せながら堪えていれば、一斉に正面から突っ込んでくる妖怪たち。
奴ら目掛けて両手を突き放せば、ビックリ。

ドカァン。
周りの木々までもなぎ倒しながら黄色い閃光が辺り一帯の妖怪を消し炭にしてしまった。それはいい。面倒な相手をしなくて済んだから、それはいいんだけれど。問題は放った私自身。あれだけのエネルギーを前方へと撃つにはそれに耐えるだけの力を以て体を支えないといけないのに
自分でも予想外の大きさについていけず、踏ん張ったけど物の見事に勢いよく後方へ飛ばされてしまったのだ。あ、まずい。
息が詰まる感覚に八戒の叫び声が聞こえる。木々にでもぶち当たれば止まれるかななんて
骨が折れないことを祈って衝撃に備えた体が、何かに勢いよくぶつかってそのまま太い木の幹へとぶつかった

この、ぬくもりは。

「ゲホ…ッ」
「結香っ、悟浄!!大丈夫ですか!?」
『…っ、悟浄…!』
「―――〜〜〜ビビったァ!!」
「『!?』」

私を抱きしめたまま幹にぶつかった悟浄の体。
何度か咳き込む彼に慌てて見上げれば、とっても真剣な顔でそう叫ぶから何事だと目を瞬かせる。走ってきた八戒が無事だと分かって息を吐き出していた

『ごめん、悟浄大丈夫!?』
「あー…ほんと、頼むからあんま俺の心臓イジメんなって結香」
『ごめん。私もあんなに大きくなるとは思わなかった』
「おけげサマで雑魚ども一網打尽だけどな」
『ケガしてない?』
「ちーっとも。それよか結香は大丈夫かよ」
『悟浄が抱き留めてくれたから、無事』
「物凄い勢いで飛んでいきましたね…本当に、ケガがなくて何よりです」
『カメハメハも気を付けて使わなきゃ…』
「なんじゃそりゃ」
『さっきのやつ』
「そんな名前なんですか?」
『違うけど』
「なんだそれ」

もう一度彼に怪我がないか確認すれば、そんなヤワな鍛え方してねぇよと笑う声。興味本意でやったとはいえ、あそこまで大きくなるなんて。加減が分からないから私には不向きかもしれない
毎度こんな風に吹っ飛ばされてしまえば悟浄を巻き込んでしまう

『……、良かった…本当に怪我してなかった』
「だァから大丈夫だっつったろ?」
「悟浄なら崖から突き落としても死なないから大丈夫ですよ、結香」
「俺はバケモンか」
『もう使うのやめるね』
「俺が居るときなら受け止めてやれんぜ?」
『悟浄に怪我させたくないからやらない』
「でも、凄かったですよ。あんな戦い方も出来るんですね」
『…集中力とイメージの問題だから、やろうと思えば誰にでもできるよ』
「え、僕もですか?」
『八戒なら上手く扱えるかもね、気を』
「そーいや、なんてぇの?アレ」
『気功術』

差し出された手を掴んで立ち上がれば優しく土を払ってくれる手。大きなエネルギーを放ったが故に微かに痺れる両手に嘆息すれば、正面では八戒がうーんと首を傾げている。あなたならきっとできるよ。というより、最適だろうから
最後にもう一度幹へぶつかった背中を見つめれば、シャツに多少の汚れは見えるけれど出血をしているようには見えない

『シャツ捲るよ』
「ほんっと心配性だなお前」
『…痣になってる』
「あー…ま、勢いはあったからな」
『……』
「おーい、そんなに落ち込むなって」
『ごめんね』
「結香が無事ならそれで良し」
「…要するに。この大気中に流れている気や体内を流れる気を自由に扱うことができるのが気功術なんですよね?」
「あん?」
『……ん。』
「だったら…悟浄、ちょっと背中借りますよ」
「おいおい、今度はなんだっての」

シャツを捲ったまま痣の出来た場所に手を翳す八戒。あ、もしかして。眸を瞬かせて彼を見つめればにっこりと笑ってくれる
…相変わらず物事を理解する能力に長けている。
見よう見まねなのでうまく出来る保証はありませんけどって、そんなこと言う割には様になっていた

翳した八戒の掌から、柔らかな光が溢れ出す。翳した背中にあった青い痣が、みるみるうちに癒えていくのが分かって瞠目した。本当にできるんだ、こういうことも

「どうですか?」
「すっげ!痛みなくなったぞ…何したんだよ八戒」
「僕の体内に流れる気を、悟浄に分けてみたんです。そうするとどうやら傷の回復を促進できるみたいですね」
「へえ。便利なモンだな、気功術ってのは」
「結香のように命を削るようなこともないので、使い過ぎなければ利用価値ありですね」
『ありがとう、八戒』
「あなたの悲しそうな顔は見ていて僕も辛いですから」
「ほら!万事解決したんだから、んなに落ち込むなって結香」
『なんだか物凄く自己嫌悪』
「何言ってんだ、結香のお蔭で妖怪も一蹴出来たんだぜ?」
「それにコレなら僕も武器を持たずに戦えますし、戦闘スタイルが決まって嬉しいですよ」
『あー、うん、そうね』
「…うっし。んじゃ、落ち込んでるおねーサンを元気づけるとしますかね」
「ああ、いいですねそれ」
『…?』

再び歩き出した際に、ふと両手に感じたふたつのぬくもり。
右手は悟浄に、左手は八戒に握られていて。前を向いたまま瞬いてから、交互に見上げた二人の横顔。どっちも笑顔だ
元気がない時は人のぬくもりに触れると元気になるんですよ
そう笑ってくれた八戒に答えるように揺れる真紅。ほらなって繋いだ手を揺らされれば苦笑するしかない

「にしても、結香のアレだって改良すりゃ使えんじゃね?」
『どうだろう…なんていうか、私のはいろいろと勢いが良すぎる』
「それだけ結香の中に気が多いということなんでしょうね」
『そうなのかな』
「今度一緒に特訓してみます?」
『あ、やる。放つのは難しそうだから、八戒がやったみたいにケガの促進とか』
「すげえ、俺ら医者要らずになんじゃねえ?」
「治療費が浮きますね」
『節約にはもってこいか』
「ははッ、違いねえーや」

三人繋いで、道を歩く。
こんなふうにずっと、ずーっと。
長く続く人生を生きていけたら幸せっていうんだろうなって。
どこか楽しげな二人をみて考えた


そろそろ、きっと。


"選択"する時が近づいてきているんだろうから







桃源郷を侵食していく、異変。

それを突き止める為にはじめる、長い永い旅


わたしは、どうだろう。


すべてを看届けるだけの覚悟が、出来るだろうか―――…










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