嫦娥の花宴 | ナノ



それは、きっと。

いつかの、どこかで

あの二人が交わした言葉の中に―――…






同じなんだろうな、ってさ。










「誕生花?」
『そーそ、昨日同じ部署の子に聞かれてさ。そういや輝の誕生花って何だろうとね』
「ああ、そういう事。気にした事無かったわ」
『だろうね。んーと…輝の誕生花、っと』

雑踏が鳴り止まない都会の一角
久しぶりに休みが合った彼女と待ち合わせたカフェ内で、八百鼡から問われた言葉をそのまま尋ねれば予想通りの回答に一つ頷いた
花言葉なんて確かに余程の花好きでなければ知らないだろう。誕生花何てものがあること自体初耳だと言う人も多い

「それで?黎明はなんなの」
『薊』
「アザミ…初めて聞いたわ」
『因みに花言葉は孤独』
「…そんなに友達少なかったっけ」
『喧嘩なら買うぞー』
「ああ、そう言えばカエルの灰皿がお友達だもんね」
『よーしその喧嘩買った』

スマホ片手に瞳を眇めて頬杖つけば、ストローに口付ける輝が「やるなら場所変えなきゃ」と愉しげに笑っている。別に居ない訳じゃないぞ。
ただプライベートでつるむ存在を厳選してるだけだ。職場じゃそれなりに八方美人かまして色んな人間との関係性は保ってる。…あ、これじゃ友達って言わないか。そうか。

『てか、友達の厳選の仕方は輝も似たよーなもんだと』
「言えてる。面倒事は極力避けたいんだよ」
『同感。そう考えたら"まえ"も今も大して変わんないわ』
「強いて言うなら列記とした人間になったって事くらい?」
『すっげぇ微々たる変化』
「黎明からすれば人外からの昇格じゃないの」
『誰が人外じゃい。まえも半分は人間だったって。……多分。』
「たぶん、ね」
『…』

この世の中に、どのくらいいるんだろうか。

気が遠くなるほどに霞がかった向こう側

前世の記憶を失わずに今生を生きている存在は


いつかきっと還るからと光を託し、一度は自ら進んで散ることを選んだ過去

ただ一人と定めた存在に付き従い、その者の意志を守ると決めた過去

転生を繰り返し辿り着いた先の世界で、4つの光と出会えたこと

ゼロに還ったあの世界で、自ら指揮をとり再びその花を咲かせ繋いだこと


遠い、遠い昔のことなのに


今もずっと…刻まれた記憶がある


交わした言葉が、ある


「…結局誕生花って何だったのさ」
『!、あぁ、そうそう。誕生花…えーと、白薔薇だってよ』
「へえ。」
『予想通りだけど何かもっと別の反応とかないの』
「バラって匂いキツいんだよね、確か」
『でもやっぱり綺麗なつくりしてるじゃん。クールビューティ輝にはぴったりかと』
「口に咥えて踊ればいいのかな」
『イケメンホストも白旗振るね、それ』
「誰がホストだ」
『じゃあ男装喫茶の美女店員?』
「残念ながら普通の美容師」
『HEAVENの人気ナンバーワン美容師だもんね』
「毎回指名してくるなんて黎明ぐらいだよ」
『んじゃ、イケメン美女にそろそろまた髪切って貰おうかな』
「ウチの店、明後日からポイント2倍」
『んじゃ明後日』
「あ、でも来るなら早めだと助かる」
『? なんかあんの?』
「その日店長の送別会なんだよね」
『へえ!あの人異動すんだ?』
「新店オープンするってんで、そこの店長になるんだってさ。だからその日は閉店時間早まるんだよ」
『おうおう。それなら大丈夫、土曜は休みだから輝に合わせるよ』
「んじゃ午前中で」
『イエッサー。午前中のうちに輝に会いにいく。ついでに髪切って貰お』
「ふふ。目的すり替わってる」
『だって私らが休み合うなんて滅多にないもんよ。今日だってたまたま輝が祝日休みで会えたようなもんだし?』
「私はシフト制だから変則だし、黎明はカレンダー通りだから余計合いにくいもんね」
『そーれな』


わたしは、まだ。

あの頃の記憶を持つ存在は、輝しか知らない


…彼らも何処かに在るんだろうか


『てーことは、新しく店長さんくんの?』
「らしいよ。詳しくは知らないけどね」
『ふーん。配属したら覗きに行こーっと』
「暇人か」
『土日祝は割と』
「友達少ないんだっけ」
『その手に持ってるコーヒー逆噴射させんぞ』
「クリーニング代は黎明持ち決定」
『こんにゃろう』


どこかの雑踏のなか…退屈そうな顔をしながらも馴染んでいるんだろうか


もしそうだったとしても、きっと

変わらないんだろうなって


なんとなく、そう思ったんだ。


だからね―――…多分、きっとさ


『お』
「ん?」
『桃源駅の近くにバラ園あるってさ』
「…あんな都心のド真ん中に?」
『ド真ん中だからじゃない?集客目的とかさ』
「そんな事しなくたって、都心は人多いと思うけど」
『通勤やら仕事やらで利用してるからっしょ。観光地とかそれこそほぼ皆無やん』
「…確かに」
『どーせ暇だし、サクッと寄ってみるか。ついでだから花言葉も調べてみよ』
「私より行く気満々」
『…』
「? 黎明」

あの人だって変わらないと思うんだよ。
輝に言ったら絶対眉間にシワ寄せそうだけど
手元の画面を暫し見つめて、表示されたその言葉を噛み締めてからゆっくりと視線を輝へと戻す。怪訝そうに眉根を寄せる姿に…そう、ふとあの人の面影が浮かんだんだ

ああでも、これは

きっと私からじゃない気がしたから。

『―――…よし。うん。ほらほら輝もボケっとしてないで行くよ』
「ちょっと、そんな慌てなくたって枯れないってば」
『因みにここは私の奢りってことで』
「なに、どうしたのいきなり」
『閲覧料的な?』
「頼むから日本語話してくれない」
『現代文のテストは毎年赤点だったわ』
「国語からやり直したらどう」
『あー、駅ってどっち?』
「…はぁ」
『えーと…あっちから来たからこっちかぐえっ』
「そっちは逆方向。なんでこんなわかり易い道で迷子フラグ立てられるの」
『輝さん輝さん首締まるいやむしろもう締まってる!!襟首とは卑怯な!』
「どっかの誰かさんが訳も分からず突っ走るから」
『一瞬お花畑見えたわ!!』
「タダで見れて良かったね」
『やだもうこの人怖い!!』


共有する記憶の中にも、少しだけ

違う想い出を宿す私たちだからこそ

気がつけること、感じ取れること

それぞれね…あるんだよ


輝はどんな言葉を交わしたのかな。










『いよっしゃあ到着!』
「…簡単な一本道で迷う癖に、何であんな大迷路みたいな都心の駅で迷わないのか、割と本気で謎なんだけど」
『都心の駅なんて横に長いか縦に長いかの差でしょ。逆に駅中弱い輝の方が意外。道順じゃ絶対迷わないのに』
「どう見たって魔宮でしょ、あそこは」
『まさかの魔宮』

疲れきったように肩をすくめる姿にひとしきり笑って、期間限定で開催中だと言うそこに足を踏み入れる。
赤、白、黄、黒、青
そこには色とりどりのバラがとても綺麗に咲き誇っていて。ここまで大量だと匂いもそれなりにキツいのかとも思ったが、程よく吹き抜ける風が絶妙な加減で空気を巡らせている
併設しているカフェではバラをモチーフにしたスイーツやフード、紅茶が楽しめるんだとか。なにそれ美味しそう。

「へえ。バラって青もあるの」
『遺伝子組み換えでね。数年前に一般販売が開始されたの。バラには本来青色の色素は無かったんだよ』
「…そう言えば黎明って花好きだったっけ」
『思い出してくれて何より。ま、趣味範囲だけどね』
「桜のイメージしか無かったわ。あとは彼岸花とか」
『その子たちは他県まで観に行くくらいには好きだもんなぁ。そんではい、パンフレット』
「ありがとう」
『一通り回ってみよ』
「あ」
『んー?』
「花言葉のプレートもある。青薔薇の花言葉は"夢かなう"だって。他にも書いてあるけど」
『BLUE ROSEの言葉にゃ"不可能"なんて意味もあったのにねぇ。バラ愛好家にとって青薔薇は夢だったんだと』
「それで夢かなうになったと。努力の賜物ってことね」
『そういう事』
「黒バラが観たい」
『まさかの黒チョイス』
「だってノアールって、確か黒って意味でしょ」
『…よく覚えてんね』
「覚えてるよ。ハイライトも、アーク・ロイヤルも」
『…』
「身近だったから」

そういやしょっちゅう輝の前でも吸ってたっけ
カバンに入ったままのその3つは、私にとって一種の願掛けにもなっている。まあこの時代じゃ外で吸える場所も限りなくゼロに近づいてきているけれど。
パンフレットに視線を落とす輝を一瞥して、浅葱色の空を見上げた

気まぐれ美人だと笑っていた彼は…

今もまだ、その意味の中に居てくれてるんだろうか。

ハイライトが持つ意味…それは、もっとも陽のあたる場所


お似合いだと思うんだよね。ほんと。


「あった」
『お。見っけた?』
「最奥だけどね。白薔薇ゾーンの隣だって」
『んじゃ行きますか』
「まだ吸ってるんでしょ」
『あはは。そうだねえ、これもまた一つの繋がりだったから』
「…」
『そーいや、あの人にバレた時はかなり驚かれたっけ』
「私も驚いた。吸うようなイメージ無かったからね、当時は」
『あの二人とつるむようになって汚染された』
「なるほど。でもまぁ、影響されるって意味なら…少し分かる」
『輝もめっちゃ影響されてたよね』
「…あそこまで頭固く無かったと思うけど」
『頑固で正義感が強かった』
「……否定はしない」
『あとはやたら仕事が速い。手ぇ抜くってこと、絶対しなかったもんね』
「やるんなら確実に熟すのが基本でしょ」
『それが今生でも最大限に適用されてるよねぇ。ほんと』

語り合える、こと

同じ記憶を持ち得ていられたこと

そんな彼女と 出逢えたこと


感謝をするなら観音かな、なんて


見えてきた黒バラにスマホを取り出しながら思う


なんとなく、本当になんとなくだけど


あの意味を持つ花が定められた日、この世に産まれた輝だから


繋がってる気がしたんだ。


「黒バラって花言葉なんなの」
『あれ。プレートない?』
「…埋もれてて分からないんだよ」
『黒バラは"憎しみと恨み"』
「…青薔薇は夢かなうの他にも喝采って書いてあった。他にもあるんでしょ」
『おー。良く気がつけました!』
「馬鹿にされてるのかな」
『まっさかあ。…黒バラには"永遠の愛"って言う意味もある』
「ふうん。捲簾にあげたらどう。天上の蟻にはぴったりじゃない」
『いやいや、この世にいるかも記憶持ちかも分からんからね』
「大丈夫でしょ」
『…』
「黎明がこうなんだから、捲簾だって同じだよ―――…絶対に」
『…』

キッパリと、ハッキリと。意思の強い漆の瞳が突き刺さる。瞠目した私に構わず黒バラに視線を落とす輝を見つめて、ゆっくりと私も眺め見た
そう、なんだろうか。そうだったらいいな何て
都合のいい願いを抱く自分に少しだけ苦笑したんだ

自分だけだと思ってたから。あの日々の記憶を失わずに生きていたのは

けれど、この世界はそんな私に輝をくれた

出会うきっかけを与えてくれたから

これ以上望むのは罰当たりな気がするんだよ


「さっきの店にオリジナルグッズ売ってるって」
『…ん?』
「黒バラのプリザーブドフラワー?があるらしいから、後で買いに行こ」
『…輝のそういう所、ほんと好きだわ』
「伊達に付き合い長くないからね」

カメラに収めた黒バラ
暫く待ち受けにしようかなとか考えながら、目的の白薔薇へと歩き出す
この花が持つ意味を、輝には是非とも知って欲しい

『お。ちょうど貸し切り状態。ラッキー』
「結局花言葉ってなんだったの」
『プレート探してみ』
「咲きすぎてて埋もれてるんだよ」
『まあまあそう言わずに、さ。1周してみようよ』
「それは良いけど、何をそこまで拘る―――…」
『…』


ああ、ほら、ね。

同系色だとほんっと目立たないから面白い

歩き出した輝がふいに止めたその先で

咲き誇る白薔薇を見つめ一人佇んでいたのは


「―――…、敖潤…?」
「…」


変わらない髪の色、振り向いた先で見つけた瞳も

あの頃となんら変わらない

捲られた袖口から覗く腕には薄らと鱗のような痕が残されていて

珍しくも驚愕の色を宿した輝の声に、その表情に

そっと笑いながら一歩後ろへと引き下がる


「…輝か」
「…、いやいや。おかしいでしょう。なに、なんで私の名前…」
「その様子だと、どうやら私だけでは無かったようだな」
「…」
『はいそこで私をガン見しない』
「…グル?」
『んな馬鹿な。私だってびっくりだわ』
「…」
「黎明隊長か」
『お久しぶりです。竜王殿』
「よく私だと分かったな」
『いやいや、容姿なんて激似じゃないですか。あの頃と』
「そうか」
「ちょっと待って。グルじゃないのに何で普通に馴染んでるの二人とも」
『いやあ。だって輝の誕生花が白薔薇なんだし?』
「意味が分からない」
『さあ頑張れ輝!この状況の答えはたぶんその花言葉だぞ!』
「なんか妙に腹が立つんだけど」
『珍しく困惑してますなー。貴重貴重』
「やっぱり殴っていい」
『暴力反対っ』

立ち止まって、目を見開いて
完全に思考停止する輝に納得したような表情をする竜王が、ふと白薔薇と輝を交互に眺め見た

ねえ、輝

私たちが知らない想い出のなかで

きっと たくさんの言葉を交わしたんでしょう

この二人の関係性は見ていてとても楽しかったから

「…、驚いた。まさか敖潤まで存在してたなんて」
「まえに比べると随分とわかり易い反応の仕方だな」
「列記とした人間カテゴリに入るからね。いまは」
「それもそうか」
「そもそも、何で敖潤がこんな所にいるの。イメージ無さすぎて違和感しか抱けないんだけど」
「新たに配属される店が都心だっただけだ。暇を持て余していてな」
「へえ。なにやってんの」
「美容師だ」
「うわ」
「…?」

思いがけず零れた言葉は仕方ないと思う。
予想外どころか斜め上からの回答に思わず元上官をガン見する
敖潤が美容師とかこの世界はいったいどうなってるんだ
どこぞのエリート企業の部長とかの方が確実に違和感が無いというのに
さすがに黎明も意外だったんだろう。少し離れた場所で『似合いませんね!イメージ皆無!』と笑っている
しかも同業ときた。なんだ、どうなってるんだ。

「輝はどうなんだ。働いていない訳では無いだろう」
「…」
「…私が言うのもおかしな話しだが、眉間の皺が取れなくなるぞ」
「そう思うんならイメージ通りでいてほしかった。まさか今生でも同業とは思わなかったよ」
「ほぉ…美容師、か」
「…因みに配属先ってどこの店」
「ああ…確か天街町にあるHEAVENと言う店だ。彼処の副店長とは縁がある」
「…」

ダメだ。後ろで黎明が爆笑している。ハリセンではたくくらいは許される気がした。勿論黎明を。勘弁して欲しい。私たちの人生どうなったらこうも重なるのか。新しく配属されるって時点でなんとなく可能性として予測は出来たがこうもブレなく当てはまるとは思わなかったぞ

嬉しくないわけじゃ、ない

あの日々の記憶を失わずに生きていたのは

抱えて歩んできたのは

私たちだけじゃ無かったんだと知れたから

意志を守り継ぐと決めたその存在が、同じように生きていてくれたから

…こんな出会い方をするなんて思ってなかったけどね

「黎明うるさい」
『いやあ。これは笑うしかないって。無理。笑い過ぎてお腹痛い』
「?」
「はぁ…まさか今生でも同じとか。驚き通り越して反応に困るね」
「ああ、そうか。輝の店と同じという事か」
「よろしく。元上官サマ」
「妙な縁が続くものだな」

感心したような声音には肩をすくめる事で応えた
それにしても、暇を持て余したとはいえどうしてこんな違和感しか抱けない場所に出向こうと思ったのか。黎明が言ったこの状況の答えも気になる

「この花には花言葉というものが存在するらしい」
「白薔薇だけじゃなくて他の花にもあるけどね」
「そうか」

いつの間にか、黎明の姿が消えていた

ゆるく吹き抜ける風が眼前の花たちを揺らす

物静かに眺め見る敖潤に、なんとなく

少しだけ離れた位置に並び立った

黎明はよく私たちの関係を楽しいと言って笑っていたっけ

私から言わせればあの3人の方が余程退屈しないと思うけど

「花言葉がどうかしたの」
「交わした言葉は確かに多くあっただろう」
「…」
「輝は知っているのか」
「黎明が教えてくれなかったからね。敖潤は知ってるの」

その花言葉が答えなのだと
いつになく楽しげに笑っていた様子を思い出していれば、ふと
男にしては長い指先が指し示した花の下

そこに紛れ込むように、同色のプレートが教えてくれた


ああ、そうか。

黎明が拘った意味が 分かったような気がした



「―――…」
「まさかこのような形で果たされるとは思いもしなかったがな」
「…そう、だね。腐れ縁なのかな。もしかして」


抱えた痛みは、想いは

私も黎明もそれぞれ違うように


この人も、きっと


抱えているのだろう


あの時に交わした言葉を覚えているのは


忘れないでいてくれたのは。


「先に言っとくけど、ウチの店、忙しいよ」
「そうらしいな」
「売り上げ保たなきゃだし」
「問題ないだろう。私と輝が居れば」
「…そういう所、ほんと変わらないんだね。口癖だったでしょ。事ある毎にそれしか言わなかった」
「事実しか言わない」
「…」
「これは輝、お前の口癖だったな」
「…」
「私も倣ってみることにしただけだ」

この人の中で、少しでもあの日々が充実していたからだと

そう思っても良いんだろうか。

「黎明に聞かれたらまた爆笑されそうだ」
「そう言えば姿が見えないが…いいのか」
「どうせ近くにいるよ。写真でも撮りまくってるんじゃない」
「花好きだったのか。あの性格からは想像出来んな」
「桜は今でも好きらしいよ。…多分、あの3人に共通する一つ何だと思う」
「…」
「桜と共に散った彼らを…"羨ましい"と思った」
「…ああ」
「"次"はもっと近くでって。無意識にそう考えてたのかも知れないなって」
「…」
「それに、黎明はウチの店の常連だからね。そのうちあの二人もひょっこり顔出すかもよ」
「騒がしくなりそうだな」
「いいじゃない。私たちらしくて」


無くしたと思っていた、当時の友人たち

黎明はこうして再び私と縁を結んでくれたから

白薔薇の花言葉と共に、この人と繋いでくれたから


今度は、私たちが繋げたらいい。


あの自由奔放で型破りな、彼ら3人を


近くで眺めているのは楽しさもあったから


「さて、と。その辺で迷子になってる黎明でも捕獲しに行くか」
「いつになってもそれは変わらんのだな」
「そのうち本気で発信機とかつけようとすら思う」
「保護者が見つかるまでは問題ないだろう。遠征報告にもたびたび上がっていた」
「捲簾が嘆いてたよ。妖獣捕獲よりはぐれた黎明を捕獲する方が面倒だってね」
「だろうな」


いつかまた、集うことが出来たなら

その時は盛大に笑ってやろうとも思う。


"やっぱりまた会えたね"


たぶんきっと そう遠い未来でも無い気がしたから。





「改めて。これからよろしく」
「ああ。長い付き合いになりそうだ」


誰も見分けがつかないと、そう言われていたように

少しだけ緩んだその目元に、口許に、表情に


今もまだ気が付ける自分に少しだけ


私も同じように微笑ったんだ。







花に埋もれたテンプレートが示す言の葉

それは―――…




"約束を守る"



いつかの、どこかで



私たちが交わした言葉の着地点だった。














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