嫦娥の花宴 | ナノ



記憶喪失―――…

その種類は多種多様で、症状の程度もその時々で異なることが多いという。










「ああああああああっ!!!!」
「っるせェよこのバカ猿!!耳元で騒いでんじゃねえっ!!」
「だって、だって悟浄どうすんだよコレェ!?」
「知るか!!聞くな!!俺に聞くな!!」
「いやぁ…あはは。困りましたねえ」
『いや笑ってる場合じゃないよね絶対。』

木枯らし吹き付ける冬真っただ中の寒空の下。
偶然にも休みが重なった暇人が5人、住宅街から車で30分ほどにある大きな自然公園にあるただっぴろい広場で立ち尽くすこと数10分。
バッド片手に顔面蒼白の悟空とグローブ片手に立ち尽くす悟浄。

ヤバいと思った時には時すでに遅し。
悟浄が投げた渾身の一球、目がガチな悟空が打ち返した鋭い打球
適当な位置で守備についていた私と八戒

そして。


「…」
「とうとう死んだか生臭坊主」
『笑えないからヤメテ悟浄。この歳で犯罪者とかお先真っ暗すぎてイヤだわっ!!』
「いっそのこと生き埋めにでもしてみます?」
『八戒ちょっと黙ってて』
「どどどどどどーしよう友香姉ぇ!!俺三蔵殺しちゃった!!」
『死んでない死んでないからねまだ!!』

その凄まじい打球が飛んだ先。
運悪く木陰で至極めんどくさそうに新聞広げて寛いでいたインドア坊主
どこぞのアニメだとツッコミたくなる程に、綺麗に正面かつ額のド真ん中で受け止めた三蔵が、実にイイ音を響かせながらブッ倒れたのが今のこの現状の原因で。

悟空の叫び声と同時にかけつければ、女も妬くような綺麗な寝顔が出迎えてくれた



そして、冒頭に戻る。



「どーすンだよコレ」
『一応脈はあるけど…軽い脳震盪にしろなんにしろ、下手に動かすのは危険だよね』
「綺麗にクリーンヒットしましたからねぇ。新聞を読んでいただけあって、気づく暇もなかったでしょうし」
「起きた早々盛大なハリセンが飛んできそーだよな。今のうちに逃げとくか」
『いやいやいや、それ人としてどうなの!?』
「救急車でもよんどきゃイイんじゃね?」
『そこで今にも泣きだしそうな悟空の為にも真面目に考えて。じゃなきゃむこう一カ月口きいてやんないから』
「…」
「あはははは。相変わらず、友香には頭が上がらないんですね悟浄は」
「うっせーぞソコ!」
「…さて。真面目に答えを出すのであれば、救急車を呼んで病院に運ぶのが良いのでしょうけど」
『ええと救急車って110番だっけ119番だっけどっちだっけ?!117!?』
「消防車呼び寄せてどーすンだよ。水死体にでもするつもりかっての」
『死亡推定時刻を誤魔化さなくちゃだからほら消防車てきなノリ!?』
「明日の天気は家に帰ったらニュースで確認できますよ」
『雪降ったら凍死になるかなっ!?』
「友香、お前冷静なフリして実はテンパってんだろ」
『悟空を人殺しになんてさせない!』
「まだ死んでねーよ」
『さんぞーーーっ!!』

もうこのさいハリセンでもなんでもいい。
顔面蒼白で立ち尽くす悟空のためにも、なんとしても生き返って貰わなきゃいけないんだから。
悟空を泣かせたりしたら三蔵の苦手な猫がわんさかいる猫カフェにぶち込む勢いで。ほらほらたかが数百キロの打球がモロ額にブチ当たっただけじゃんそうだよ。血だって出てないしめっちゃ赤くなって腫れてるだけだし大丈夫だよねうん!!

ぺちぺちとその白い頬を叩きながらしゃがみこめば、様々な色を宿した瞳が向けられて。
三蔵、と何度か名を呼び続けていれば微かに身じろいだ。
ほら大丈夫ちゃんと生きてる問題ないっ

「なーんだ。生きてんじゃねえか」
「良かったですねぇ。危うく僕ら、全員牢獄行きになるところでしたよ」
「ハッ!こんなコトで捕まるくらいなら、一生逃亡犯になった方がマシだぜ」
「そうなったら全員で逃亡劇ですかね?」
「おーよ。目指すは楽園!ってな」
「あはは、なんですかそれ」
『二人とも呑気過ぎかなっ!?そして悟空お願いなんか喋って!』
「だ…だって、俺のせいで三蔵が…」
『大丈夫三蔵は殺しても死なないから』
「お前の扱い方が一番雑なんじゃね?」
「友香は悟空第一主義者ですからね。仕方ありませんよ」
「ソコは意義ありだな」
「痴話喧嘩は自宅でどうぞ。」

うっすらと覗く紫暗の双眸が、私たちを映し出す

不安げに揺らぐ金晴眼

気だるそうに見下ろす深紅

大丈夫ですかと苦笑した緑


そして

レンズ越しに見下ろした、漆。




いつもの剣呑さはどこに置いてきたと思うほどぼんやりとした目で、三蔵の視線が一通り一周する。

ハリセンやら怒号やらが飛んでくるかと思っていた分、その僅かな"間"は私たちを訝しめるには充分で

まるで示し合わせたかのように全員の眉間に皺が寄っていた。

なんだ。どうしたっていうんだ。てっきりハリセンと怒号の嵐かと思ったのに


「ええ、と…三蔵…?マジでゴメンッ」
「…」
「オイオイなんだァ?頭でも打って性格変わったか」
『気持ち悪いとかない?消防車呼ぶ?』
「友香、それを言うなら救急車ですよ」
『いや、怒りの余り燃え上がるんじゃないかと』
「成程。鎮静化ですか」
『うん…って、ほんと三蔵大丈夫?一言も喋らないとか逆に不気味で仕方ないからお願いなんか喋って』


予想外もいいとこな状況に眉根を寄せて見下ろせば、状態を起こした三蔵が痛むであろう頭を片手で抑えながら視線を向けて来る。

けれどもこの後。

私たちは斜め上かつ先ほどの猛打球よりも遥かにハイレベルな反撃を喰らう事になった


「あの…僕は、いったい…?」
「「!?」」
「ブッフォッ」
『…、…!?…っ…!?!?』


一言、たったその一言だけで。
私たちを色んな意味で彼の世いきに出来るのって三蔵だけなんじゃないかなって。早々に現実逃避を開始した脳内の片隅でぼんやりと考える

絶句する悟空と口元引き攣らせた八戒
盛大に噴き出して笑い死にしそうな悟浄の隣で、目を白黒させる私
なんだちょっと待て思考が追いつかない。こんなハプニング人生でも早々経験することじゃないよね!?
困り果てた顔のまま、頼りなさげな顔のまま。
あの…なんて言葉を繋げる三蔵だけどごめんちょっとタイム勘弁してホント。


「…さんぞーがぼくっていった…」
「これは…ある意味世界兵器並の威力ですね…」
「ちょ、マジかよあの生臭坊主が僕とか似合わねェーーっ」
『ごじょうわらいすぎ…かこきゅうでしぬよ…』
「ヒーッ腹痛ェ!」
「あ、あの…? あなた達はいったい…」
「ああ、すみません。僕らもつい驚いてしまって。ええとですね、あなたは三蔵という人物なのですが、自分の事は理解できますか?」
「はい。ですがなぜ僕がここにいるのかと、あなた方がどなたなのかまでは…」
「そうでしたか。状況をお伝えしますと、僕らはあなたの友人です。先ほどあなたはこの木の上で新聞を読んでいたのですが、足を滑らせてしまったのでしょうね。あろうことかあの高さから落ちてしまいまして…」
「!、そうだったんですか!?」
「はい。打ち所が悪かったのか、一時的に記憶が混濁しているのでしょう」
「なるほど…そんなことが…」


怖いなにこの状況。三蔵が一時的に記憶を失ってあろうことか僕とか言ってんのも恐怖だけど、サラリと記憶の改ざんを試みる八戒もなんか怖い。八戒って絶対敵に回したくないよね。そうなったら一番悲惨そうだ。隣を見上げれば先ほどよりも更に泣きそうな顔の悟空が三蔵を見つめていて
笑い続ける悟浄はもうそのまま顎でも外れたらいいと思うんだ


「…三蔵が、記憶喪失…」
『大丈夫だよ。こういうのって一時的なものが多いし、本人も何もかも忘れている訳ではなさそうだから』
「で、でも友香姉ぇ…もしこのまま記憶が戻らなかったりしたら…俺…」
『そうなったら同じレベルの衝撃でも与えてみる?』
「え?」
『よくドラマや漫画でもあるじゃん。それで記憶が戻るケース』
「そう、だけど…大丈夫かな…」


心配になる気持ちも分からなくもない。
打ち所が悪ければ確実にあの世逝き確定事項だからね。こんなことになるなら三蔵も大人しく野球に参加しておけばよかったんだ。そうすればこんな事にもならずに済んだし、何より悟空にこんなカオをさせずに済んだのだから
今度機会があった時は脅してでも参加させるかなってぼんやり考えていれば、粗方の説明が終わったのか。
二色の双眸がゆっくりとこちらに向けられた


「お待たせしました。どうやら抜け落ちている記憶は、ここ3日程の記憶みたいですよ」
『でも私たちの事は覚えてないんでしょ?』
「ええ。なので全員腐れ縁だと言っておきました」
「ま、間違っちゃいねェからな」
「おや。笑い死にしてなかったんですか」
「勝手に殺すなっつうの。」
「でもさ…これからどうすんの?病院行く?」
「それは本人が必要ないと」
『え、いいの?』
「はい。特別大きく記憶を失っている訳でもありませんし、みなさんの事を忘れてしまっているのは申し訳ないのですが…」
『いや…うん、まぁ…』
「それに今回の事は完全に僕の不注意から招いた結果です。」
『………そう。』


もう何も言うまい。うん。
とりあえずこのままでいるわけにもいかないから。各自話し合いの結果、このまま三蔵の住む寺まで運ぶのはとてつもなく問題があるので却下。
こうも様変わりした三蔵を見れば、ほかの人たちが軽くパニックになるの何て目に見えてる
恐怖で慄くんじゃないかな。
じゃあどうすんだよと悟浄の言葉に、一時的な避難場所として私たちの家を提案する
事故とはいえ病院に連れて行く選択肢をとらないのであれば、やはり事の成り行きくらいは責任とらなくちゃ
八戒や悟空も今夜は泊まればいいし


「それが一番妥当でしょうね」
「俺も友香姉ぇの家泊まる!」
『うん。一晩全員で様子見よう。コレ以上悪化するようなら流石に放置はできないからね』
「まァた俺らんトコかよ。なんか毎週泊まりに来てね?コイツら」
『賑やかでいいじゃん。ほらほら、三蔵もとりあえず行こう』
「お邪魔してしまってもいいんですか…?」
『それ今さらだよ。週末になると毎回うちで飲み会やってるんだから。それに、早いとこ記憶取り戻してくれないと、泣き出しそうな子いるし』
「…?」
『ま、こっちにも責任あるしねぇ。出来ることならハリセンは勘弁してもらいたいところだけど』
「は、ハリセンですか…?」
『いったいんだよねー、三蔵の秘密兵器』
「もう俺ハリセンでもなんでもいいや。三蔵の記憶が戻るならっ」
「張り合いねえのもつまんねェからな。第一、僕とか似合わねえ」
「あはは。それもそうですね。やっぱり三蔵は、あの三蔵じゃなくては」
「記憶をなくす前の僕って、どんな性格なんですか?」
「「天上天下唯我独尊」」
「え…」
「生意気だし俺様だし我儘だし、すーぐにハリセンで殴ってくる短気坊主」
「すーぐ怒るし都合の悪いコトは聞き流すし、あと三蔵のハリセンめっちゃ痛い!」
「…、」
『ちょっと二人とも、本人すんごい困惑してるんだけど』
「別に嘘は言ってねーぞ」
『そうなんだけどさ』
「…そんな最悪な性格なのに、なんでこんなにも優しそうな方々と一緒に居られたんですか…」
「それはほら、先ほども伝えたように、僕たち腐れ縁なんですよ。お互いにね」
「…」


なんで、と。
当の本人に尋ねられて少しだけ考えてみる。なんだかとても申し訳なさそうな顔で黙ってしまった三蔵だけど、忘れちゃいけない。見た目は"あの"三蔵だ。常に寄せられている仏頂面の代名詞とも言える眉間の皺も、紫暗の瞳に潜む剣呑さも今はない
けれども見た目も声も私たちが知る三蔵そのもののままだから、中身が違うというだけでこうもヘンな気分になるのは自業自得というヤツなのか
言葉遣いもさることながら、その醸し出されるオーラにも刺々しさは微塵も感じられない
第一、三蔵の一人称が僕ってなんだ。怖い。明日は嵐か吹雪かな


「話を聞く限りでは、なんかすごい性格悪そうに聞こえるんですけど」
『あはは。それが三蔵らしさでもあるからね、いいんじゃない?』
「そうなんですか…?」
「もとからこんだけ大人しい性格だったら苦労しねえンだけどな」
「おや。それを言うなら悟浄、あなただって似たようなものですよ。安心してください」
「オイそりゃどーいうイミだよ」
「あーっ、サッカーやってる!いいな俺も混ざりたいっ」
『悟空ってスポーツなんでもできるよねぇ、羨ましい』

試合かなにかなのだろう。キラキラと輝く悟空の視線の先には、競い合うようにして一つのボールを奪い合う何人かの青年集団
未だに球技のルールって良くわからないものばかりだ
何となく理解できるのなんて野球くらいなものじゃないかな
だってあれって打って投げてとればいいだけでしょ確か

出口へと続く細い道を抜けていく


そう。もし、この広場が

きちんと事故防止のためにフェンスが設けられていたら。


「ああっ!!」
「ばっか!!何処向けて蹴ってんだテメェは!!」


そして、飛んできたボールが正面側からだったら、とか。

イフの世界を想像してみたところで、結果は何一つとして変わることはないのだけれど


「友香姉ぇ危ないっ」


そう。そして仮にこういう展開に陥ったとしても。

並外れた反射神経を持つ彼らからすれば、特別問題視する出来事でもないのだろう

猛スピードでぶっ飛んできた大きなモノクロのボール

それが直撃するよりも一瞬早く、横から伸びてきた腕に抱き寄せられたこの身がその軌道から外れていた


バシンッ…と。


なんとも嫌な音を響かせながら。



「「…」」
『…とりあえず、うん、悟浄ありがとう』
「おー。ケガねえか?」
『私は大丈夫。…私は』
「よし。」
「え…ちょ…いやいやいやっ、よしじゃねえってコレ!!!」
「なんといいますか…典型的な王道パターンなんじゃないですか?」
「関心してる場合でもねえって八戒!!友香姉ぇも呆けてないでなんとかして!!」
『いや…だって、なんかもうコレって…』


コロコロと足元に転がってきたサッカーボール。

そしてそれがこれまた見事に顔面にクリーンヒットしたであろう三蔵が、ばったりと倒れ伏した細い道のド真ん中

某漫画のようにくっきりと跡まで残っているあたり、八戒の言葉に頷くことしか出来なくて。

現実世界でこんな王道パターンを突き進む人がいるとは思わなかったよ


「ああのっ、大丈夫ですか!?」
「ひえっ、人が倒れてる!!」
「ああ大丈夫ですよ。いつもなら軽く躱せるんですけどね、ちょうど記憶喪失中なので無理だったんでしょう」
「「…!?」」
「オイ八戒。ヘタにビビらせてやんなよ」
「おやすみません。ええと、だから大丈夫ですよ。ちょうどショック療法になるかもしれませんしね」
『…なんかもうここまで来ると、なるようになれ的な気分になってくる自分が一番不思議』
「所詮俺らなんかそんなモンだってこったろ」
「さんぞーっ、三蔵大丈夫!?さんぞーーーっ!!」


ガクガクと気を失う三蔵の体をゆする悟空
その傍らに膝をついて見下ろせば、八戒と悟浄が焦って駆け寄ってきた監督らしき人に事情を説明している。
転がっていたボールを彼へと投げ渡しながらも視線は三蔵へ。
次に目が覚めたら、今度は自分自身のことも理解できない状態とかだったらどうするか。そうなったら流石にもう病院に連れて行くしかないよなあなんて
スマホ片手に握りしめながら私もその名を呼んでみる


『さんぞー、王道パターンまっしぐらに突き進んでないで、たまには方向転換とかしようよ』
「友香姉ぇ呑気!」
『あ、ほら三蔵気が付いた!』


出来ればそんな事態にはなってほしくないんだけどね。ほんと。

見えてきた紫暗の瞳に、私と悟空が映り込んだ―――…刹那


『!』


その僅かな光の宿り加減に、私は一瞬でこの身を大きくのけ反らしたんだ。

うん、だってさ。


「いってぇええっ」
「「!」」
「こんのバカ猿ッ!!人の顔面に殺人球ブッ飛ばしてんじゃねェよ!!」
「お。」
「おや。親玉の復活ですか」
『それ、なんか悪の組織みたい』
「間違ってます?」
『あはは、いんや』
「おっ、俺だけじゃねーって!!悟浄が投げたボール打ち返しただけだもん!!」
「あァ!?この猿っ、俺まで巻き込んでんじゃねーよ!!」
「テメェもだこの腐れエロ河童ッ!!」
「ッテェなこの似非坊主!!当たり前みてえに人の頭ブッ叩いてんじゃねえよっ」
「うるせえ!!ハリセンで済ましてやったんだからありがたいと思え」
「あンだとコラ。そもそもっ、呑気にジジイみてえに新聞広げてっからああなったんだろうが!」


ギャアギャアギャア。

異様な静寂を保っていられたのは、どうやらほんの数十分間だけだったようで

一瞬でもとのように喧しくなった彼らを眺めながら腰を上げる

けれどもおかしいな。

私が悟空の隣にしゃがみこんだ時には、確かにその手にはハリセンはなかった気がしたんだけど

あの一瞬でいったいどこから取り出したんだ、あの秘密兵器

大変気になるところである。



「ま、何はともあれ。コレで一件落着ってところでしょうか」
『まさか記憶喪失ネタが現実に起きるなんて、思わなかったけどねー』
「人間が持つ記憶なんて結構曖昧で脆いモノなんですよ、きっと」
『言えてる。明日は我が身かなぁ』
「友香が記憶喪失にでもなったら、僕ら全員再起不能になるのでやめてくださいね」
『え、それって普通逆じゃない?』
「忘れられる側の方がダメージ大きいんですよ」
『……そうかもしれない、ね』


共に過ごしてきた、あの日からの記憶が、想いが、関係性が。

一瞬で無かったことにされてしまうのは…


確かに。


ソレを持ち続けて生きることの方が、しんどい事なのかもしれない




『…忘れたくない記憶ばかりなんだけどなあ』




視線の先で大喧嘩にまで発展している深紅と紫を見つめながら、2人でそっと笑ったんだ。
















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