最遊記小説 | ナノ



最遊記版深夜の真剣お絵描き60分一本勝負

お題:白衣

@sakura_rikka21:六花






「はっかーい!俺に用ってなに?」
「ああ、ちょうどいい所に。ちょっと頼みたいことがあるんですよ」
「八戒が俺に頼み事ってめっずらしーよな」
「今回は悟空とセットの方がいいかと思いまして」
「セット?」

辿り着いた部屋で楽しげに笑う様子に珍しいなあと再度内心で呟く。机上には聴診器やら注射やら包帯やらが綺麗に並べられていて、誰か怪我でもしたっけとココ最近の旅路を思い出してみたりして

「これを着て欲しいんです」
「コレって…白衣じゃん?どうしたのこんなの」
「今回の依頼が薬品の宣伝でして。そこで僕らが医者役になり、商品の紹介をするというものなんです」
「ええっ!?ちょ、そんな大事な役なら俺じゃなくて三蔵とかの方が絶対向いてるって!」
「三蔵のあの仏頂面かつ強面で出来ると思います?」
「…。じゃ、じゃあ悟浄とか!」
「あの人はスタッフの女性にちょっかい出すしか脳がないので、不向きでしょう」
「…。」

にっこりと言葉選ばず言い切った八戒を見上げて悟る。あの2人はまたこの温厚な八戒の怒りを買うようなコトでもしたのかと。空き缶を灰皿にするなとかタバコの吸いすぎだとか、口酸っぱく言われても一向に直んないからなぁ…
八戒に家出されたら割と本気でどうしようと頭を抱えたくなる

「それに今回のはですね、子供用の医薬品なんですよ。だからイメージは小児科の先生です」
「ふーん?」
「悟空は子供によく好かれますし、イメージ的にはぴったりかなと思ったんですが…嫌でしたか?」
「ぜんっぜん!いいよ、八戒からの頼み事って滅多にねえし。俺やるよっ」
「ありがとうございます。保父さん的な立場ということで、僕も一緒に参加しますから」
「オッケー!んで?とりあえずコレ羽織ればいいの?」
「はい。マントは一応外しておきましょうか…あとは、首からこの聴診器をかけて…と」
「へえ…なんか医者っぽい」
「普段の僕らには縁のない服装ですよねぇ」

たまにこうして、八戒はどっからか謎の依頼を引き受けてくることがまあそれなりにある。一番最近だと、なんだっけ
皆でスーツ着て廃墟のビルを歩いたり、白シャツ着て草原で寝転んだりとか。あの時は紅孩児も呼ばれてたっけ
三蔵も悟浄も最初はめんどくさいとか言いながら、やりだしたらいつもめっちゃノリノリ何だよな。
割とあの2人って単純だよなあとたまに俺でも思ったりする

けど、こうした謎の依頼を引き受けた時の八戒はすげえ楽しそうだし、嬉しそうなんだよな。悟浄曰くギャラがすごいらしい。あ、だからいつも以上に美味い飯食わせてくれるんか

「ってことは今回も美味い飯食い放題?」
「悟空?」
「あっいや、なんでもねぇっ!独り言っ」
「あはは。随分と大きな独り言ですねぇ?大丈夫ですよ、終わったらちゃんと御褒美は用意してありますから」
「!、マジで!?」
「この近くに新鮮な魚介類を使った専門店があるそうなんです。あの2人には内緒で、食べに行ってみましょう」
「やった!海鮮!エビーッ!!カニーッ!!」
「ホタテやエンガワ、ウニも捨て難いですよねぇ」

白衣を羽織った八戒が俺と同じように聴診器を首からかける。
うーん。さすが八戒
なんつーか…違和感がない
足組んで椅子とかに座ってたら完全にどっかの名医だと思う
難しいコトとかいっぱい言いそうなイメージがある

「? 変ですか?」
「いやあ…うん。すっげえ似合ってる」
「ありがとうございます」
「たぶん違和感が仕事してないんだと思う」
「はい?」
「八戒が医者かぁ…うん。納得」
「そこまで言われると、なんだか照れますね」

用意された椅子に座って、スタッフって人が呼びに来てくれるのを待つ。撮影時間はそんなに長くないって言ってたけど…俺、セリフとか覚えられんのかな
記憶力とかかなり自信ないんだけど。そんでもって三蔵と悟浄はこのこと知ってんのかな

ケンカとかしてなきゃいいなぁ

「では悟空。今回の流れを説明しておきますね」
「お、おう!」
「大丈夫ですよ、そんなに緊張しなくても。長いセリフ何かは僕がやりますから」
「うー…失敗したらどーしよ」
「悟空は土壇場に強いじゃないですか。多少のアドリブは許容範囲内ですよ」

ま。でも八戒なんだかめっちゃ楽しそうだし
たまにはこーやって2人で話すのも新鮮
いつも4人でいんのが当たり前だからなぁ
仕方ないから、あの2人にもなんか土産でも持って帰ってやろうかな
たぶんどこ行ってたんだって怒られるだろうから



変わらない日常の中に、少しだけいつもとは違う何かを混ぜながら
この白衣のように真っ白にはなれなくても、
それぞれの色を纏って旅を続ける。















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