「…おら。手当て終了!」
「!いってぇ!…もう少し丁寧にやってくれよ〜…」
「手当てしてもらっただけ有り難いと思え」
風呂からあがってきた銀時をもう一度ソファに座らせて、その隣に土方も座り傷の手当てをする。
顔やら腕やら…とにかく体中にガーゼやら絆創膏やらを貼り、包帯を巻き。ひとまずの応急処置をする。
「ったく、なんでこんな傷だらけになってんだよ」
救急箱をしまいながら、土方は銀時のほうに顔を向ける。
銀時は手当てのために半脱ぎになっていた甚平をもう一度着て、その上に紺のはんてんを羽織りながら、土方の質問ににへらと答えた。
「俺は、愛の勝利者だよ、土方くん」
「は、あ?」
銀時の言動はさっきから意味がわからない。土方は首を傾げるしかなかった。
「これからも俺は勝利者であり続けるから!」
「…」
「絶対誰にも負けないし、負ける気もないし!」
「…」
「だから、だから、……土方!!」
「!わ!?」
銀時の言ってることが全然わからず、もはやぼんやりと銀時を横で眺めていた土方だったが。天井を見つめて力強く熱弁していた銀時が、ぐるりと90度向きを変えてまっすぐ土方のほうを見てきた。
それだけでもびっくりなのに、銀時は自分の両手で土方の両手をぎゅっと握り締めてきたのだ。
「…よ、ろずや?」
いきなりのことに頭がついていかない土方。困ったように揺れる藍色の瞳に映るのは、銀時のこれ以上ない真剣な顔。よくわからないが、土方はなんだか落ち着かない気持ちになってきた。
銀時は銀時で、真紅の煌く瞳で土方の可愛く困った顔を見つめつつ。どくどくする胸を落ち着かせるように息を深く吸い込んでから、ゆっくりと言葉を紡ぎだす。
「土方、…俺、…」
「土方、…俺、俺と……お「ただいまアル!!」
「あ、チャイナたち帰ってきた」
がっくり。。。
土方の手を握ったまま、まるで上からタライでも落っこちてきたかのごとく肩を落とす銀時。
それにまた不思議そうな顔をして、土方はそっと手を外して銀時のまだ少し濡れている頭を撫でる。
「傷、痛むか?」
土方は湯冷めするのを心配したのだろう。銀時の首にかかっていたタオルをとり、銀時の頭を拭き始めた。
気持ちいい、と銀時は目を細めて。そしてそっと土方の腰に手を回してほんの少しだけ密着する。
「んー、平気ー」
今はこれで満足にしとこう…と、溜め息を吐く銀時だった。
そんな応接室に、冷蔵庫に買ってきたものを入れ終えた神楽と新八が入ってきて。
神楽は「銀ちゃんばっかりずるい!!」と自分も風呂後に髪を拭いてほしいと土方に強請り。
新八は心の中で(…アレ?これは邪魔したか…?アレ?地雷!?)と生来の察知能力でピーンと悟り。
土方は一通り銀時の頭を拭いたあと、「夕食にしような」とふんわり笑い。
銀時はそれに見惚れてにへら〜と笑いながら、「もう一回」と土方に抱きついて。
まぁ、そんなこんなで。
土方の非番はゆっくりまったりと万事屋にて過ぎてゆくのだった……。
しかし。
…ゆっくりしすぎて沖田の言った“門限”を過ぎてしまい。
万事屋がぐるりとパトカーで包囲されてしまった。
「万事屋のみなさ〜〜ん。あんたら完全に包囲されてやすぜ。無駄な抵抗はやめて、俺らの姫様を返しなせェ〜〜〜」
「夜中に拡声器で変なこと言うんじゃねぇ!!誤解されるだろうが、このサド王子!!」
「……す・まん、万事屋…。あいつらには俺があとできつく…。……つーか、なんであいつらあんなにボロボロ…?」
「お前らの姫様じゃなくて、俺のお嫁さんだーーーーっっ!!!」
「…………誰が?」
「真選組の姫君拉致&軟禁容疑で現行犯逮捕〜。突撃〜〜〜」「「「うおーーーー!!!!」」」
「奪えるもんなら奪ってみやがれ!!昼間みてぇに返り討ちにしてやるぜ!!!」
「!!?お前らふざけすぎだ!!帰るからそこで待ってろ!!」
姫様…いや嫁…もとい、鬼の副長の怒りの一括により終焉。
「………男って、バカネ。トシちゃんは私のヨ」
「……神楽ちゃん……」
END
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