戻ってきた土方くんは、いそいそと帰り支度を始めた。

「わりぃ。急な仕事が入った。総悟、帰るぞ」

「へィ」



沖田くんは先に店を出て、土方くんは俺の横に立って数枚の札を渡してきた。



「今日はいい店に連れてきてくれて、サンキュな。ここはおごる」

「あー、うん…」

「?」



はっきりしない俺の返事に、不思議そうに土方くんが首を傾げる。が、すぐにはっとしたように顔を変えて俺に聞いてくる。



「…足りねぇ?」

…、まぁ違うけど、あってるというか…。




「…そうだね」

「?」

「土方くんが、足りない」








隊服のスカーフを掴んで、ぐいっと俺のほうに土方くんの顔を近付けて。
かさかさになってる土方くんの薄い唇を。
ぺろ、って舐めた。



あ、ちょっとだけ、血の味。







「ん。満足」

ゴチソウサマ。










固まってる土方くんを店内に置いて、会計を済ませて、俺は外に出る。
と、こちらを呆れた顔して見ている沖田くん。




「…どっちがガキですかィ」

「俺、心はいつまでも中2の夏なんで」

「……あとで消毒してやらねぇと…」

「ちょ…っ病原菌扱いですか、このヤロー!?」







ま、今日のところは。
この辺でお開き、かな。
早く逃げないと真っ赤な顔で怒るあの子に斬られかねない。




「勝った、なんて、思わないでくだせェよ」

「まさか。思うわけないっしょ」



寧ろ、これからでしょ?









俺のとっても気になってる子は。
どうやら結構モテルみたい。…あー、知ってたけど、改めて現実を直視?みたいな?

当面の敵は、あのサディスティック星の王子かな。(絶対まだまだいそうだけど…)






諦める気はない。毛頭ない。
絶対、手に入れてやる!









「万事屋!!この、変態マダオヤローーーっっ!!!」



土方くんの怒号を背中に受けながら。
俺は、『ロマ●ティックが止ま○ない』を歌いながら走り出した。









END





<おまけ>


「…土方さん」

「なんだ…」

「あとで消毒しやしょうね」

「…?別に俺、怪我してねぇぞ?」

「目に見えない怪我をしてるんでさァ。俺にはわかるんです」

「???」



このあと、沖田にも唇を舐められちゃう土方なのでした…。



「総悟ーーーっっ!!!」






END


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