と、思ったら。





くい。


沖田くんがより強く土方くんの腕を引く。
土方くんは促されるように沖田くんのほうを見て、俺も流れで彼のほうを覗いてみた。





ぎょっとした。







そこにいたのは。
いつものにくったらしいガキじゃなくて。
今にも泣きそうな男の子。







「…俺をおいて、2人で行っちまうんですかィ…?」

「……総悟?」

「土方さん…置いてかねぇでくだせぇよ…」

「…あ……」





え?
え、ええ、え?
誰ですか?こいつは…???






「…なぁ、万事屋…」

あまりの出来事に固まってた俺は、土方くんがぽつりと出したひとことではっと我に返る。慌てて土方くんの声に反応を返す。

「な、何?土方くん」

その後、少し言いづらそうに土方くんが言った言葉を、俺は数十秒間理解できなかった―――。










「…総悟も、連れてっていいか……?」






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「…総一郎くん」

「総悟でさァ。なんですかィ?」

「君はさぁ、普段ずっと土方くんと一緒なんだからさぁ…。ちょっとくらい俺に独り占めさせてくれたってバチは当たらないと思うよ?」

「そんな、勿体無い」





結局。
俺の、土方くんと2人っきりでラブラブ休憩(えっちぃ意味じゃないよ?…ほんとはそうなりたいって思うけど…)計画はおじゃん。
お目付け役のごとく沖田くんについてこられちゃった。…なに、この展開?



向かいに座る土方くんは自分の携帯が鳴ったってんで今外。この店の手作りのマヨネーズは気に入ったらしく、野菜スティックにべとべとつけて食べてた。しまいにはぺろぺろ舐めてた(可愛いやらエロいやら…!)。今度は昼時に寄ってみる、とにっこり笑ってた。



…あの子が喜んでくれて、それはそれで嬉しいんだけど…。






「旦那ァ。…あの人はやめてくだせェ」

「は?なんの話?」

俺の隣に座ってアイスカフェオレをすすっている沖田くんが、真剣な顔つきで呟いた。俺は3杯目の抹茶パフェを食べながら、一応とぼけてみせるけど。





「俺は、あの人が好きなんでさァ」

「……」

「あの人の隣にはいつも俺がいたいんでィ」

「…ガキだな」

「まだ、ガキですぜ?だから―――まだあの人と一緒にいれるんでさァ」





そう、自嘲気味に笑う彼は、俺とはまた違う悩みを抱えていそうで。
俺はそれ以上何も言えなくなっちまった。





「そんな話、俺にしてどうするんだよ。不利になるだけじゃねぇの?」

「そんなことありやせんぜ?旦那から同情を得られれば手加減してくれそうですし」

「はっ。お前相手に手加減なんざするか」

「あれ?そいつァ想定外だ。案外薄情ですねィ」

「当たり前だろ」



抹茶パフェを食べつくし、カツン、とグラスをテーブルに置く。
そして、沖田くんのほうを見て、はっきりと言う。





「だって、俺、全然余裕ねぇもんよ」

「奇遇ですねィ…俺もまったくもって余裕なんざありやせんぜ」







土方くんのことがものすごく好きで、すっごく欲しいから。
余裕なんて、お互い、まったくないんだ…。








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