「ほんと、ほんと。コクがあって、すっごい濃厚な手作りマヨネーズ。あれで“土方スペシャル”とか食べたら土方くんのほっぺた落ちちゃうんじゃない?」

そんなこと言いながらさりげなーく土方くんの左頬を、やんわり掴んでみる。
うわ〜、マシュマロみたいにやわらか〜い。しっとりとした手触りがなんかもうたまんねぇ〜。



「気安く触るなよ」

むっとした土方くんが俺の手をぺちって払いのける。む。

「え〜。そんな態度とっちゃっていいのぉ〜?お店の場所、教えてあげないよ?」

「…この……っ」




あ〜、俺ってほんと意地悪。だって、土方くんの反応が可愛すぎるからいけないんだよ。
なんか苛めてみたくなっちゃうんだもん。



「どーすんの?土方くん?行く?」

「……今?」

「今じゃないと一緒に行ったげなーーい」

「…………」



あ!その悔しそうな顔!すっごい好き。可愛いなぁ。
で、今仕事とマヨネーズを天秤にかけてるわけだ。難しい顔してるよ、ぷぷぷ…。



だって、俺が、土方くんとずっといたいんだもん〜。





「行く?」

「……ちょ、ちょっとだけ…。休憩しようと思ってたし…」



かーわーいーー!顔真っ赤だし、しどろもどろで嘘ってばればれだし!
なんでそんなに可愛いのかなぁ。銀さんはマヨネーズじゃなくて土方くんが食べたいよっ!



「じゃ、手つないで行こうねー」

「な!なんでだよっ!?」

「じゃないと一緒に行ってあげないー」

「……くそ…」



悪態をつきつつ、それでもマヨネーズの魅力に負けて、土方くんの手が俺の手に重なろうとした。






そのとき。









「あぁーっと、手が滑りやした」




ひゅんっ!







俺と土方くんの手があったところに刀の刃が振ってきた。
間一髪。俺たち2人は常任離れのその危機感知能力でもって、手断絶を免れる。



「…っ、てめぇ、総悟!!」

「……ちっ」

「ぜーったいわざとだろう!なんだその舌打ち!!」

「ちがいやす。手が滑ったんでさァ」

「嘘つけぇぇぇぇえええ!!!」






…このサド王子、いつの間に……。



沖田くんと土方くんのやり取りを見ながら、俺は機嫌が猛スピードで下降しているのを自覚する。
沖田くんが今いるポジションはさっきまで俺がいたポジションだ。




ずるいずるいずるい!
だって、沖田くんは屯所に帰れば土方くんとずっと一緒にいれるじゃねぇか!
それに比べて、俺は、……俺は…。





騒いでいる沖田くんと土方くんに苛々して、俺は少々乱暴に土方くんの腕をとった。
びっくりした土方くんが沖田くんと話すのをやめて、やっと俺のほうを向く。

「…万事屋…?」

不思議そうに首を傾げる土方くん。俺は彼ににっこり微笑んで。

「お店、行こう?」

と、ぐいっと土方くんの腕を引っ張った。



「え?ちょ…っ」

バランスを崩した土方くんが、俺にもたれかかって。ふわり、と香る煙草と土方自身の匂い。
わー、なんかいい匂い。シャンプーの匂いかなんかかな?
思わず抱きしめようとしたら、土方くんの身体が離れる。





見れば、そこには俺が掴んでるのとは逆の腕を掴む、にっくらしいサド王子が…。



その憎らしい沖田くんは、白々しく土方くんに質問する。

「お店って、どういうことですかィ?土方さん」

「そ、れは…」

「まさか、真選組副長ともあろうお方がサボろうとしてたんじゃ…」

「!?ま、まっさかー。ちょっと休憩…。っていうか、てめぇこそ1番隊隊長のくせに今の今までサボってたじゃねぇか!!」

「ちがいまさァ。俺はアレです。持病の“眠くて巡回なんかに行けない病”が発病して…」

「よーし、そこになおれ。永遠に眠らせてやる!!」



…。
なにこれ。俺、ひょっとしてハブられてる?





にやにやと楽しそうに土方くんをからかう沖田くんが、時折ぎろりと俺を睨みつける。
あー、邪魔ってか、邪魔ってか?
けっ、誰がお前の言いなりになるかってんだ!



「総一郎くん」

「…総悟でさァ。なんですかィ、旦那」

俺は土方くんの左腕、沖田くんは土方の右腕をがっちりホールドしたまま、2人の間でばちばち火花が散る。
土方くんだけがこの状況をよくわかってない。いつもは切れ長の目を真ん丸くして、きょとんと俺と沖田くんの顔を交互に見つめてる。可愛くて頬が緩みそうになるけど…今はダメ!(絶対沖田くんも我慢してるはず)



「土方くんはこれからちょっと休憩。俺と一緒に出かけるんだから」

「えー。土方さん、いつの間にそんなに旦那と仲良しこよしになっちゃったんですかィ?」

「!?別に、仲良くなんてなってねーよ!」

えー!?そんなに力いっぱい否定しなくてもよくね!?わー、がっくんちょ…。



「で、でも、こいつがマヨネーズうまい店知ってるっていうから…。仕方なく、だな…」

「…餌付けされた、ってわけですかィ…」

「な!ふざけんな!俺は猫とかじゃねぇぞ!!」

いや、立派に猫だと思うけど?餌やるときだけ近寄ってくる様なんて、野良猫ちっくじゃん。



「なー、はやく店に行こうぜー」

ぐいぐいと土方くんの腕を引っ張れば、土方くんが焦ったようにこちらを向いてくる。

「う、うん…」

まだマヨネーズ効果はあるみたい。よし!あとは邪魔者(もちろん沖田くん!)を始末するのみ…。








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