俺と君の、ずるい関係。
君は気づいてるし、俺も気づいてる。
なぁ。
そろそろ腹をくくらないか?
《繋がる、手と想いと…》
その日。
俺は相当呑んだ。呑んだくれた。
カモは長谷川さん。この間仕事紹介してやっただろ?と半ば脅して奢らせた。
その長谷川さんもいつの間にかいなくなって。店は閉店時間になったらしく。
「お客さ〜ん。そろそろ帰りな。お連れさんがお代置いてってくれたから」
「…うるせーよ、ハゲ」
「…ハゲでもなんでもいいから、さっさと帰ってくれ。店が閉められねぇよ」
「んん。ハゲよぉ、俺を帰らせたかったらなぁ……
……あいつを呼んでくれよ………」
俺は酔っぱらってはいたが、理性がグダグダになるまでではなかった。
でも、なんかその日は無性にあいつに会いたくて。
つい酔って融通がきかなくなってる振りをして、あいつの名前を出した。
無理だよなーとかわかってても、なんか自分の要望を口にしたくなったんだ。
さて。その会話からどのくらい経っただろうか?
カウンターに突っ伏して寝てた俺は、肩を揺さぶられて意識が浮上して。
「…おい」
かけられた声。
聞きたいと思ってた少しかすれたテノール。
俺はどきどきして顔を上げると。
漆黒の艶髪と色白の肌の君の姿。
いつも通り、かっちりと黒の隊服を着込んでる君の姿。
綺麗な綺麗な、君の姿があった。
絶対来ないと思ってたのに君が目の前に居て、俺がどんなに驚喜したか、君はわからないでしょ?
俺、思わず叫んだね。
「あ!多串くんだ!すげぇ、ほんとに来てくれた!」
俺がそう言うと、土方が瞳孔をかっ開いて。
「お前が俺を名指しして、しかも俺が来ないなら帰らねぇとかぬかしやががったからだろうがっっ!この酔っ払い野郎っっ!!」
と、怒鳴り散らしてきた。
情け容赦のない土方の蹴りが俺の腹部にクリーンヒットした。げほっ!
衝撃で俺はカウンターの椅子から転げ落ちる。
「げほげほ…っ、ちょ、なんてことするの!?銀さんの胃がパルス逆流だよっ!生命のスープが溢れでるところだよっ!!」
「耐えろ。店の迷惑になる」
「ひっどぉいっっ!それでも警察!?一般市民の平和を守るのが警察の仕事でしょ!?」
「その仕事中に邪魔してくれてんのはどこのどいつだーっ!!公務執行妨害で逮捕だ、ゴラァーっっ!!」
なおもげしげし蹴り付けてくる土方の攻撃をなんとか回避して、俺はふらふらと
立ち上がった。
「多串くんの横暴ー。暴力警官ー。ニコチン野郎ー。マヨラー。」
「…上等だ、こら。今すぐしょっぴいてやるっっ!!」
土方は瞳孔開き気味に俺を睨みつけて、刀を抜こうと束に手を置く。
その前に、俺は土方に向かって上体を倒した。
俺の身体は土方にもたれる形になる。
「っ!?万事屋!?」
焦ったような土方の声。俺の身体がいきなりもたれかかった所為で、土方の足がよたよたと覚束ない。
土方の手が俺の背中に回り、なんとか俺を支えようとしてくれてるのがわかった。
…そんな些細なことすらうれしかった。
うれしかった……けど。
沸き上がる気持ちは。
「…よろずや…?」
困惑したような土方の声。
「…帰るぞ、万事屋。いいな…?」
土方は俺の返事は待たず、俺の片腕を自分の肩にまわして腰のベルトをひっつかむ。
店のおやじに丁寧に礼を言ってから、ずるずると俺を引きずって歩き出した。
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