2人は丘を登りきった。見下ろせば、ずいぶん離れたところに街の明かりが見える。

「土方。空、見てよ」

銀時の言葉を聞き、土方は空に視線をやる。
思わず、あ、と声を上げた。



星の海だ。
明るい星はもとより、六等星まで見えてるんじゃないだろうか?星が、夜空一面に所狭しと散らばっていた。

繁華街に居てはこんなおびただしい数の星は見れない。
街灯などで星の光が霞んでしまうのだ。
土方は、幼い頃に田舎で毎日のように見た美しい星空を思い出し、懐かしい気持ちになる。



「な?『いいとこ』だろ?」

「…あぁ。『いいとこ』だな」



銀時が草の上に腰を下ろすのにならい、土方も腰を下ろす。
その際、手を放されたため思わず隣に目をやると。
銀時は懐に手をやり、懐中時計を取り出して時間を見ていた。


「なぁ。なんでそんなに時間気にしてんだよ?」

先程から『時間がない』だの、時計を見たりだの、銀時は明らかに時間を気にしている。
忙しいなら何故自分をこんな遠くまで連れてきたのだろうか?と、土方は疑問に思って尋ねたのだ。


「ん?だってよ、時間になったらすぐに言いたいじゃん」

「???」

「…よし。間に合ったな」


銀時は懐中時計をしまうと、土方を真っすぐ見つめてひとこと。




「誕生日、おめでとう」



土方ははっとして、自身の携帯を取り出して日付を確認する。


5月5日、午前0時2分。
確かに自分の誕生日だった。


銀時が続ける。

「何をやろうか考えてたら、ちょうどCMで『物より思い出』ってやっててよ。
だったら俺のお気に入りのスポットを教えてやろうと思って」

「…安上がりな贈りモンだな…」

「でも、いいだろ、ここ。土方にだけ特別にここに来てもいい権利をやるよ」

「ばぁか、何様だよ?ここの土地の管理者はてめぇじゃねぇだろ」



口ではそう言いながらも、土方の顔は綻んでいる。銀時のお気に入りの秘密の場所を教えてもらったことが嬉しいのだろう。

それを見つめる銀時も優しげだ。自分のお気に入りの場所を土方が気に入ってくれたことが嬉しいのだろう。







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