《『物より思い出』って、いい言葉だと思わない?》








その日も至って変わりなく、土方は仕事の真っ最中。


の、はずだったのだが。


土方は今、私宅に帰りがてら夜の町を散歩中だ。



と、いうのも。
今日の夕方、いつものように書類作成に追われていると。何やら慌てている近藤に、

「トシ!今から明日まで、非番ね!」

と言われて、書き欠けの書類まで奪われてしまったのだ。


理由を聞いても教えてくれない。ただ『非番をやる』の一点張り。


ついには、

「というか、休んでくださいっっ!!お願いしますぅぅぅ!!」

と、土下座までされてしまった。


土方は釈然としなかったが、ここまでされては休まないほうが申し訳ない。
隊服を着流しに着替え、私宅に帰ることにしたのだ。



最近1日オフなどなかったので、かえって良かったかもしれない。土方は、非番後増えているであろう書類のことはこの際忘れ、非番を満喫することにした。

この機会に、土方には会いたい人物がいたのだ。



さて、土方が屯所から私宅に帰る際に、必ず通る公園に差し掛かったときだ。


「お・お・ぐ・し・くん」

「……」

「嘘嘘っ!土方くんっ!無視して行かないで、お願い!」

「…はじめっからそう呼べばいいんだ」


公園の入り口のところに、原チャリにまたがった銀時がいた。
ちなみに、彼こそ土方が今一番会いたかった人物である。土方は内心嬉しかった。


銀時は土方を呼び止め、にこにこしながら話し掛けてきた。


「土方、明日非番だろ?」

「?なんで知ってんだよ?」

「銀さんは土方のことなら何でも知ってるんだよ〜」

「……近藤さんになんかしたのか?」

「公正な取引を。」


十中八九、お妙がらみだろう。土方はため息を吐きつつ、非番ができたのは有り難かったためいちゃもんはつけなかった。



「なぁ、今からドライブ行こ?」

そう聞きながらも、銀時は既に土方の頭にメットを被せている。

「…てめぇ、俺の返事聞く気ねぇだろ」

「いーじゃん。いいとこに連れてってやるって。つーか、急がねぇと。話はあとで聞くから」

「ちょ…、おいっ」


銀時は、不満そうな土方を原チャリの後ろに乗せて、急いで走りだした。


************




「ハイ、とぉちゃくぅ〜」

いつものやる気のない声を出し、銀時は原チャリを止める。
数十分くらい走っただろうか?繁華街からかなり離れたようだ。

土方が物珍しげに辺りを見回していると、原チャリを置いた銀時が土方の手を握ってきた。

「こっち」

銀時はそのまま土方の手を引き、小高い丘へと足早に登る。
土方は繋がれた手に気恥ずかしさを覚えたが、振りほどくことなく銀時に引かれるまま歩いた。







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