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「お〜〜〜!!おまえら〜〜〜ぁ!!やはり勇敢なる海の戦士がいねぇと心細くて戻ってきたんだろぉ〜〜〜!!!わかってる!みなまで言うなぁぁぁあああ!!!」

「…とりあえず泣きながら言うセリフじゃねぇな…」




メリー号に戻ってみれば、自称:勇敢なる海の戦士が泣きながらサンジとゾロに向かって走ってきて、冒頭のセリフを一息で叫んだ。穴という穴から水分が出ているのによくも1度もつっかえずに話したものだ、とサンジは感心する。
めそめそと泣くウソップにひとまず構ってやりつつ、ちらりと横目でゾロを窺う。ゾロもウソップのことは気になるのか、少しだけ眉を顰めるものの何も言わなかった。それどころか一人ですたすたラウンジの方へと向かって行ってしまう。言わずもがな、手に持っている荷物を置きに行ったのだろう。



(あ〜あ、…行っちまいやがった)

サンジは思わずため息をついた。果物屋からここまでいたたまれない空気の中、それでもゾロはどこかに行ってしまうことなくサンジとともにここまで来た。それはよかった。でも、せっかく薄らいだであろう警戒心は復活してしまったようで、繋いだ手も離れ二度と繋がることはなく。…仏頂面まで復活してしまった。買い物をしていた時のいつもより緩んでいたゾロの表情は年相応で、惚れた欲目かサンジの目には可愛く映っていたのに。



(…どうすっかな…)

どうやって今度はゾロの警戒心を解こうか。もう飯では釣れないだろうか。



サンジがそんなことを考えていると、ウソップが遠慮がちに「なぁ…」と声をかけてきた。

「ゾ、ゾロの奴、機嫌悪ィみたいだけど、お前らまた喧嘩したのか?」

「…ん〜、喧嘩じゃねぇんだが…」

「そう、なのか?じゃ、じゃあ、なんであんな怖い顔…」


顔を青くしながらひそひそとサンジに話しかけるウソップ。ウソップのようなイイ人を絵に描いたようなキャラでは、先ほどのゾロの顔は凶悪そのものに映ったようである。



「怒ってるっつうか、照れてるんだよなぁ…」

「え?」



だから、ぼそりと呟かれたサンジのセリフは信じられないもので。

「だ、誰が照れてんだよ…?」

「ん?マリモだけど?」

目元がちょっと赤かったろ?あいつ、照れるとすぐ顔に赤みさすからわかんだよ。



続いたサンジの言葉が、ウソップはますます信じられない。



「さ、サンジくん…。人間観察鋭いんだな……」

「レディとゾロに関しては、な」

「!?……あの…それって……、どぉいう…」



これ以上聞いていいものか、でも打ち寄せる好奇心の波に勝てず思わず口を開きかけたウソップに向かって。

「さてと、勇敢なる海の戦士の、ウソップくん?」

作り物めいた綺麗な笑顔のサンジががっしりとウソップの首に腕を回してきた。…サンジは笑顔なのに、なぜ背筋がぞっとするのか…。ウソップは怖々と「な・なんでしょうか…?」と尋ねた。




「船番は俺たちに任せて、ウソップくんは上陸したまえ。はいコレ、ナミさんから借りた宿賃」

さっさと行け、何も聞かず行け、行かないと…どうなるかわかってんだろうなクソ野郎。



陽気な気候の中凍てつくようなブリザードを感じ、幻聴まで聞こえ出したウソップは、目が笑っていない微笑みを浮かべるサンジを背に一目散で船を降り去った。先ほどのサンジとのやり取りもすべて記憶の彼方に葬り去る。さすが、麦わら海賊団で一番空気が読める男である。





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