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「…」
「…なんか用か、クソ剣豪」
「……」
「ちゃんと言わなきゃわかんねぇぞ?」
その夜。
ナミから仲良く拳骨をお見舞いされたサンジとゾロ。ゾロはそのまま不貞寝という名の二度寝をし、サンジは昼食の片付けをして。サンジはそれから夕食を作ったのだが、ゾロを今度は呼びに行かなかったのだ。
つまり、ゾロは2食食いっぱぐれたことになる。
おなかが空いて目覚めたゾロは、何も考えなしにキッチンへ入ったのだが。
顔にガーゼやら絆創膏やら貼ったサンジを見て、自分も似たような顔になってることを思い出して。更に昼間あったこともすっかり思い出して。ゾロは呆然と立ち尽くした。
サンジはゾロの目的がわかったのだろう。にやり、と人の悪い笑みを見せて、ゾロに話しかけた。
ゾロはムッとしながらも、それでも背に腹はかえられない。珍しくゾロは本当に腹ペコだった。
「……腹減った……」
「ふーん、だから?」
なるだけ簡潔に伝えた用件をサンジは一蹴する。ますます眉間に皺の寄るゾロをサンジはますます面白そうに見やる。
「…わかんだろうが……」
「え〜、俺、バカ眉らしいからわかんねぇなぁ」
バカ眉…昼間ゾロがサンジに向かって言った悪口だ。意外と根に持っているらしい。
ゾロはう〜と呻く。だんだん目元が赤く染まっていった。
「用ねぇなら、俺寝るわ。おやすみ〜」
「!」
ゾロを通り過ぎてドアに向かおうとするサンジのスーツの裾を、ゾロは思わずという感じできゅっと掴む。サンジはゾロを振り返らずに、「何だよ」と不機嫌そうに言った。
そんなサンジの耳に届く、蚊の鳴くようなゾロの声。
「……コック…の作った……飯が食いたい………。……作って…くれよ………」
本日、一発目の、爆弾。
サンジはまさかこんな嬉しいことを言われるなんて思わなくて、驚いてゾロのほうを振り向いた。
未だサンジのスーツをきゅうっと摘んでいるゾロの手。恥ずかしいのか顔は俯いているが耳が真っ赤。……サンジにはこのでかい図体の男が小動物に見えて。
不覚にも胸がキュンとしてしまった。
「…コック……?」
返事のないサンジに不安になったのだろう。ゾロの顔があがり、サンジを上目遣いで見つめる。駄目か?と小さく首を傾げるオプション付きだ。
「〜〜〜〜〜!!」
サンジはゾロをがばっと抱きしめる。驚いたのはゾロだ。
「!!??なっ、何っ!!??」
「あ〜〜〜、無理!もう無理!なんなの、お前???」
(昼間の腹いせと、日ごろ俺の飯を食わねぇから嫌がらせと思ってやったのに…!)