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(弐萬打記念フリー文で書かせていただきました。現在はフリーではありません)





「お〜い」

「Zzz…」

「ゾ〜ロ〜」

「Zzzzz…」

「…はぁ、駄目だこりゃ…」



サンジが仲間になってしばらく経ち。
ゾロはサンジが近くに寄っても目を覚まさなくなった。サンジの匂いになれたのか、自分のテリトリー内に入っても許すようになったのか、とにかく目を覚まさない。
嬉しくない、といえば嘘になる。ゾロに受け入れられたことにサンジは純粋に嬉しがった。しかし、そのせいでゾロは安心して深い眠りについてしまい、どんなに起こそうと声をかけてもさっぱり起きない。サンジは新たな難問をクリアしなければならなくなってしまったのだ。



今日も、サンジは昼食ができたと大声で知らせたのだが、待てど暮らせど緑頭だけキッチンに来ない。仕方なく、サンジが自ら男部屋まで呼びに来たというわけだ。今頃大食漢の船長相手にウソップが必死の防衛を張っているだろうが…おそらく負けるだろう。



ゾロが寝てて飯を食いっぱぐれることは日常茶飯事だった。
このクルーの中で一番ガタイがいいにも関わらず、意外に食が細いのか、はたまた酒さえあれば生きていけるとでも思っているのか、酒以外ほんとにねだることがない。
サンジは知らぬうちに舌打ちをする。ちゃんと食べないとどんなに鍛錬したって意味がないのに…。クルーの栄養管理を任されているサンジにとっては、これは沽券にだって関わる。


ゾロはそんなことも知らず、男部屋唯一のソファで気持ちよさそうに眠っている。ゾロの鋭いが美しい翡翠の瞳を見れないのが残念なのだが、目を閉じると実際年齢よりも幼くなるゾロの寝顔は非常に庇護欲を駆り立てられる。女性だとどうやら母性を擽られるようで、ナミが眠るゾロの頭を撫でているのをサンジは何度か目撃している。しかもそのときの台詞は『猫みたいで可愛いと思わない?サンジくん』というものだったから、サンジは咄嗟に反応できず困ったものだった。



そんなことまで思い出してサンジはもう一度舌打ちする。どちらに対しての舌打ちなのか、サンジ自身はっきり言えなくて苛々した。サンジはその苛々をぶつけるように、憎憎しげにゾロを見下ろした。



「…いい加減にしねぇと蹴り飛ばすぞ、クソ剣豪」

「…ぅん…」

「………」


仰向けに寝ていたゾロが、もぞもぞと寝返りを打ってサンジの方に顔を向けて横向きになる。鼻にかかった、ともすれば甘い声をあげながら…。思わず赤面するサンジ。




(!いや、何俺赤くなってんだよ!?こんなヤツ、可愛くない、可愛くない!!)

ぷるぷる首を横に振って、自分の信じられない想いを打ち消そうとする。ココヤシ村からずっと感じていた想い。男の中の男のようなゾロを『可愛い』と思ってしまう自分を、サンジは一生懸命否定していた。



「……ぁ…ふぅ…」

「!」
(なんだよ、なんだよ!?お前は狙ってんのか!?い、いや、だから狙ってるって……)



目覚めが近いのか、ゾロは更にもぞもぞと動く。その動きもまるでまどろんでる猫のように緩慢で、微笑ましい。


(!!だーかーら!!微笑ましくなんかこれっぽっちもないんだって!!)




とうとう耐えられなくなったサンジが、ゾロを盛大に蹴飛ばした。

「い、いつまで寝てやがるんだクソ剣豪!!さっさと起きて飯食いやがれ!!」

「!?ぐっ…!?」



ゾロはソファごとひっくり返った。







「こんの、ぐる眉コック!!何しやがる!!」

「うるせーっ!さっさと起きねぇてめぇが悪いんだ!!」



結局そのまま喧嘩に発展して。
響くのは船を壊されたウソップの断末魔。



「船を壊さないでくれぇぇぇぇえええーーーーー!!!」








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