サンジの視点







ゾロは、自分の後ろに人が立つことを好まない。
それ、どんなゴ○ゴ?と思うが、とにかく他者に自分の背中を見せることを嫌う。



サンジがそのことに確信をもったのは、アーロンパークからナミを奪還しココヤシ村を出てから5回目の上陸のときだった。






そこは治安の良い、とても穏やかな島だった。
ナミの指示で人目に付かない絶好の入江に船を停め(海賊船は他になかった)、意気揚々と上陸を果たした麦わら一行。ジャンケンで負けた不運な「勇敢なる海の戦士」を残して(いつもの持病を発症していたがことごとくスルーした)、残りの4人は町へ繰り出そうと森の道を歩く。

ルフィは飛び出したくてうずうずしているようだったが、首に縄をかけられ飛び出す度に絞まりうめき声をあげている。
ナミは呆れたようにルフィに声をかける。


「学習なさい、ルフィ。急に動くと首が絞まるのよ?」

「はやく町に行きてぇよー…」

「前回も前々回もそのまた前の上陸でも時間になっても帰って来なかったのは誰?」

「…おれ…」

何も言えなくなったルフィに、「ほんとは私だってこんなことしたくないんだから」と微笑みながら言うナミは立派なS属性だ。この少女に縄をつけられている少年がまさかアーロンに勝ったとは、このシーンだけ見たら誰一人信じないだろう。



サンジは「そんなナミさんもステキだぁ!」と言いつつ、ちろりと後ろを気にしながら歩く。

(あいつ…また一番後ろにいる…)

ゆっくりと3歩ほど遅れてついてくるのは、ゾロだ。





先日。
ほんの4日前。
サンジはゾロに告白した。



ゾロの反応は悪くなかった、とサンジは思っている。
男が男に告白されたのだ。なのに、ゾロはすぐに拒否の言葉を発しなかった。


困ったように寄せられた眉。
今にも枯れそうな弱々しい声。
真っ赤に染まった頬と耳。



『…どうしていいか…わかんねぇ……』
『……わかんねぇんだよ……っ』

この言葉。





今度は逃げられないように頑張ろうと思っていたのだ、サンジは。
ところが、あれ以来ゾロは警戒してるのか夜の晩酌の場に姿を現さなくなった。
それどころか、あれ以来サンジはゾロが一人でいるところを見たことがない。



つまり、サンジはゾロと二人っきりになれないでいた。





(…さすが魔獣…。気配を察して姿を消すところなんて、ほんとそのもの…)

すっかり脱帽状態だったサンジは、今回の上陸とナミの「たまにはゾロも船から降りなさいよ」の一言に諸手をあげて喜んだ。
あとは男3人による船番ジャンケンに勝てば、ひとまずゾロの近くにいれる。
と、いうことで、並々ならぬ気迫と運により、サンジはこの場を勝ち取ったのである。





さて、あとはどうやってこの魔獣と二人っきりになるかだ…、とサンジが眉毛と同じように頭をぐるぐるさせていると。

「キャッ!?ちょっと、ルフィ!?」

ナミの悲鳴に慌てて目を向ければ、ナミを米俵よろしく肩に担ぐルフィの姿。



「てめ、ナミさんに何を!?」

怒鳴るサンジに、ルフィはにししと笑い。

「要は時間までに戻ればいいんだろ?ナミを持ってけば絶対戻ってこれる!」

「ナミさんは持ち物じゃねぇぞ!もっと丁重に…」

「じゃ、お先にーーーっ!」

「きゃあーーーっっ!!」

「クソゴムっ!てめっっ!!」



ナミを持ち、あっという間に走り去り消えていったルフィ。サンジは額に青筋を作りつつ、追いかけようと足をあげかける。





と、気付く。

(もしかしなくても、今…ゾロと二人っきり!?)

ナミには悪いが、ルフィに感謝の気持ちが沸き起こってしまう。
サンジはにやける顔を引き締めつつゆっくりと後ろを向いた。



「しょうがねぇな、ルフィの奴。な、マリモ」

「…」

後ろを向けば、突然のルフィとナミのドロンについていけず目をぱちくりするゾロの姿。
サンジはかわいいと思いながらも、逃げられないようにそっと近付いてゾロの腕をとった。



ゾロがはっとしたときにはもう手遅れ。





「やぁっとつかまえた…ゾロ?」

4日間逃げてた分、ゆっくり話そうじゃねぇか…?



ひくり、と顔を強ばらせるゾロに、サンジはニッコリ笑いかけた。








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