A







きゅ、とサンジは思い出したようにゾロの手を握る。ゾロは手をサンジに握られたままだと忘れていたらしく、「ぁ…」と小さく呟いて顔を赤くする。



「……手…」

「お前の手、あったけぇな…」

「…はなせ」

「なんで?いーだろ。俺の手冷たいからお前の手であっためといて」



困ったようにゾロは眉を顰めて、その顔のままサンジを見た。その表情にサンジはどきっとする。
目が、ゾロの目が『困る』と訴えてる。そのくせ顔は真っ赤で、手だって無理にふりほどこうとしないのだ。



「…なぁ」

自惚れても仕方ない、とサンジは思う。そして思い上がっても仕方ない、とも。


「それ、わざと?」

「な…にが…」

「その顔と態度。全然合ってないと思うんだけど?」

「!」



更に顔を真っ赤にしたゾロが反射的にサンジから自分の手を取り戻そうとする。サンジはそれを許さず、きつくゾロの手を握ってからガタッと席を立った。


「隣に座っていいよな?」

「!駄目、だっ!」

「なんで?俺が嫌いだから?」

「ちが……っ」

「ちがう?じゃあ、いいよな」

「!!?」



有無を言わせずサンジはゾロの隣に座り、手を握るのとは逆の手でゾロの肩を抱いた。そして放心しているゾロの耳元で囁く。



「…ゾロ」

「っ!」

びくん!と震えたゾロの体をサンジは愛しげに抱いた。







今日こそこのもやもやした関係にけりをつけるとサンジは燃えていた。



「…ゾロ、俺は…」

「ぅ…んっ…」

「俺…、…お前のこと…」










すきだ









弾かれたように、ゾロは横に座るサンジの方に顔を向ける。
サンジは笑って見せたがちょっと顔がひきつっている。かなり勇気を出して言ったようだというのはゾロにも伝わってきた。


ゾロはますます困る。サンジが冗談を言っているわけではないと、本能でわかってしまって。



「…そんなこと…言ぅな……」

真っ赤で泣きそうな顔でゾロは俯いた。やっと絞り出した声は震え、サンジの耳にやっと届くくらい。



「迷惑?」

男の自分が告白したこと・こうして肩を抱くこと・手を握ること……ゾロには迷惑なのだろうか?

サンジの目から見れば、絶対にゾロはサンジにそんなに嫌な感情は抱いていないはずだ。これまでの関係からはっきりと言える。ただ、ゾロの感情とサンジの感情が似通ったものかどうかはわからないのだが…。


サンジが顔をしかめてゾロの反応を伺う。ゾロはふるふる首を横に振って、またぽつりと呟いた。




「…どうしていいか…わかんねぇ……」

「…え」

「……わかんねぇんだよ……っ」



呆気にとられたサンジの隙を見逃さず、ゾロは自身の手をサンジから取り戻してするっとサンジから逃れると。そのままキッチンから出ていってしまった。



バタンと閉まるドアの音で漸く我に返り。
ありゃま…と、サンジは残念そうに苦笑した。



あんな真っ赤な顔をして。
わかんねぇ、なんて。
反則じゃねぇの?




「ほんっっっと、可愛い奴……っ」

サンジは顔がにやけるのを止められない。



ただ、次は逃げられないようにもうちょっと頑張らないとなぁ、と思うサンジだった。





END



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