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それは、ゾロだけの特殊な体質だった。普段は翡翠色の瞳は、戦いのときなどの感情の高ぶりによって金色に変わる。どんな原理なのか、よくわからない。しかしこれが原因で親に気味悪がられ、幼いころに捨てられたのだ。それを拾ってくれたのが、くいなの父・コウシロウだった。

ゾロはその目が嫌で仕方がなかった。けれど、死んだ友人のくいなは大層お気に入りで、「宝石みたいだ」と言ってくれた。その表現は不本意極まりなかったが、この言葉でゾロが勇気付けられたのは間違いなかった。


「そんなに嫌なら目立たなくすればいいのよ」


そういって差し出してくれたのが黒のバンダナだった。バンダナを目の上ぎりぎりに巻いて影を落とすことで、金色と気付かれないようにさせようとしてくれたのだ。


それ以来、ゾロは戦いの前には必ず黒のバンダナを巻くようにしていた。



ルフィは、ゾロのその寂しげな顔が気に入らなくて、ゾロの左の頬をきゅっと抓った。

「いてぇ!馬鹿、離せ!」

ぱしん、とゾロはルフィの手を軽く叩いて、ルフィを睨みつけた。
ルフィも負けじとゾロを睨む。そして叫んだ。


「俺は、ゾロの目の色、すっげー好きだ!」

「!」

「緑も、金も。なんでそうなるかなんてわかんなくていいや。もうお前は俺の仲間なんだから、また見れるよな?金色の目」

「…ルフィ…」

「俺はお前の隣にいるんだから。また見れるよな?」

「……かもな」

よし!とルフィは満足したように笑い、ゾロの隣に寝転んで丸くなった。
ゾロは呆然としたまま、それでもルフィにならって寝転んだ。


仲間、という響きが、ゾロの心をぽかぽかとさせる。海に出てからこんなにくすぐったい気持ちになったのは初めてで。戸惑いがゾロのなかに生まれていた。

(隣に、いる、仲間)

当たり前のように隣にいる男に、ゾロは不思議な気持ちになる。




「俺さ、仲間ができてすっげー嬉しいんだ」

ルフィはゾロのほうを向いて横向きに寝ながら話してくる。

「俺の夢は、仲間がいないと叶えられねぇから」


海賊王…。確かにそうだ。海賊王はただ一人だろうが、海賊と名乗るからには仲間が不可欠。
ルフィの夢には仲間がいることは必須条件なのだ。

ゾロもルフィのほうを向きながら、話を聞く。
ルフィは続けた。


「最初の仲間がゾロでよかった。俺と同じくらい強くて、かっこよくてさ。あん時も、ナイスだったし!」

「…そりゃ、どうも」

おそらくモーガンに止めをさしたときの話をしているのだろう。
ゾロは少し顔が赤くなる。褒められることには慣れていないのだ。


「ゾロは?俺が仲間で嬉しいか?」

ルフィはわくわくとした顔でゾロを見てくる。ゾロはふ、と笑って、ルフィから目線をはずして仰向けになり夜空を眺める格好をとった。



「…俺の夢に、仲間なんていらなかった。お前と違ってな。だから、正直仲間がいること自体が今も信じられねぇ」

「…」

「…けどよ。隣に俺と同じくらい強くて信頼できる仲間がいるのは、悪くねぇな」

「!」

「…これから、よろしくな…。ルフィ…」


ゾロは、そのままうとうとと眠ってしまった。
あの磔の状態で、何日も気を張っていたのだ。眠くなるのも当然だろう。

それに今は一人ではない。隣には、仲間がいる。

そんな安心感があって、ゾロはとうとう深い眠りに落ちてしまった。



ルフィは、今度は無理やり起こそうとはしなかった。
普段がさつなルフィの仕草とは思えないほど、静かにそっとゾロの若草色の髪の毛に触れる。
ぎこちないが、慈しむように、何度も何度も優しく撫ぜる。


「…ん…」

甘えるような吐息がゾロから漏れて、そしてゾロの顔にふんわりと優しい微笑みが浮かぶ。
初めて見たゾロの優しい顔に、ルフィは満足気に笑って。


「おう、よろしくな」


もう聞こえてないだろうが、ルフィはゾロに返事をしてやった。



ルフィはゾロの頭を腕の中に抱きこむ。知らず人肌を求めてか、擦り寄ってくるゾロに笑みを深くするルフィ。

「ゾロはかっこいいのに綺麗だし可愛いから、なんかすげぇなー」

と、ゾロが聞いたら真っ赤になって怒るようなことを呟いて。そのままルフィもまた眠りについた。



翌朝、自分の格好を目の当たりにし、真っ赤になって怒ったゾロにはっ倒されるまで。
2人は仲良く寄り添って眠ったのだった。





END



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