ぽかぽかと晴れた昼下がり。
今日もサウザンド・サニー号は順調に大海原を走る。
本日は週に1回の野郎どもの洗濯日。午前中からナミにどやされロビンに微笑まれながら全員溜まった1週間分の汚れものに悪戦苦闘して、なんとか干して。風に気持ちよさそうになびく洗濯物の下、サンジ特製のサンドイッチを争うようにぺろりとたいらげて、ようやく人心地がついたというところだった。
ゾロは芝生甲板にごろんと寝転び、午睡をとろうとしていた。いつもは元気な船長以下お子様連中もさすがに午前中からの洗濯作業のせいでおねむモードなのか、とりあえずゾロのいる周りは風になびく洗濯物の音と波の音のみで穏やかなものである。今日は寝ているところを「退屈だ〜」とルフィに起こされることもなさそうだ。ゾロは押し寄せる睡魔の波に抗うことなく身を委ね始めていた。
そのとき。
「…ゾロ?寝ちゃったか?」
「ん…?」
小さく小さく、自分を呼ぶ声。
ゾロは、重い瞼をなんとかこじ開けて薄目で声のする方を見る。
ゾロの肩のすぐ横あたりにちょこんと座っているのは、やはりチョッパーだった。
少しだけ緊張したように佇んでいるチョッパーに感覚的に気付いたゾロは、なるだけ柔らかく尋ねる。…眠くて声が掠れてしまっているのは見逃して欲しい。
「…ど…した?」
「っうん、あの、あのな、俺…」
もじもじ、と少しだけ逡巡していたチョッパーだったが、やっと決心したようにゾロに尋ねる。それまで逸らしていたつぶらな目をゾロに一生懸命向けて。
「…一緒に…寝てもいいか…?」
まるで、宝物を話すように大切に大切にかけられた言葉。
なんだかゾロはくすぐったく思い、ほんの少し目元を染める。それをチョッパーに悟られたくなくて、ゾロの両腕はチョッパーに伸び、そのままチョッパーはゾロの腕の中に閉じ込められた。
「わ!」
驚くチョッパーの声にくくく…とゾロは可笑しそうに笑う。
温かなチョッパーの毛の感触にゾロの眠気はますます高まっていく。チョッパーは少しだけもそもそと動いて、自分を抱え込んでしまったゾロの顔を下から見上げた。
「…いいの?」
恐る恐る、けれども期待をもってかけられたチョッパーの問いにゾロはふっ…と笑う。
「俺の睡眠の邪魔をしなければな…」
きゅーっと抱きしめてくれるゾロの腕の温かさと、柔らかく返される声にチョッパーはようやく安心して、嬉しそうに「エッエッエッエッ」と笑ったのだった。
チョッパーを後ろから抱えるようにして、ゾロは芝生の上に横向きで寝転ぶ。ほんの数秒も経たないうちにゾロは寝息を立て始めた。
チョッパーはゾロの温かいぬくもりにしっかりと守られてるように感じて、ひどく安心していた。
自分の体にまわっているゾロの大きな手。ナミやロビンのように柔らかくはないし、サンジのように器用に料理を作るわけではない。普段は鍛錬のために、剣を握るためにある手。けれど、この手はこんなにもチョッパーに安らぎを与えてくれる。
チョッパーは、自分を優しく温かく包んでくれるその手に。
鼻先をちょん、と押し付けた。
尊敬のキスは手の上に。
1:手の上に尊敬のキス
チョッパーとゾロはこんくらい仲良しだといい。チョッパーなので、鼻でキス。