1−2





土方十四郎は、高校2年生。今1Kのアパートで独り暮らしをしている。

小学6年のときに両親を事故で亡くし、それからは土方の後見人の近藤勲という遠い親戚に面倒をみてもらっていたが、高校入学と同時に近藤宅を出た。近藤はひどく寂しがったが、土方とすれば自分の世話をするのに徹するためにこれまで婚約者と籍をいれるのを見合わせていた近藤たちに今できるせめてものプレゼントだった。土方は自分に惜しみない愛情を注いでくれた近藤も、籍を入れるのを待たされたにも関わらず何かと世話を焼いてくれた婚約者も幸せになって欲しいと思っている。…というか、新婚の家庭に居座り続けるなどいたたまれない…というのが本音だったりする。兄や姉のような立場にある2人のいちゃいちゃなところを直接見るのはどうにも恥ずかしくて仕方ない。

ということで、高校合格が決まったと同時に引っ越して独り暮らしになった土方だったが。近藤が土方の独り暮らしを了承するのを渋ったのは何も寂しかっただけではない。朝の一連の出来事にも通じることだが、土方のある体質が問題だった。



土方は生まれつき霊を見ることができる。土方自身は“霊”という存在を口にしてはいけないものだと思っているようで、某有名漫画の設定を使って“スタンド”と呼んでいた。(土方はマガジン派なのだが、マガジンの漫画にはこの現象を説明できるものがなかったためこの呼び方をしている)



物心ついてから小学校低学年までは霊…否スタンドを見るのが怖くて外出もままならず、ひきこもり状態。中学年になってからは、土方が反応すると向こうは自らの存在を認識してくれたと思って寄ってくるということに気付き、極力無反応を心がけた。それでなんとかやり過ごしていたが、小学6年に土方の言葉を信じ暖かく見守ってくれていた両親を同時に亡くして、心に深い溝ができた土方はより暗いものを見るようになる。そのときにずっと傍にいてくれたのが近藤だった。遠い親戚ではあったが家は近所だったためそれまでずっと交流のあった近藤は、土方の体質もわかっていた。両親を亡くして落ちていた状態から多少浮上した土方に、近藤は土方が自分の体質とよりうまく付き合えるようにするにはどうしたらいいか一緒に考えよう、と提案する。話し合いの後、近藤は土方が簡易的に霊を払えるように、と有名な霊媒師とコンタクトを取る。土方は中学生になってようやく自分の体質とうまく付き合えるようになったのだった。



とはいえ、幼いころに植えつけられたスタンドの恐怖はそう簡単には払拭できないようで。スタンドを払える力を得ても、相変わらず土方にとってスタンドは恐怖の対象以外の何ものでもなかった。土方はスタンドを見かけるたびに払っているのではない。それではキリがなくなってしまう。よって朝の出来事のように、自分の生活範囲内に入ってしまったスタンドに関してだけ払うようにしている。第一簡易的に追っ払ってるだけで、きちんと成仏させているわけではない。基本は無視する。反応しないことが一番平和的な対処法である。



まあ、そんな厄介な体質がありながらも土方はそれ以外は平凡な高校生ライフを送っていた。最近はなかなか朝起きられず、遅刻が多いぞと担任に叱責を受けてしまってはいるが。


今日は遅れまい、と慌ただしくアパートを出ていく土方。
……その土方を見つめる人影があったが、土方は気付かなかった。


- 2 -


[*前] | [次#]
ページ:



TOP

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -