A




そんな切羽詰まった俺なんて知る由もなく、ゾロは俺が返事をしない=一緒に寝ないと思ったらしく。ついに深緑の瞳から涙を溢れさせる。



「うぅ…」

「わ、お前っ」

「っく…ひぅ…」

「違うっ!違うぞ!さっきはびっくりしただけで…。俺がお前と一緒にね…っ寝ないわけないだろ!?」

「……ほん、とか?」



ぽろ、と零れていく雫。
潤む深緑の瞳が俺をじぃっと見つめる。
真偽を確かめようとするその瞳に、俺はゆったりと微笑んでみせた…と思う。正直、笑えてたのか、よくわからない。





けれど。






「…ん。そうか…」

僅かに俯いたゾロがほっとしたようにぽそっと呟くと。
再び顔を上げて俺の方を見る。






一瞬、
周りの時間が止まったように感じた。










ふわっ








そんな表現が一番似合う、柔らかな柔らかな、





ゾロの笑顔。









「いっしょ…、だ、な…?」

「…おぅ」

「ん…。おやすみ…、…こっ……く……」

「おっ、おやすみ…っ」



くてん。

ゾロはそのまま俺の胸にもたれかかり、数秒もしないうちに穏やかな寝息をたて始めた。






「……おいおい……」

どうする、これ…。
つうか、さっきのこいつの…。





「……あんな顔…」

初めて見た。






あんな風に柔らかく、心から安心しきったような顔で微笑まれたら。








自惚れるぜ、俺。








この眠り姫を男部屋にお送りするその前に。



「…これは、俺を精神的に追い詰めた慰謝料と、部屋まで送るお駄賃」

常にさらされているおでこにそっとキスを贈った。




fin.



おそらくこの後、約束したとおり一緒に寝たサンジは、次の日かなりの上機嫌で料理作ってるんだろうなぁ!

ゾロ自身はお昼頃まで寝てただろうからその事実を知らないだろうけど(夜のは寝ぼけてたので知らず)、男部屋の男共にはばっちり見られてたから、フランキーあたりにからかわれて真っ赤になってサンジに殴りかかればよいよ。仲良くすればいいよ。


'08.9.7 ブログ掲載
'10.10.25 サイトUP



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