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ふわっ
ふわっ




そんな表現がぴったりの、君の……





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ゾーロ。ねみぃんなら部屋帰れ」

「……う」



キッチンで、夕飯の後片付けと明日の朝飯の仕込みを終わらせて振り返ってみれば。
空っぽの酒瓶を2〜3本転がして、腕を枕にテーブルに突っ伏している未来の大剣豪殿。


苦笑いしつつ、煙草に火をつけて一度味わってから、俺は無防備に寝ている剣豪殿に近づいた。



綺麗にソースの一滴まで平らげてある真っ白の皿に満足して、ニヤつく口元を抑えられない。
普段出てくる言葉はまったく腹立たしいが、表出する行動はこんなにもわかりやすい。今流行りのツンデレだよ、ツンデレ。俺の萌ポイント押さえまくりだよ、参ったね。



俺は、寝ている緑頭の男の隣にそっと座って、彼をひどく愛しい気持ちで見つめる。眠いくせに仕込みが終わるまで俺を待って、すっかり男部屋に戻るタイミングを逸しここで眠ってしまったゾロ。閉じられた瞳を縁取る髪より少し深めの緑色の睫は長く、寝息をたてる唇は突っ伏してるせいかいつもより開きが小さめで、なんだか色っぽい。

起きるだろうか?このままお姫様抱っこでもして男部屋に連れていっても構わないのだが、せっかくだからちょっとだけ会話したい。こんなにも気持ちよさそうに寝てるのにかわいそうな気もするけど。俺だってゾロとの酒の席を楽しみにしてたのだから、このくらいの我が儘は許されるよな?



俺は、ゾロを起こす意志をもって、奴の肩にそっと手を置いた。ゆっくり揺すりながらゾロの耳元で囁く。



「ゾロ?ゾーロ、起きろー」

「う…」

「こんなとこで寝るな。部屋行こうぜー。俺ももう寝るから、な?」

「…ん…くぅ……」

「ゾーロ」


手応えを感じる。珍しい、こんな柔らかい呼び掛けで反応するなんて。あんまり眠りが深くなかったのだろうか?


……俺のことを気にかけながら寝ちゃったから、浅い眠りだったとか?
やっべ…。だとしたらクソ嬉しいかも。



もう一押し、と思った俺は、ゾロの肩を掴む手に少し力をこめる。

「ほら、起きろ。肩貸してやるから」

「…ぅうん…っ」


見つめていれば。
ゆっくりと開かれていく深緑の瞳。
寝起きのためしっとりと濡れた瞳は、トロンと焦点があってなくて、俺を認識できてないのかも…。仕方ないとは思いつつ、寂しくて、俺はゾロの瞳に自分の顔が映るように覗き込む。



「ゾロ、起きたか?ほら、部屋行くぞ」

「ふ…う?」

「わかるかー?俺だぞぉ?遅くなってごめんな。今日はもう寝ようぜ」



ゆっくりと頭を起こすゾロ。まだ寝ぼけた様子のゾロは、俺の目には可愛く映る。


「…こ…っく?」


舌っ足らずに自分を呼ぶゾロ。深緑の瞳はまだトロンとしてるが、俺を真っ直ぐ見てくる。
俺はゾロを安心させるように笑んでみせて、そっとその緑色の頭に手を滑らせる。
「寝よう、ゾロ」

ほら立って、と続けようとした言葉はゾロの次の言動に阻まれる。


「……しょ……?」

「え?」

「…いっしょ……?」




はい?

何だって??





「…な、何?ゾロ……」

「ねる、んだろ…?」

「ね、寝るけど」

「いっしょ……、か…?」



イッショ?

いっしょ?





一緒???






「な、ぁ…?



いっしょ、じゃ…ねぇの……?」







不安そうに眉間が寄せられて潤んだ瞳からは今にも雫が零れ落ちそうな、ゾロの表情。
呟かれた科白は声が震えてて、まるで拒否を恐れているようで……。







いやいやいやっっ!
なんだ、コレ!?
誰だ、こいつは!?






クソかわいすぎなんだが!!!??









固まった俺を見て拒否と受けとったのか、ゾロが更に表情を歪めていく。
それを見てますます慌てる俺。いや、確かに俺、ゾロを泣かせたいっていう欲求はあるよ?泣かせたいっていうか……いや、それはおいといて!こんななかせ方は不本意で、俺はオロオロし始めた。



「ぞ、ゾロ、寝ぼけてるんだろ?じゃなきゃ、んなこと言わねーよな?よ、よし!そういうときはさっさと寝ちまうに限る…」

「いっしょ…」

「え?」

「いっしょじゃなきゃ、ねない……」

「!!??」



どうしよう…っ。
…こんな状態のゾロと一晩一緒にいたら。







理性が焼き切れちまうっっっ!!!




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