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「花見、行かない?」



例によって例のごとく、レポートだの飯食わせてだの、何だかんだと理由をつけて押しかけた土方宅にて。

相も変わらず美味しい土方の手作り料理を食して(今日はハンバーグ!)、まったり食後の緑茶を飲んでいたとき。

銀時は明らかに土方のみ見つめて冒頭の台詞を口にした。



銀時のいきなりの誘いに目をぱちくりした土方は、困惑げに口を開く。

「え?今?…もう散っちゃったんじゃ…」

「バカか、お前。もう4月も半ばで咲いてる桜なんざあるかよ」


土方の言葉にかぶせてきたのは、先ほど銀時にガン無視された彼の幼馴染、高杉である。銀時と高杉は幼稚園から大学まで一緒で、しかも今現在片思いの相手も一緒。いったいどんだけのシンクロ率だよ?と突っ込みを入れたくなる状態なのだ。

片思いの相手は、今彼らの目の前にいる土方である。今のところ、頭に超がつくほど鈍感な彼には、2人の気持ちは塵ほども伝わってない。このラブバトル、現在までで見ればイーブンと言えるだろう。

2人ともこの状況に甘んじてるわけではなく、あの手この手でライバルを出し抜こうと頑張るわけだが、友達に対してとことん優しい土方はどこまでも平等に接してしまう。一方が遊びに誘うともう一方を誘うのだ。


どうしたら友達以上の存在になれるのか?銀時と高杉は、目下模索中である。



さて、恋敵の高杉にバカ呼ばわりされた銀時は、これまた綺麗に無視して変わらず土方のみに話しかける。

「ちっちっちー。今が見どころの桜もあるんだな、これが。昨日、バイト帰りに寄り道してたら偶然見つけてさぁ。これは絶対土方に見せたい!って思って」

「マジ?そんな桜、あるのか…。見たいな」

「あるんだよ!見てぇだろ?なぁ、花見行こう?信じない奴なんかほっといて2人で行こうよ」



銀時のそのセリフに高杉が額に青筋を作る。

「あ゛ぁ!?ふざけんなっ、こんな夜更けに2人だけで外に出せるか!俺も行くぞ」

「はぁ?桜咲いてるって信じない奴は帰ってくださーい。連れていきたくないでーす」

「ざけんな、てめぇは桜をダシに土方と2人きりになりてぇだけだろがっ!」

「言いがかりですー。俺は綺麗な桜と綺麗な土方を一緒に見た……あ、助詞まちがった。綺麗な桜を綺麗な土方と一緒に見たいんですー」

「本音は前の方だろっっ!!」

「…何してんだ、お前ら?」



外出の準備を完了させた土方は、わーわーと言い合いをしている2人に首を傾げた。銀時と高杉が見れば、エコバックに酒とウーロン茶とつまみとシートを詰めて、行く気満々の土方が立っていた。



「はやく、行きたい。行こうぜ、坂田、高杉」

くいくい、と2人の袖を両手で引っ張りながらニッコリ笑う土方にクラクラした銀時と高杉は、気付くと土方を真ん中に3人で仲良く河原を歩いていた。







「すげぇな、ほんとに満開だ。月明かりで照らされて、すげぇ綺麗」


桜を見ながら、そう笑う土方に。


「剣道部の奴らとは花見に行ったけど、お前らとは予定合わなくて行けなかったろ?…よかった、3人で花見来れて」


はにかむように微笑む土方に。


「何ボーっとつっ立ってんだよ?桜に見とれてんのか?お前らにもそういう情緒があったんだなぁ」


悪戯っ子のようにニヤリと笑う土方に。





((…も…、降参……))


クラクラ
クラクラ

そのまま地面に膝をついてヘタレこんでしまった銀時と高杉に、土方が慌てて声をかけるが。その声はなんだか遠くて。
何故なら、2人の頭の中はこんな思いでいっぱいだったから。










桜より、花見より、酒より、何より俺は

“君にクラクラ”





fin.


…お粗末さまでしたm(_ _)m
桜、好きです。でも土方のイメージは梅なんだよなぁ〜。


'09.4.22 ブログ掲載
'10.10.25 サイトUP



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