俺の問いにトシは目を伏せて少し考えるような仕草をしてから、再び俺を見据える。
トシの口から紡がれる、理由は。
「万事屋が、教えてくれた」
俺を、
「恋人が、親友とそんなことをしてたら許せないって」
ものすごく、
「…そう言われて…今まで感じてた違和感が繋がった、って思って」
ものすごく…っ、
「恋人にするようなことを親友でするのは、…やっぱりおかしい」
打ちのめした…。
「…万事屋が…?」
銀時が、トシに………
俺は目の前が、怒りで真っ赤に染まった。
どこまであいつは…
あの男は邪魔をすれば気が済むんだ…っ!
「…だから、近藤さん」
はっ
トシの、哀しげな声に俺の意識が戻る。
見れば、何かを決心したような、トシの顔。
やめてくれ、トシ…やめて…
それ以上先を言わないでくれ…
「…もう、やめよう」
「なんで近藤さんが俺に嘘をついてこんなことしたのか、わかんねぇけど…
俺は、近藤さんとずっと親友で、副長として隣にいたいと思ってる」
「…だから…、もう、あんなことやめよう…」
「…トシ…っ!」
哀しそうな声。
トシの形のいい眉が歪んで、その下の瞳も哀しそうに揺れてて。
少し震えた声で語られる言葉は、俺にとって残酷な通告だった。
ダメだ、トシ!
違うんだ、トシ!俺は、俺は…っ!
こんなタイミングで言うなんて、思いもしなかったが。
でも今言わないと、トシは勘違いしたまんま俺の傍から離れていってしまう。
俺はトシを騙したんじゃない。俺は、きっとずっとずっと前からトシのことが、もしかしたら出会った当初からトシのことが好きで。自分の想いを自覚してない頃からトシにキスをして、抱きしめて、触って、独占してて。親友ならこんなことして当たり前だ、なんて、嘘をついてしまうくらい俺はトシを想って…。
だから、トシ!そんな顔しなくたっていいんだ、俺はトシのことが好きでそういうことしてたんだから…っ!騙そうと思ってしたんじゃないんだよ?
話は済んだ、とばかりに去ろうとするトシの腕を掴む。トシの両腕を捕まえて、力づくでもう一度座らせた。
驚いたように俺を見るトシの目をまっすぐ見て、俺はトシに届くように告げようとした。
「トシ、トシ聞いてくれっ。今更って怒るかもしれないけど、俺は、俺はトシのことが…「やめろ!」
けれど、トシに遮られる、俺の言葉。
「聞きたくねぇよ…近藤さん…っ!」
「…トシ…」
さっきよりも歪んでしまったトシの顔。俺の好きな、トシの藍色の瞳からは今にも雫が零れ落ちそうで…。
なんで…トシ…。トシは、トシは、…俺の気持ちを聞いてさえもくれないの?
「俺は…近藤さんのことを大事な…、大事な親友だって…ずっと信じて…っ」
「……」
「……俺、冷静じゃねぇな…。…少し距離置きたい。しばらくは仕事のやり取りだけにしたいんだ。…少し時間経てば、またあんたと雑談したり呑みに行ったりできるようになると思うから…」
「…ト…シ……」