いつの間にか、銀時の腕が俺の背中にまわり、ゆっくりと抱き寄せられる。俺は促されるまま奴の肩に自分の額を置いてみる。…なんかしっくりきて、ほぅと息を吐いた。おそるおそる銀時の背中に腕をまわして、少しだけ服を掴んでみた。




あったかい……。



心臓がどきどきする。落ち着かない感じがするのに、しっくりきて……。ほっとしてるのに、そわそわして……。なんだこれ？こんな気持ち初めてだ。近藤さんとくっつくときはこんな落ち着かない気持ちにはならない。安心するだけだ……。何で銀時とくっつくとこんな気持ちになるんだろう？



銀時とくっついてるから奴の鼓動も伝わってくる。俺と同じくらいのスピード…。奴もどきどきしてるのか？俺と同じく一言で言い表わせないような複雑な気持ちになってるのか…？




「…鼓動、お互いすごい速いね？」

銀時が話し掛けてきた。


「ん…あぁ…」

「今、何考えてるの？」

「…言えない」

「けち」

「……お前はどうなんだよ？」

「俺は土方のこと、考えてるよ」



あぁ……。こいつはズルイ。なんなんだよ、この口の巧さは。ホストかお前は？



「俺、は…。お前も俺と…同じ気持ち……だろうか、って考えてた……」

「…土方、今どんな気持ちなの？」

「落ち着かねぇのにしっくりきて、……そわそわするのにほっとしてる…」

「……」



こんな気持ちになるのが初めてで、俺は不思議でしょうがなくて。


「近藤さんとくっついても、安心するだけでこんな風に思わねぇのに…」

思わず、そんな疑問を口にした。




すると。
物凄い勢いで銀時が俺の肩を掴んで、俺のことを見つめてきた。

な、なんだ？俺、変なこと言ったか？
驚いて銀時を見つめると、わなわなと銀時が震えてて、その目は心なしか怒ってるように見えた。…やっぱり変なこと言ったんだろうか。

どうしていいかわからなくてそのまま銀時の顔見てたら、地を這うような暗い声が発せられて。初めて聞く銀時の声。背中に冷たいものが走った。


「……なにそれ…。お前、あのゴリラとこんな風にくっつくの？」

「ゴリラじゃな…」

「答えて、十四郎」


さっきの甘い雰囲気が霧散して、有無を言わせない雰囲気。
俺は知らずに溜まった生唾を飲み込んで、重くなった唇を無理やり動かして告げる。



「……近藤さんとは親友なんだ。だから、…そのなんだ、抱きしめたりキスしたりすんのは当たり前…」

「はあっ！？」



思いっきりびっくりされた。え。なんだその驚きよう？
驚いたと思ったら、ゆっくりと銀時の顔が俯いていく。だから、俺からは奴の顔が見えなくなった。



「…なんだよ、それ…」

「？…ぎ、銀時…？」


なんて言ったんだ？声が小さくて聞こえなかった。銀時に掴まれている肩が痛い。でも、俺は顔をしかめながらも銀時のおかしな様子に戸惑って抗議もできず…。どうすんだこれ…とすっかり困惑しちまった俺は、微動だにしない奴の頭をただ見ているしかなかった。