波乱の幕開け 【銀時編】@



今日はスーパーの特売で、神楽と一緒に買い物をしにきた。めんどくさかったんだが、神楽だけに任せると酢昆布しか買ってこないので行くことに。因みにパシリの新八は姉が風邪をひいたとかで今日は万事屋にいない。


あー、さみぃなぁ。もう11月?ほんとさみぃよ。11月にしたら寒すぎるよ。
小走りで入った店内が天国に感じた。お〜、あったけぇ〜。



「銀ちゃんぶつくさうるさいネ。あ!」

「どーしたー。甘味が腕振って歩いてるくらいじゃないと、俺は驚かねぇぞ」

「トシちゃんネ!」

「えっっ!?土方!?」

びっくりして振り向くと、神楽が一目散に走っていくのが見えた。



その向かっていく先に見えるのは。
あぁ。
あの黒い着流しの凛とした姿は、見間違えるはずない。
…土方だ。




“トシは俺のだ”
“トシは、俺の傍にいるのが一番幸せなんだ”
“あいつの幸せをお前が壊すな、銀時”




ちょうど二週間前、ゴリラが俺のところにわざわざ来て言った台詞がぐるぐる回る。
んなこと言われても諦める気はないし、本人にそう言われたわけでもないし、無視することにしたんだけどさ……。




“トシは優しいからトシの口からは言わないだろう”



…そう言われると、ひるむ。土方が優しいことなんて知ってるから。
んな感じで、この二週間ずっとぐるぐるしていた。

そうだ、それから今日まで土方に会ってない。
すごく久しぶりの土方。俺は、なんだか鼻の奥がツンとした。



「おぅ、チャイナ娘。元気か?」

店の中だからだろう、煙草は加えていない。手にはマヨネーズが入った買い物カゴ……相変わらずだな。


「元気アルよ!トシちゃんも買い物アルか?今日は仕事ないアルか?」

「あぁ。久しぶりの非番でな。マヨネーズが特売で買い溜めしとこうかと…」

「銀ちゃん!聞いたアルか?トシちゃん仕事休みアルよ?」

「おぉ、お前もいたのか」



土方はやっと俺に気付きました、って感じでこっちを見た。…ちょっと傷ついちゃうな。


「よぅ、多串君元気?」

傷ついたので意地悪したろ。土方が悪いんだぞ。

「多串じゃねぇって…」

はぁ、と溜め息ついてる。今日は非番だから着流しなんだな。黒がほんとに似合うやつだなぁ。



「ねー、トシちゃん、ご飯作ってヨ。今日は新八いないネ。このままだと今日の夕飯甘味だけになるヨ」

お!神楽いいぞ!お前はたまにたまーに気が利くな!


「はぁ?おい、万事屋。いくらなんでも普通の飯作ってやれよ」

「いや〜、俺の得意料理甘味だから。十八番はウエディングケーキだから」

「お前なぁ……」


だからお前と結婚する際は生のウエディングケーキでケーキ入刀だぜ、とか言いたかったけど、ここで怒らせたら飯が食えない・土方も行っちまうのでぐっと我慢した。



「しゃあねぇなぁ。わかったよ。作ってやる」

何が食いたい?と聞いてきた。やった!やっぱお前、優しいな。


「さっすがトシちゃんネ!私、今日は焼き魚食べたいヨ」

「ほんとお前は食う割に嗜好が地味だな」

「あとね、煮物!あと、豆腐とわかめと葱の味噌汁と……」

「おいおい、まだあるのか?」


土方は呆れながら、それでも神楽の我儘をきいている。…ちと羨ましい。なんか、母親と娘の微笑ましい会話を聞いてる取り残された父親の図…。あれ、俺父親?土方は母親?あれ、俺たちもう夫婦だっけ?結婚式もまだなのに。



「あ、そだ。特売マヨがお一人様2本限りなんだよ。お前ら買うの協力しろ」

あれ、これもせこい家族のお約束じゃね?え、ってことは俺たち家族?じゃあやっぱ俺と土方は夫婦か?




あれやこれやという間に買い物が終了する。物凄い量だ。でもこれ、明日には全部綺麗になくなるんだろうなぁ…どっかの大食らい娘によって。
別に持ちきれない重さではないがどうもしっくり手に馴染まずもそもそしていた俺をよそに、神楽が「そうネ!」と弾んだ声をあげた。


「ねぇ、私、トシちゃんちに行ってみたいアル」

「ぶふぁっ」

「何、銀ちゃん汚いアル…」


いや待て、神楽っ!いきなり何を…っ!何、彼氏のうちに行ってみたいなぁと我儘を言う彼女の図、を演じてるわけ!?いや、俺も行ってみたいけど、いきなりそんな…。


「は?別に面白いの何もないぜ?」

「たまには他の男がどんな生活してるか覗いてみたいネ。銀ちゃんだけに染められるのは嫌アル」

「……万事屋、お前…」


うわっ!何その危ないロリコン犯罪者を見るような目は!


「ちがっ…俺なんもしてないぞっ!つーか、こんな酢昆布くさい娘にどう間違いを犯せると……」

「酢昆布馬鹿にすんのか!?体にいいアル!銀ちゃんのいつも食べてる犬の餌より断然体にいいネ!」

「え、何それ。ひょっとして宇治銀時丼のこと!?お前こそ人の好みに四の五の言うなーっ!」

「わかったから、道の往来で喧嘩すんじゃねぇっ!迷惑だろぉっ!」



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