嫉妬 【土方編】







「え…?トシ、…今なんて…」

「…う…?」

近藤さんがひどく驚いた顔で聞き返してきたから、俺は面喰らってしまった。
なんか…顔が怖い…。俺、近藤さんを怒らすようなこと言ったかな…?
普通にこの間もらった3日間の出来事を話してただけ…だよな?


「近藤さん…?」

「…あ、いや…。なんでもない、よ」


歯切れ悪く言いながら首を振る近藤さんに、ますます疑問が湧く。こんな近藤さん、珍しい。
いつもはっきり豪快になんでも言う近藤さんの姿がどこにもない。
少し目線を外しながら「…それで?」と促す近藤さんに首を傾げながら、俺は続きを話した。




3日間の休みを終えて屯所に戻った俺をにこにこと迎えてくれた近藤さん。
その後、朝のミーティングを終えそれぞれが持ち場に向かう。俺は休んでいる間に溜まったであろう書類を取りに局長室へ向かい、そのまま近藤さんと話す流れになった。休みの間の話になったのは至極自然な流れだった。




楽しかったんだ。
万事屋で過ごした時間が。
故郷の武州とか真選組以外でそんな気持ちになったの、初めてで。



だから、話したかったんだ。
親友の近藤さんに。


そういう気持ちだけだったのに。





「そう…か。万事屋の誕生日を祝って……楽しかったんだな…」

「あ、あぁ…」

近藤さんの表情はどんどん暗くなって、顔が俯いていく。


なんでだろう…?




少しの沈黙の後、近藤さんが静かに俺に言葉をかける。目は俺を見ないまま。

「…トシ、その…」

「…?」

「今から変なこと聞くが…ちゃんと答えて欲しい」

「あ、うん…」

何だろう?変なこと?
つか、そんなことより何より近藤さんの顔色が悪い。



「近藤さん、具合でもわりぃのか?」

俺の左隣で胡坐をかいて座っている近藤さんの顔を、片手でそっと触れる。
その途端、少し俯き加減だった近藤さんの顔が勢いよくあがり、それに驚いて引っ込んだ俺の手をしっかりと近藤さんの手が掴んだ。…少し、痛い。

「近藤さ「トシ」

俺の言葉をさえぎり、強い口調で名前を呼ぶ近藤さん。
真剣な目が俺に突き刺さるようだった。ひさしぶりにこんな真剣な近藤さんを見て、再度俺は驚く。
自然と出てきた生唾を飲み込んで、俺は近藤さんの言葉を緊張しながらじっと待った。





「トシは…




俺と銀時と、どっちが大事だ…?」







は?

「ど…どうしたんだよ…。…なんで…」

なんでそんなこと聞くんだ?


「…答えてくれ」

ぎゅ、と掴まれている手に更に痛みが増す。思わず顔をしかめて、それでも近藤さんから目が離せなかった。近藤さんの表情は変わらない。変わらず真剣な表情で、強い目で、俺の言葉をじっと待っているようだった。ふざけている様子は見えない。




近藤さんと、万事屋…?
どっちが大事か、なんて。



ずっと前から決まっている。





「近藤さんは、俺たちの大将で俺の親友だ。今も昔も、これからだって、俺は近藤さんが大切だ」

どうして近藤さんがこんなことを聞いてきたのか、わからない。
さっきの話の流れで、どうしてそんなことが気になったのか、俺にはさっぱりわからない。
けれど、とても真剣にあんたが聞くから。

「他と比べるとか、よくわかんねぇよ。近藤さん」
なんだか気恥ずかしい気もするが、はっきりと告げよう。



近藤さん、あんたが大事だよ。



俺の声は届いたはずだ。呆けたような顔をしている近藤さんに照れ隠しのようにむくれながら、掴まれていないほうの手で片頬を抓ってみる。


「!!痛いよ、トシ!?」

「人に質問しといて放置すっからだ」

「あ、あぁ…。…なんか照れちまって…」

…おい、恥ずかしいこと言ったのはこっちだっつーの。



近藤さんの日に焼けた頬がほんの少しだけ赤くなっている。俺が抓ったからか、それとも照れ?
ちょっと面白くなってかすかに笑う。その直後、近藤さんに強く引き寄せられて気づけばすっぽりと腕の中に埋まっていた。…少し、苦しい。


「トシ…っ」

「ぅ…」

痛ぇ、って言いたかったけど、耳元でなんだか苦しそうに俺を呼ぶ近藤さんの声を聞いたら。
何も、言えなくなった。




…どうした?近藤さん…?
なんでそんなに、悲しそうに俺の名前を呼ぶ…?






そのあと振ってきた口付けは、いつもより執拗で。
けど俺は止める気持ちにならなくて、そのまま受け入れた。
たった3日間だったのに、そんなに寂しかったんだろうか…と思いながら…。





end

2010.2.1

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