「あ、あと、煙草吸ってて、いつも真っ黒な服着て、目つき悪いネ」
…ん?
「怒ると瞳孔開くし、いつも顔怖いヨ。でも笑うとかわいいアル!」
……んん?
「マヨネーズが好きで何にでもものっそかけるアル。トシちゃんの料理、そんなのかけなくてもおいしいのに…」
……アレ?
「あ、あと、ヅラぁ。
トシちゃんは男アルよ?土方十四郎、って名前アル」
やはり!!
「“瞳孔開いて〜笑うとかわいい”のくだりからおかしいと思ったのだ!銀時貴様、何故よりによって我らが宿敵・真選組の副長に恋などとっ!!」
「!待て、ヅラ!“笑うとかわいい”でおかしいと思ったってどういうこと!?まさかてめぇ、土方をそういう目で見てるんじゃないだろうな!?」
「ばっ!バカか、貴様!俺はそうではないが、部下が土方に現を抜かして土方を隠し撮りして、その写真を没収し、それを見てそう思っただけだ!俺は土方が色っぽいなどと断じて思っちゃいない!」
「!!おまっ…」
「ヅラぁ、私、色っぽいなんて言ってないアル」
「『桂さん、墓穴』」
しまった。
恐る恐る銀時を伺えば。
懐かしき白夜叉の気配(汗)
「土方を隠し撮り…?…おい。詳しく聞かせてもらおうじゃないの?」
「お、落ち着け、銀時。部下には俺がこの間きつ〜く言っておいたから…」
「は・な・せ」
…め、目が笑ってないぞ、銀時……。
結局。
部下から没収した隠し撮り写真は、エリザベスが責任をもって処分するということで手を打った。
…銀時が一瞬残念そうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。神楽くんの手前、欲しいとも言えないんだろう。いい気味だ。
しかし…。勿体ないな……。気に入っていた写真もあったのに。
神楽くんが溜め息をつきながら話し出す。
「トシちゃんはモテモテアルな…。銀ちゃん、はやくトシちゃんつかまえないと誰かにとられちゃうアルよ!私そんなの嫌アル!」
「わぁーってる!けどな、神楽。こういうのにはタイミングっつーかバイオリズムっつーか、……とにかくいろいろあんだよ」
「そうやって理由つけてすぐ男は逃げるアル!だから好きな子に逃げられるネ!だから銀ちゃん天パネ!!」
「天パは関係ねーーっ!つか、ほんとお前、いくつ?」
仲がいいことだ…と2人の様子を見ていたとき、エリザベスが俺の肩を叩いてきた。振り返れば。
「『桂さん、そろそろお時間です』」
そうだな、長居はできん。今日は大事な攘夷志士の集まりがあるのだ。
「さて、俺はそろそろお暇しよう。邪魔したな」
「…ほんとだよ。お前、マジで土方の隠し撮り写真処分しろよ。残さずやれよ」
「男が一度決めた約束を破るものか。約束しよう」
「…ほんとかよ。こいつ口ばっかなときあるから、マジ腹立つ」
「だから、銀時!」
俺は立ち上がり奴の鼻先近くに人差し指を立ててみせ、言ってやる。
「我らと手を取り合い攘夷を目指すときには、その想いはすっぱり断ってもらうからな!
我ら攘夷志士と奴ら真選組は所詮敵同士。馴れ合うことなど不可能なのだからな…!」
「『悲恋…!!(泣)』」
「いや、俺、お前らの仲間にならねーし。つーかそれをお前が言うのかよ?マジ腹立つ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
銀時の家を出て、エリザベスと共に会合の席へと急ぐ。
「『桂さん』」
「ん?どうした、エリザベス?」
「『なんだか、嬉しそう』」
自然顔が弛んでいたらしい。俺は苦笑いしながらエリザベスに話しかける。
「のぅ、エリザベス。友に大事な人ができるというのは気分が高揚するな。
……その友があの銀時なら尚更だ」
相手は些か釈然とせぬが。あの何事にも執着しなくなった奴が、『大事』と形容する者ができたのは喜ぶべきことだ。
「成就するのは難がありそうだが、…うまくいくといいな」
「『…そうですね』」
次会うときは、ノロケる銀時を冷やかせるといいな、とエリザベスに話しつつ。
俺たちは大通りを避けて小道を抜けるのだった。
END